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医師視点での「一緒に仕事したい看護師像」とは?

■ 記事作成日 2017/6/26 ■ 最終更新日 2017/12/5

 

勤務医の庄司幸平です。医師が働く際、一緒に働きやすい看護師、働きにくい看護師って、いますよね。逆もまたしかり、看護師からみて働きやすい医師、働きにくい医師もいることでしょう。

 

チーム医療の概念が浸透してきた現代医療においては、「医師対その他医療従事者」という構図ではなく、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・ソーシャルワーカー・事務などが並列の立場であるという前提に立って、「輪を作って協力するような」構図が求められるようになってきました。

 

それでもなお、医師と看護師の関係は、医師=指示を出す側、看護師=指示を受ける側という側面もあり、互いに強く主張すると軋轢が生まれやすいという特徴があります。特に大学病院では看護部の力が強く、無意味な対立構造ができている場合がしばしばみられます。

 

今回は、病院や介護施設など、医療・介護の現場でチームとして働くことの多い医師と看護師の関係性にフォーカスを当てます。特に、「こういう看護師とは働きやすい、働きにくい」といった内容を、医師の視点からみることで看護師に求められるスキルについて考えていきます。

 

大見出し 働きやすい看護師とは?

 

働きやすい看護師と働きづらい看護師は表裏一体ですので、今回は医師が一緒に働きたいと感じる看護師とはどのような人物像であるかについて考えてみます。私のまわりの複数の医師と意見を出し合って、数ある意見をまとめてみたところ、次のような7項目に集約されました。

 

  1. いつも前向きで明るい
  2. 気遣いができる
  3. 知識や経験が豊富
  4. ミスに対して真摯に向き合い、向上心がある
  5. 情報を的確に伝えることができる
  6. 患者や家族について寄り添うことができる
  7. 患者の人生に向き合うことができる

 

各項目について、順に説明を加えていきます。

 

いつも前向きで明るい看護師とは働きやすい

 

まず挙がったのが、前向きで明るいことです。忙しく時間に追われながらの仕事をしていると、ちょっとしたことで苛立ってしまい、周りの職員との関係もぎこちなくなりがちです。

 

そんな時に前向きで明るい発言をしてくれる看護師がいるだけでその場の雰囲気が明るくなり、自然と職員や患者さんとのコミュニケーションも増え、居心地の良い空間になります。

 

これはどんな職場・職種でも言えることですが、特に医療機関では体調の悪い人、落ち込んでいる人が多い環境ですから、より一層求められる資質です。前向きであったり明るくて愛嬌があったりすることは、良質なコミュニケーションにつながり、ひいては医療事故の発生を減らすことにもつながります。
(特に小児科では、病院を怖がる子供たちの緊張がほぐれ、診察をスムーズに行えるようになるメリットがあります。)

 

反対に、常にイライラしている看護師がいると、周りの職員も気を使いピリピリした雰囲気になってしまいます。患者さんにもそれが伝わり、診察や治療にも影響が出ることもあるでしょう。

 

気遣いができる看護師は働きやすい

 

大きな病院では複数の医師が在籍しており、医師によって診療の流れやスタイルが違いますが、その一人一人の医師の特徴に合わせて診療のサポートをしてくれる看護師は、診療をスムーズに進める上で欠かせない存在です。

 

外来でも病棟でも、複数の医師の診療の流れを把握し、患者への説明が足りないところがあればこっそりフォローし、忙しさをみて新患予約を調整してくれるような気遣いができるような看護師は非常に重宝されます。

 

日中のちょっとした処置の際にも、忙しいながら「先生、手伝いますよ」と言ってくれる看護師と、見えているはずなのに手伝う素振りを一切見せない看護師がいますが、さりげなく手伝ってくれる看護師がいてくれるととても助かります。

 

知識や経験が豊富な看護師は働きやすい

 

認定看護師を取得していたり、同じ科にずっと勤めていたりする場合など、時に若手医師や不勉強な高齢医師よりも、ある分野において知識や経験が豊富な看護師もいます。

 

チーム医療の流れを汲んで、最近では看護師でも時にそのチームのリーダーシップをとることがあります。特に看護師はケアについての専門家ですから、たとえばストーマの管理をどうすべきかなど、医師とは違った専門性を発揮して、チームを引っ張ることもよく見られるようになりました。

 

そのような看護師は、医師からも意見を尊重され、議論ができるようになり、よいパートナーとなることができます。

 

失敗をした時に言い訳をしない、向上心の高い看護師

 

誰もミスをしようと思ってしている訳ではありません。十分に気をつけていたとしても起こるときは起こります。自分の不注意の場合もあれば相手の不注意の場合もありますし、注意できる範囲をこえて起こることもあります。ミスすること自体はある意味仕方ないところですが、そのときにどう対応するかで、医師からの評価が大きく変わります。

 

看護師がミスをしたときによくある光景として、師長が主治医に対して「私たちはあくまで医師の指示のもとで全ての医療行為を行っていますので、先生も一緒に患者さんに謝ってください」という場面があります。

 

たとえば、患者にある薬を飲ませたい場合に、看護師が渡す薬の量を間違えて、多く飲ませてしまったとしましょう。確かに、医師が処方を出していて、飲ませるように用法用量を指定しているわけですが、医師からすれば「それは完全にそっちのミスでしょう」と思う気持ちもあるわけです。

 

それでも患者対応という点から考えた時に、主治医の責任とは関係の無いところで起こったミスでも、医師が出て説明をした方が納得されやすいということはあります。しかし、医師にとっては自分に何ら落ち度のないミスで謝らなければならないというのはやはり多大なストレスを感じるものです

 

もちろん、社会人であり、病院勤めであれば組織の一員ですから、そういう状況に立たされることはありうることですが、「ただでさえ手術や当直でヘトヘトなのに、これ以上負担を増やさないでくれ」と泣き言を言いたくなるのも無理の無いことだと思います。

 

そういったときに、看護師によっては、あくまで「私は謝らなくてすんだ。よかった。さあ早く帰ろう」と素早く切り替えます。その一方で、真摯にミスに向き合えるような向上心の強い看護師は、あとからでも必ず「先生、余計なストレスをかけてすみませんでした。気を付けます」など、一言ねぎらいの言葉が出るものです。

 

医師は常に責任を負う立場に立たされています。治療の経過が思わしくなく、「もっとこうしていれば」と自責の念にかられて毎朝暗い気持ちと闘いながら回診に行く経験は、真っ当な医師ならば何度も経験があるでしょう。そして、その経験が向上心につながることも知っています。

 

看護師からすれば、「私たちが汗水たらして働いている間、電子カルテの前に座ってパソコン打ってるだけで高い給料もらって、人生得している」と思っている場合もあるようですが、そうした責任をとることの重さを知ることで、患者に向き合う医師の心労に共感することができ、またそうした看護師に対しては、いわば戦友として、医師も信頼をおくようになるものです。

 

ミスの反省を十分し、原因を探り、今後同じミスをしないような対策を考えたり、ミスを成長に繋げたりできる看護師は周りの看護師からの信頼も自然と大きくなります。人のせいにしたり言い訳をしたりするのではなく、素直にミスや足りなかったことを認めて次に同じミスを繰り返さないように前向きに取り組む姿勢が大事です。

 

情報を的確に伝えることのできる看護師

 

入院患者の回診につく場合や、夜間に医師にコールをする場合に、的確に報告できることも看護師にとって重要なスキルです。

 

普段、医師よりも看護師の方が患者と接する機会が多いため、ある患者に対したときの情報量は医師よりももっており、時間に限りがなければ細かい経過なども事細かく医師にも伝えてもいいのですが、決まった時間の中で必要な情報だけを医師に伝えてくれる看護師は重宝されます。

 

患者のちょっとした体調変化、処置の予測、物品の準備など医師の求めることを先回りして考えておけることも大切です。

 

また、看護師から医師に質問をする場合、「○○ですがどうしたらいいですか?」ではなく、「○○ですが△△の処置でいいですか?」など、ある程度予測を立ててより具体的な質問をする方が好印象です。

 

患者や家族について寄り添うことができる看護師

 

病気や怪我で入院や通院している患者や家族は、今後の病気の進行や治療の方針など不安を感じながら日々過ごしています。

 

病院では医師をはじめとして様々な専門職が働いていますが、その中でも特に患者の世話について中心的な役割を果たしているのが看護師です。

 

看護師に求められることは単に治療をするだけではなく、患者やその家族に寄り添い不安や苦痛を少しでも無くせるように話をしたり、療養環境を整えたり、他職種との関係を調整することでです。そのためには患者や家族の気持ちや訴えを敏感に察知する必要があります。

 

医師は四六時中患者を見ているわけではありませんので、夜勤でも患者に関わっている看護師の記録などから重要な情報を知ることもあり、患者や家族に寄り添った治療を行うために看護師の存在は欠かせません。

 

また、患者も、医師には伝えにくいようなことでも看護師には伝え易いということがあり、患者の本音を看護師経由で知ることがあります。ある患者が「先生から伝えられた治療方針を言われるがまま了解したけど、本当は別の治療方法があればいいなと思っている」などこっそり看護師には伝えるといったことがしばしばあります。

 

看護の根幹になる「寄り添う気持ちや思いやり」に欠ける人は看護師には向いていないといっても過言ではありませんし、看護師として少しでも高いレベルを目指すのであれば、知識や技術以前に必要不可欠なものになります。

 

例えば脳血管障害で半身麻痺になった患者はその状況を受け入れることができず、リハビリの意欲がみられないことがあります。そういったときにも理学療法士などのセラピストだけではなく、身近にいる看護師が気持ちに寄り添うことで患者の意欲が出てくることがあります。治療だけでなく患者の心にも働きかけられる看護師はチーム医療の大きな力となります。

 

患者の人生と向き合うことができる看護師

 

看護師の仕事の特性として、最も患者のそばにいる医療者であることは疑いようもありません。しかし反面、特に病院などでは交代制勤務を行っていることも多く、多くの患者が入退院をしていく中では、その場限りの断片的な看護になりがちです。

 

患者の人生は連続的であり、退院後も患者の生活は続きます。医師は、退院した後も外来で患者と会い、経過をみていきますので、連続性という意味では仕事の性質上、強みをもっています。物理的に近くにいることは少なくても、時間的な長さについては看護師よりも優位性があることがあります。

 

しかし、実は看護においてもそうした連続性を持った視点を持つことは可能であり、重要です。医療的常識から、断片的にその時点毎にみた場合は一見正しい選択であっても、その患者にとっては正解でない場合もあるのです。

 

忙しい医療現場では、次々にやってくる目の前の課題をこなしていくだけであっという間に年月が経過してしまうことがありますが、ふと立ち止まって「この患者の人生において、この病気はどのような意味を持っているのか」という視点で考えてみるとより違ったアプローチが見えることがあります。

 

ぜひ長期的な視点も取り入れてみましょう。


まとめ…医師からも患者からも一目置かれる看護師になるためには

 

医療の質は看護で決まるという言葉があるように、看護は医療にとって血液ともいうべき重要な領域です。その分、感情労働が多く、また肉体的にも負担が大きい職種です。

 

他の医療職と違い、目に見えない仕事が多いのも、看護師の特徴です。そのため、どこまで看護師としてのスキルアップができているか、客観的に評価することも難しく、評価を受ける機会もあまりありません。

 

そうした背景から、看護師のスキルは他の医療職に比べて振れ幅が大きくなりやすいのです。今回挙げた点を半分でも押さえることができれば、まわりの看護師からも、一緒に働く医師からも、何より患者からも一目置かれる、実力派看護師になれることでしょう。

 

この記事を書いた人


庄司 幸平(Dr.K)

北関東在住の勤務医師(30代男性)。常勤勤務先に加えて定期的にアルバイト(スポット、定期様々)を数多くこなしてきましたので、勤務医の本音コラムに加えて、私の体験から見たおすすめアルバイト等をご紹介、執筆しております。

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医師からみた「一緒に働きやすい看護師」=連載コラム「勤務医はつらいよ」


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