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第7回:【医療経営士】3級のテキストより 日本の医療関連サービス

【医療経営士】3級のテキストより 日本の医療関連サービス

 

■ 記事作成日 2016/11/29 ■ 最終更新日 2017/12/5

 

医療経営士3級のテキストより 日本の医療関連サービス

【医療経営士】3級のテキストより 日本の医療関連サービス

 

元看護師のライター、紅花子です。当コラム、第7目となる今回は、医療経営士3級用のテキストの6冊目、「診療科目の歴史と医療技術の進歩」についてみていきます。医療も、すべてが慈善事業ではありませんので、経営を維持していくための“知恵”も必要なのです。

 

医療も産業 業務の効率化を目指すためには

 

日本医療の根幹ともいえる「医療法」が制定されてから、あと数年で70年になろうとしています。その間、日本の医療制度は、幾度となく大きな転換期を迎えながら、現在の状況へと変化してきました。

 

当サイトの別コラムでもお伝えしていますが、現在の日本の医療体制は、適切な医療資源の確保とともに、今後の医療費削減に向け、「地域医療」の重要性が問われています。

 

また、少子高齢化が加速する日本では今後、患者数の増加が見込まれるにも関わらず、働き手となる医療者は減少傾向となります。こういった背景もあり、患者さんの平均在院日数を低下させること、在宅療養へ移行させる方向で、国全体が動いています。

 

その反面、高度な検査や治療を行うための高額医療機器の整備や、新しい医療機器の導入、院内システムの導入など、医療機器産業は年々巨大化しています。

 

設備投資や人件費等に大きな資金が必要となるため、病床利用率の向上や、業務の効率化も必要なのです。

 

医療機関の収入は、基本的には診療報酬によるものですので、いきなり大きな増収を見込むことは難しいでしょう。すると必要となるのが「コスト削減」という考え方です。

 

では医療機関の中で、どの部分でコスト削減を図るのか。

 

このあたりが、医療経営士の腕の見せ所になるのかもしれません。今回参考にしているテキストによると、すでに医療機関内のさまざまな業務が「外部委託」という形で、コスト削減に寄与しているようです。

 

たとえば、すでに医療機関の中ではよく目にする光景となっている「寝具類の洗濯」や「医療廃棄物の処理」「検体検査」などは、日本の全医療機関の9割以上で、外部委託となっているようです。

 

実際に私が以前勤務していた病院の手術室では、使用後の器械洗浄から手術器械の整備、組上げ、滅菌工程まで、すべて外部業者へ委託していたところもあります。

 

ところで、企業におけるマーケティングの分野には「経験曲線」という言葉があります。これは「これまでの累積の経験量によりコストを低下させ、経済的な効果を生む」ことを表しています。

 

つまり、何かしらの業務に特化した外部事業者に委託すれば、慣れている人が同じ作業を行うため(場所に関係なく)コストを削減できるという考え方です。現在の医療経営にも通じる考え方といえるでしょう。

 

【医療経営士】3級のテキストより 日本の医療関連サービス

 

ただし医療機関の場合、何でも自由に外部委託して良いわけではありません。医療機関で扱う機器、物品、情報など、すべてにおいて何かしらの制約があります。

 

例えば前述の「手術器械の洗浄・滅菌」では、何をどう扱うべきかが法律で決まっています。こういったところに準拠している企業でなければ、外部委託はできないことになっています。

 

さまざまな医療機器関連産業を知る

 

医療機器関連産業は前述の通り、年々巨大化しています。実際にはどのようなものが「医療機器産業」として捉えられるのか、ほんの一例をみてみましょう。

 

【医療経営士】3級のテキストより 日本の医療関連サービス

 

私自身は2つの病院での手術室経験がありますが、仮に新しく“病院を作る”となった場合、CTやMRIといった超大型の高額医療機器にかかる費用を除けば、膨大な費用がかかるは手術室なのではないかと思います。

 

初期投資ももちろんですが、手術室内で使用する医療機器やディスポーザブル製品、医薬品などは、非常に高価なものがありますので、維持していくためにも費用がかかります。

 

また、近年その市場が拡大していると考えられる透析関連、循環器関連、整形外科関連のビジネスも、今後の高齢化による患者数増加傾向が続く限り、さらに市場が拡大していくのではないでしょうか。

 

医療機器関連産業と、どう関わっていくのか

 

前述の通り、医療機関の運営コストを削減させていくためには、少なくともいくつかの分野では、外部委託していく必要があるでしょう。しかし医療機関内の業務には、医療者でなければ行えない医療行為がありますので、すべてに対して外部委託ができるわけではありません。

 

さらに、病院内で外部委託ができる業務にもいくつかの区分があります。今回参考にしているテキストでは、これを以下の4つに分けています。

 

  • 中核業務
  •  経営企画や財務など、反復性があり継続的な業務であり、内部提供が望ましい
  • 専門業務
  •  経営コンサルティングや税務業務などがこれに当り、高い専門性は必要だが臨時業務であるため、高い専門スキルを持った人材への委託も検討する
  • 定型業務
  •  院内物流、医療事務、患者給食など、反復・継続的かつ専門性が低く、外部委託が適している
  • 定型時限業務
  •  レセプトチェックなどが該当し、反復・継続性がなく、専門性も高くないことから外部委託や派遣業務が適している

 

医療経営ではこれらを念頭に置き、取引業者を慎重に選択していく必要があります。その選択基準としては、経済性、安定性、信頼性、付加価値性、誠実性が必要なのだそうです。

 

重要なのは、これらが上手にバランスを保っていること。経済性が良くても信頼性に欠ける、誠実ではあるが費用が膨大など、アンバランスさが目立つ企業へは、外部委託をしてはいけません。

 

必ずどこかで歪がおきます。自院の状況を踏まえ、バランスの良さをポイントに、委託業者を選定すると良いでしょう。

まとめ

【医療経営士】3級のテキストより 日本の医療関連サービス

 

今回は、医療経営士3級用のテキストの第6巻、「日本の医療関連サービス」についてみてきました。医療関連ビジネスは、年々巨大化しています。

 

その一方で「医療費削減」「在院日数の削減」など、医療機関の経営状況を低迷させる要素も増えています。

 

医療機関経営として、病院経営には何が必要で何をアウトソーシングするのか。こういったことも医療経営士には必要な知識となるようです。

 

参考資料

 

一般社団法人 日本医療経営実践協会
医療経営士とは
http://www.jmmpa.jp/about/

 

医療経営士初級テキスト第6巻【第2版】
「診療科目の歴史と医療技術の進歩」
―医療の細分化による専門医の誕生、総合医・一般医の役割
井上貴裕氏(東京医科歯科大学医学部附属病院病院長補佐・特任准教授、病院経営ストラテジスト)

 

野村総合研究所 経営用語の基礎知識 経験曲線
https://www.nri.com/jp/opinion/m_word/development/keiken.html

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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