フリーランス医師は年金知識を持つべし
■ 記事作成日 2014/1/19 ■ 最終更新日 2017/12/6
フリーランス医師の世間認知がが高まるにつれ、実際にフリーランスとして生計を立てる医師は確実に増えているようです。フリーランス医師は複数の就業先から収入が入ることが当たり前ですから、当然、確定申告を毎年行う必要が出てきます。さらには年金についても、他の就業形態が違う医師(常勤医師等)とは異なる点が増えてくるので、自分自身で年金についても知識を向上させておかねばなりません。
3階建て構造の年金
年金の種類は医師の就業形態によって変わります。民間医院の勤務医や一人法人(マイクロ法人)を作って節税対策している医師は厚生年金、公立の病院勤務は「共済年金」、マイクロ法人を立てていない医師は「国民年金」となっています。よく知られているように年金は3階建て構造になっており、ベースとしての1階「基礎年金」、2階の「厚生年金保険」「共済年金」、そして3階部分として「確定給付型年金」などで構成されます。
※厚生労働省資料より
フリーランス医師の弱点は2階建部分(厚生年金保険、共済年金)が無いことでしょう。常勤医師に比べて年収そのものは高くなる可能性が高いものの、将来的に支給される年金額が少なくなってしまう可能性が大きいのがフリーランス医師の年金です。
足りない分は自分で補うしか無い
至急年金額が少ないと予想されるフリーランス医師は私的年金などを利用して自分で足りない分を補填しなければなりません。代表的な積立型私的年金は日本医師会が実施する医師年金です。
事務手数料も少ない(1回の保険料払込に対して0.25%)の医師年金は「自分で積み立てた分を将来自分で受け取る」スタイル(積立型)の私的年金です。満64歳6ヶ月未満の日本医師会会員の医師なら加入でき、加算年金保険料にも上限がありませんし、所属医師会が変わってもそのまま利用が継続できます。
※医師年金HP資料より
ただし現在の医師年金は、昔と違ってそれほど有利な年金というわけではないのが実際です。
この年金は医師会が発売しているのではなく、実際は大手生命保険会社が医師会から会員のお金を預かって運用し、それを会員に将来的に支払うというシステムになっています。要は運用する大手生命保険会社の手腕遺憾では、給付額が掛金を下回るということも十分にあるわけでして、実際に下回っていたことが有ります(2014年においてはアベノミクス効果で運用益が上がっている可能性も高そうですが)。
個人確定拠出型年金
個人型の確定拠出年金は掛け金が全額所得控除対象となりますのでフリーランス医師の税務対策上にも有利です。原則60歳から老齢給付金を受け取ることができ、掛金以外にも所得税や住民税が減税するなどの税制優遇措置もあります。運用方法も加入者自身で自由に決めることができる反面、将来的に給付される年金は加入者個人の運用実績によって決定されるので、運用に失敗する場合のリスクが存在します。また、掛金を途中で返金してもらう(解約返戻金)事はできませんので注意です。
節税にもつながる年金対策
少し話がそれますが、節税につながる年金対策は他にも有りますので、フリーランス医師の方は最低限これらのことは知っておくべきでしょう。
小規模企業共済
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、個人事業主や中小企業経営者向けの退職金積立制度です。毎年7万円を上限とした掛金が全額所得控除の損金となり、将来的な受取額(共済金)は退職所得扱い、もしくは、公的年金等の雑所得扱いとなりますので税制上有利です。毎年7万円を積み立てるとすると、35年で3600万弱を受け取れます。更に、節税効果としては36万7千円/年(課税所得1000万円の場合)もありますので、フリーランス医師は加入必須です。
※加入シミュレーション例(中小企業基盤整備機構サイトより)
国民年金基金
国民年金基金は確定給付型年金(老後の受給額が前もって確定している年金)です。加入資格が有るのは20歳~60歳未満の自営業やフリーランスで活躍する国民年金の第1号被保険者もしくは国民年金に任意加入している60歳~65歳未満の方で、国民年金の加入者である必要があります。掛金上限は68,000円×12=年額816,000円。これは個人型確定拠出年金との合計額をこの金額に収めなければいけないと規定されています。
※国民年金基金サイトより
節税目的の税務メリットとしては、掛金が全額社会保険料控除として所得控除されるので、所得税・住民税共に下げることが出来ます。ただし、入会すると脱退が事実上不可能なのが気になりますが、国民年金を支払っているフリーランス医師ならばぜひとも加入を検討しておくべきでしょう。
ただし、近年の報道では積立金不足を指摘する声もあるので、基金動向については常に目を見張っておきながらの加入を検討するべきでしょう。フリーランス医師の場合、仕事状況に自由が増える一方で、年金については全て自己責任で決断をしていくことが必要となります。
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
ツイート