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製薬会社求人への応募の際に知っておくべきことは何か?

■ 記事作成日 2017/10/25 ■ 最終更新日 2017/12/5

 

医師求人案件には、製薬会社もあります。
製薬会社のMRとはやり取りしていたり、製薬会社から依頼された治験を実施したりしたことはあっても、自分が製薬会社で働くのはイメージできないですよね。

 

実際、どんな仕事をするのか、どのような難しさや苦労があるのか、それを上回るメリットはあるのか?立場、役職、報酬は?結局、製薬会社の医師という選択肢はありなのか?

 

そんな疑問についてお話していきます。

 

製薬会社で働く医師は実際どういうことをするのか?

 

製薬会社で医師働く場合、配属される部署は、臨床開発、メディカルアフェアーズ、ファーマコビジランスの3つであることがほとんどです。
ポジション名は各社ばらばらで、ポジション名ではイメージがずれることがあります。
でも部署名は上記のような名前になっているでしょう。

 

臨床開発

 

治験を引き受けたことがある医師は臨床開発という部署をご存知のことでしょう。
臨床開発とは、薬の承認申請を行うための臨床試験、治験を計画し実施するものです。
そして、治験の結果をまとめて新薬や新効能として承認を受けるために申請の書類を準備する部署です。

 

「臨床開発」というと、創薬する部署といったイメージをもつ場合が多いかと思いますが、開発はいわゆる試験管を振る分子生物学的研究とは異なります。
医師の募集をしている製薬会社の多くは、外資系の会社で、日本に研究施設を持っていません。
つまり、そういう仕事の募集は基本的にないのです。

 

臨床開発医師の仕事は、最初は治験実施における医学的観点からのアドバイスです。
経験値が上がり、実力が付けば開発プロジェクトをリードすることもできます。

 

治験には、治験実施計画書を始め、さまざまな文書が必要です。
最初は、その文書を医学的な観点から間違いないかチェックするところから始まります。
医学的観点からのレビューです。

 

慣れて来ると治験関連文書を自分で書く仕事が回って来ます。
ドラフト作成です。
一旦仕上がるとプロジェクトチーム員にレビューしてもらい修正点の指摘をもらいます。
治験実施計画書のドラフトを任されるチャンスもあります。

 

最終的には、プロジェクトチームを率いて、意思決定をしていく立場になります。
プロジェクトをリードするわけです。方向性を決める際には必要であれば外部の専門分野の医師と面会し助言を得るなどといったことも行います。

 

また、治験に参加した患者さんの安全性監視も仕事です。
副作用発現や臨床検査値異常を確認していきます。
集計データでの安全性検討も行います。

 

ファーマコビジランス

 

名前は聞き慣れないと思いますが、実は医師には一番馴染みやすい仕事です。
副作用報告書の医学的観点からのチェックが主な仕事です。
薬の副作用は臨床でも遭遇するイベントです。
副作用に出会った時に原因や対策を考えていたことを延長すればよいのです。

 

集計データの報告書もありますが、基本は同じことです。
違うのは、会社側から見解を述べる立場になることです。

 

ただし、臨床経過の解釈や因果関係推測は、誰にも遠慮することなく、医学的・科学的に行えばよいのです。
そういった意味で、製薬会社で働く初めての部署として、臨床医に最も適しているといえるでしょう。

 

メディカルアフェアーズ

 

メディカルアフェアーズは最も求人が多いのですが、名前を聞いただけでは何をする部署なのかわかりにくいですよね。
仕事のコンセプトは、製品の価値最大化。
つまり、市販製品の売上向上のために医師の知識、スキルとコネを使って働いてほしいということなのです。

 

この部署が営業・マーケティング部門と一番近くて、売上を増やしたい会社が医師に最も期待しているポジションです。
そのため求人が多いのです。

 

具体的な仕事は大きく分けて2つ。
科学的エビデンスの創出とKOLマネジメントです。
どちらもサポートしてくれるメンバーがいますので、何から何まで手を動かすことはありません。
外注を使うこともしばしばです。

 

エビデンスはいろんな方法で創出可能です。
治験データのサブ解析ができます。
会社主導で行う使用実態の調査データのサブ解析もあります。
医師主導の臨床研究を支援することでエビデンスを作ることもできます。
業者を使ってメタアナリシスの論文作成も可能です。
医療データベースを購入してデータベース研究から論文作成もありです。

 

これらのエビデンスが論文の形で公表されれば、営業・マーケティング部門の武器になっていくのです。
結果として売上向上につながるわけです。

 

KOLマネジメントとは何でしょうか?
KOLとはkey opinion leaderの頭文字語です。
その分野で影響力の強い権威の医師のことを指します。
学会の理事長等重鎮や臨床ガイドライン委員などを指しています。
大量処方医を指すこともあります。

 

KOLの定義はかなり幅が広いのです。

 

そのKOLの医師が製品のファンになってくれることを目的に、治験から市販後までの科学的エビデンスを説明する会を開きます。
アドバイザリーボードと呼んでいます。
この会で、医学的科学的なディスカッションを通じて、理解を深めてもらい、ポジティブなフィーリングや意見を持ってもらうことを目的にした活動です。

 

医師が製薬会社で働く難しさとは?

 

製薬会社で働く医師は増えています。
日本製薬医学会という製薬会社の医師を中心とした学会では、会員数が年々増えており、2015年現在外資系企業、国内企業合わせて約200名の医師が学会員になっています。
一方で、すぐに一年くらいで臨床に戻ってしまう人もいます。

 

何が原因なのでしょうか?

 

期待していたこととズレがある

 

製薬会社は社会の公器のひとつではありますが、前提として自分たちの営利は追求しなくてはならない組織です。
その覚悟が決まっていないで、現実を見るとがっかりしてしまいます。

 

費用対効果が優れない分野への投資は後回しになります。
大事な分野でもです。
「どんな患者さんでも必死に救う」という医療の現場から来ると意識のズレを感じます。
治療法がない分野で必死に治療法を研究していたアカデミア出身の医師だと、そうした意識のズレが更に大きいのです。

 

多くの会社が小児それも難病の開発をしないのがその最たるものです。
小児は儲からないのです。
企業の評判は確実にあがりますが、利益を考えたらボランティアでしかありません。
そこでがっかりする医師が出てきます。

 

外部の医師に頭を下げる立場になる

 

こちらは同じ医師と思っていても、外部の医師から見ると、MRと大差ない製薬会社の一社員になっています。
それを無視して同じ医師と思って対応すると外部の医師の不興をかいます。
そうすると会社の他の部署まで仕事がしづらくなります。
結果として社内で頼られなくなったり、孤立したりします。

 

頭を下げる意識に耐えられないと続かないでしょう。

 

また、就業するとまず社会人としての教育を受けることになります。
医師は、報告・連絡・相談の仕方、上司との話し方といった基本的なところについても社会常識が身についていない場合がありますので、新社会人になったつもりで働く必要があるのです。
病院で「先生」と呼ばれていた医師からすると、そうした状況が耐えがたい場合もあるでしょう。

 

仕事自体それほど楽ではない

 

9時5時で勤務はできません。
暇で楽な仕事ではありませんし、緊急事態が起これば残業せざるを得ません。
緊急連絡メールは、いつでも受けなくてはなりません。
夜中や早朝の電話会議があります。
アメリカ東海岸が電話会議に含まれると時差で大変な思いをします。
国内・海外ともに、年中出張があります。土日も学会参加や学会に合わせた活動があり出勤することがしばしばです。
(ただし、ファーマコビジランスはそこまで出張はありません。)

 

臨床現場のように、指示を出せば、やっておいてくれるなんてことは、ありません。
医学的助言ですらすんなり受け入れてもらえません。
聞いてもらうためには時間がかかります。
信頼を得て人望を得ない限り、裸の王様であることを意識しなければなりません。

 

これには、相当な意識変革が必要でしょう。

 

また、社内政治も意識する必要があります。
社内情報をいかに早く確実に得るか。
味方をどう作るか。
敵を作らないようにするには。などと、臨床とは違った点に気を配らねばならないのです。

 

デメリットを上回るメリットがあるのか?

 

暇でも楽でもなく、意識変革や社内政治にまで気配りが必要な製薬医師。
そこまでして転職するメリットはあるのでしょうか?

 

精神的な面でメリットがあります。
臨床現場では治せる患者さんの数には限りがあります。

 

しかし、製薬会社の製品であれば、その何倍もの数の患者さんに、貢献できます。
自分が携わった製品が世に出て、正しく評価され、臨床現場に広まって、患者さんがその効果に感謝するという場面を想像すると、どんな大変な仕事でも報われた気分になるものです。
ただし、これはいわゆる研究者として大学で仕事をすることにおいても十分得られるものでしょう。

 

もっと現実的な、役職と報酬面のメリットはどうでしょうか?

 

中堅以上の企業の役員になれれば勤務医の年収を凌駕する、それも数倍高い報酬を得ることができます。
ただし、役員に昇進できるかは運とタイミングがあり、どんなに準備していても叶わないことがあります。
それに役員ともなれば社内政治を長けていなければなりません。
相当タフなシチュエーションをこなす覚悟がないといけません。
医師免許を持ってそこにいればいいだけ、なんてことはないのです。
安易な覚悟で飛び込むと、利益を追求するということがどれほど大変か思い知らされることになります。

 

土日まで頑張れるようなら、どの会社でも土日の臨床バイトは可能です。
ゆえに、スキルを保ちつつ、収入をさらに上げることができます。

 

しかし、休日は人生を楽しんだほうが精神衛生上よいでしょうし、多くの医師はそうしています。
人生が充実すると仕事にも好影響を与えます。
基本的には週5日の勤務ですので、平日の臨床バイトはできません。
ただし、週5日働かなくてもよいポジションも時折ありますので、そういうポジションであれば、平日のアルバイトも可能でしょう。


まとめ

 

製薬会社の求人内容を理解するために、製薬医師の仕事内容をご紹介しました。

 

ポジション名はいろいろありますが、部署名は臨床開発、ファーマコビジランス、メディカルアフェアーズの3つです。
また、企業の一社員として働く困難さについても触れました。
臨床現場とは考え方を全く切り替えねばならず、それがうまくいかないと1-2年で出戻ることになってしまいます。

 

それでもなお、より多くの患者さんに貢献したい、企業活動の醍醐味を経験したいという先生には是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
臨床現場やアカデミアとはまた異なった経験や報酬が待っています。

 

もし製薬会社での転職を希望する場合は、転職サイトを使用するのも一考でしょう。
普通の病院やクリニックの勤務であればある程度入職後のイメージがありますので、給与等処遇面の交渉もできるかと思いますが、一般企業との交渉を、自信をもってできる医師は少ないでしょう。

 

転職エージェントは紹介先の企業から、転職者年収の何割かを手数料としてもらって活動していますので、利用にお金はかかりません。
転職者を高い給与にすることができれば、自分たちも潤うわけで、給与交渉のモチベーションにつながっているわけです。

 

また、製薬会社側も自社の役員には数千万の報酬を払っているわけですから、「入職後に活躍する見込みが高い」と判断されれば、通常の相場を大きくこえた報酬になる可能性もあるのです。
これは、勤務医が医療機関に転職する場合とは大きく異なる点です。

 

ただし、彼らは医師ではないので、製薬医師がどんな仕事をしているのか、詳しくは知りません。
仕事内容をたずねても、あまり有用な情報が得られるとは限りません。

 

使えるリソースを最大限使用し、自身の能力を最大限生かして新しい生活に踏み出すべく、まずは情報収集が大切です。

 

 

この記事を書いた人


庄司 幸平(Dr.K)

北関東在住の勤務医師(30代男性)。常勤勤務先に加えて定期的にアルバイト(スポット、定期様々)を数多くこなしてきましたので、勤務医の本音コラムに加えて、私の体験から見たおすすめアルバイト等をご紹介、執筆しております。

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