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第5回:【医療経営士】3級のテキストより その4 病院の仕組み、各種団体・学会の成り立ち

【医療経営士】3級のテキストより その4 病院の仕組み、各種団体・学会の成り立ち

 

■ 記事作成日 2016/9/28 ■ 最終更新日 2017/12/5

 

医療経営士3級のテキストより 日本の医療関連法規

【医療経営士】3級のテキストより その4 病院の仕組み、各種団体・学会の成り立ち

 

元看護師のライター、紅花子です。当コラムも5回目となりました。今回は、医療経営士3級用のテキストの4冊目、「病院の仕組み 各種団体・学会の成り立ち」についてみていきます。

 

改めて“病院”の仕組みについて考える

 

日本では、多くの医師が“病院”で働いているかと思います。実際に、厚生労働省が行っている「医師・歯科医師・薬剤師調査」のうち、平成26年(2014年)の結果をみると、

 

  • 医師総数:311,205人
  • 医療施設の従事者:296,845人
  • 介護老人保健施設の従事者:3,230人
  • 医療施設・介護老人保健施設以外の従事者:8,576人
  • その他の者:2,554人

 

となっていますので、病院あるいは診療所など、医療機関で働く医師は、全体の95%以上を占めています。さらに細かく見ると、「病院に勤務する医師:194,961人」なので、実に62%以上の医師が“病院”に勤務していることになります。

 

【医療経営士】3級のテキストより その4 病院の仕組み、各種団体・学会の成り立ち

 

“病院”をハード面からみると、いくつかの分類方法があります。

 

  • 病床の種類による分類
  • 一般病床、療養病床、精神病床、結核病床、感染症病床の5つに分類される
  • 病床数による分類
  • 地域中核型病院(200床以上)、医大庵病院(50~200床)、外来型病院(20~50床)
  • 開設者による分類
  • 国や地方公立団体、社会保健関係団体、公益法人、社会福祉法人など

 

同じ“病院”でも、そこに求められている役割や機能には、大きな違いがあります。

 

“病院”や診療所などの医療機関は、収益構造が一般企業とは全く違います。一般企業であれば、商品やサービスを「売る」ことが収益となりますが、医療機関の場合、その収入は保険診療で成り立っています(自由診療は別です)。

 

診療報酬は、一定期間ごとに大きく変わることもありますが、その概念は変わりません。

 

【医療経営士】3級のテキストより その4 病院の仕組み、各種団体・学会の成り立ち

 

ところで、“病院”を表す“hospital”は、“hotel”と同じ語源だそうです。いずれも「人を収容する施設」であり、“hospital”では「患者を病床に収容して診療行為を行うところ」となるそうです。

 

診療所にも有床と無床がありますが、“病院”との大きな違いは病床数です。20床以上あれば“病院”、19床以下なら診療所となり、期待される役割も異なっています。

 

さらにもう一つの違いとして、自由に開業できるか(届出制)、一定の要件を満たした上で都道府県知事の許可を得るか(許認可制)という違いもあります。

 

日本には平成27年現在、8,480の病院があるそうです。これらは全て、何らかの方法で分類することが出来ます。

  • 救急医療による分類:一次医療、二次医療、三次医療、かかりつけ医
  • 政策医療による分類:がん疾患、循環器疾患など19分野が対象となり、「がん診療連携拠点病院(都道府県に1つ以上)」、「へき地医療拠点病院」「災害拠点病院」「エイズ診療拠点病院」「総合周産期母子医療センター」などに分類される
  • 医療法による分類(機能分化):地域医療支援病院、特定機能病院

 

“病院”に求められる横のつながり?

 

日本では法律上、“病院”を開設できるのは、原則として「営利を目的としない法人又は医師(歯科医業にあっては歯科医師)である個人」となっています。

 

医療機関の中では、実に様々な人たちが働いていますが、大きく分けると、医師、看護師や薬剤師を含むメディカルスタッフ、管理部門に分かれます。

 

このうち、医師の診療行為に対して疑義照会ができるのは、薬剤師のみです。医師の処方箋を監査し、疑わしき部分があれば医師に照会し、再調剤することができます。

 

いずれにしても、患者さんが、受診、検査から処置や手術、退院していくに至るまで、様々な分野の専門家が関わることになります。

 

医療機関は一般的に「縦割りの組織」といわれますが、必要に応じてそれぞれが横のつながりを持つことで、機能していることになります。

 

これは、病院対病院でもいえることで、前述の通り、それぞれの病院や診療所には期待されている役割があり、必要に応じて他の病院や診療所へ、患者さんを紹介していくことになります。

 

病院や診療所にとって、「紹介率(逆紹介率)」も、診療報酬の算定に関わってくることとなり、外来医療の機能分化、介護保険サービスとの連携が強化されていくわけです。簡単にいえば「症状が軽くなったら在宅へ」という流れに乗っていることになります。

 

【医療経営士】3級のテキストより その4 病院の仕組み、各種団体・学会の成り立ち

 

また、病院の中には様々な「委員会」と名の付く組織が編成されますが、このうちのいくつかは、診療報酬の算定基準に関わることになります。

 

  • 医療安全管理委員会
  • 診療録管理委員会
  • 給食委員会
  • 輸液療法委員会
  • 検査精度管理委員会
  • 褥瘡管理委員会
  • 感染症対策委員会  など

 

これらはそれぞれ、開催回数や検討内容などの条件をクリアすると、診療報酬で「加算」ができます。病院全体の収入に繋がっていくわけです。

 

医師が所属する“学会”

 

医師が所属する団体には他にも“学会”がありますね。学会の持つ役割としては、医療の質の向上、技術向上、知名度向上、同じ有資格者同士の交流・発展、情報交換、などがあります。

 

診療科ごと、あるいは特定の医療機能ごとに学会は存在していますが、これらの団体による「ガイドライン」や「提言」が、日本の医療界を動かすこともあるわけですから、その存在意義は非常に大きなものになります。

 

学会からの提言等を元に、診療報酬の改定が行われることもあります。

 

所属する医師の側からみれば、最新の知見を得ることが出来たり、自分の行ってきた診療行為が高く評価されることもありますので、所属する意義は大きいのだと思います。

 

しかしその一方で、学会における活動が私生活に影響を与えたり、学会そのものの経営難により十分な活動が行われていないなどの、課題もあるようです。

 

今回のまとめ

【医療経営士】3級のテキストより その4 病院の仕組み、各種団体・学会の成り立ち

 

今回は、医療経営士3級用のテキストの第4巻、「病院の仕組み 各種団体・学会の成り立ち」についてみてきました。

 

世の中には多くの職業がありますが、これだけ様々な法律による制約や取り決めのある職業はなかなかありません。同じ医療者の中でも、“医師”に対する期待や制約は、一番大きいのではないでしょうか。

 

その中で、どのような働き方をするのか、どのような職場環境を選択していくのか、時には立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

参考資料

 

一般社団法人 日本医療経営実践協会
医療経営士とは
http://www.jmmpa.jp/about/

 

初級テキスト第4巻【第2版】「病院の仕組みと各種団体、学会の成り立ち」─内部構造と外部環境の基礎知識
編著者代表: 木村憲洋 (高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科准教授)

 

厚生労働省 平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/index.html

 

同上 平成27年(2015)医療施設(動態)調査・病院報告の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/15/

 

同上 平成26年度診療報酬改定の概要
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000039379.pdf

 

医療法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO205.html

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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