子育てと両立できる医師就労環境がどうしても欲しかった
今回は産婦人科医として常勤転職した経験についてお話致します。
転職に至った経緯
私は初期研修を終了した後、大学時代の部活の先輩からの勧誘で、産婦人科に入局し、大学病院で働いていました。
その時は婦人科チームにいましたが、大学病院の御多分にもれず、外来・病棟・手術の他、学会準備や研究のための下調べも多く、休みなく働いていました。本給は30万円程度で、外勤を入れてようやく年収1200万円に達する程度でした。
多忙な毎日にしては本当に給与が少ないと感じていました。また、今回転職を決めようと思ったのは夜勤が主な要因のため、まず夜勤の流れについてお話ししたいと思います。
産婦人科は入院している患者の有無に関わらず、稼働し続けることが宿命の科であり、看護師と医師は24時間365日常駐しています。産婦人科の夜勤の実態は想像以上にハードです。
15時30分頃:病棟到着
当時勤務していた病院は2交代制だったため、夜勤は15時〜15時30分に出勤。自宅を14時頃に出なければならず、家事をしていたら出勤前にどこかへ行くことはもちろんのこと、プライベートの時間がないのが夜勤の嫌なところでした。
到着後、夜勤のスタッフと簡単なミーティングを行い、患者の情報取集を行います。夜勤は5人体制で、内1人は分娩を担当する為、患者の割り振りはありません。
16時15分頃:申し送り
日勤の医師、看護師から、病棟の患者に今日何があったのか、訴えがあったのか、気をつける点等の情報共有を行います。
夜勤は日勤に比べスタッフが少なくなるため、緊急事態も想定して対応を考えておきます。特に連休明けの夜勤の場合、新患が入ってきていると、状況がわからない事が多い為、しっかりと情報を頭に入れることが大切です。
17時前後:ラウンド(回診)
回診が必要ない患者と必要な患者がいるため、だいたい1〜2人に行くことが多かったです。夜勤だと自分の担当外の患者もいるため、あいさつがてら聴診器をあてにいったり、日勤時間に行った検査結果が出ていたら、はやく知りたがる患者が多い為、なるべく早めに結果を説明し、今後の方針については担当医からまた話があることを伝える、ということをしていました。
19時頃:プライベートタイム
余裕があればここで夕食をとります。時間があれば手術後の患者の状態をみて、NICUやPICUにも足を運び、状態を把握します。
ご飯はこの時間帯に食べられないことも、しょっちゅうありました。容態が悪い患者や患児のカンファレンスもこの時間によく行われ、それが1-2時間に及ぶこともよくありました。
21時:消灯
この時間からは、基本的に何もない限り、分娩、緊急手術等の待機をします。この時間が一番ゆとりのある時間のため、カルテを書いたり、調べたりする時間にあてます。しかし、夜間の電話は多く、看護師からの質問や相談はしばしばあります。
0時頃:仮眠室にて仮眠
何も問題がない日や、分娩が無い日は、仮眠がとれますが、分娩中の患者や、陣痛が来てる患者がいる場合は仮眠せず、待機しています。
4時:NICU,PICUの回診
他の科であればよっぽど緊急事態が無い限りこの時間に回診を行うことは無いと思いますが、私の勤めていた産婦人科では術後の患者が寝ている間の方が診察しやすいため、この時間にエコーを行うことが多かったです。
6時30分:一般病棟の回診
入院患者の採血は朝に行っている為、採血が終わった辺りの時間に、入院患者の容態を診にいきます。
7時45分頃:日勤のスタッフ含め全員で申し送り
申し送りが終わってから、全てのカルテを書き、業務としては終わる予定ですが、今後の手術方針、その時間にしかミーティング出来ない医師や外科医との相談もこの時間に行います。それが終わると帰宅することができます。
日勤と夜勤が分かれていると、24時間勤務のようなことが無くて楽そうだと言われることもありましたが、実際に子育てしながら夜勤があると、この後院内保育から子供を連れて帰り、寝たくてもねれない昼間を迎えることになり、身体の調子が悪くなってしまうということがしばしばありました。転職を考え始めました。
産婦人科転職の実際
転職を思い立った私は、まずとある転職エージェントに登録したところ、すぐに連絡がきてメールと電話で要望を聞かれました。
聞かれた内容は、下記の通りです。
専門科目、業務内容、当直(可/不可)、オンコール(可/不可)、早番・遅番(可/不可)、通 勤(車/電車/その他)、曜日、日数(週何日)、給与
これらは一般的な転職の条件だと思いますが、さらに追加で希望があるかを聞かれましたので、プラスして「子供がいても仕事が続けやすい職場」という点も条件に入れ、これが一番大切な条件ということもお伝えしました。
さらに、ついでに給与が仕事の忙しさに比例して高くなるようなインセンティブ契約も希望しました。
条件をお伝えした翌日、まずメールで詳細も含めて3件の病院を、自分の条件に合う順で御掲示していただきました。
まず託児施設や夜勤無し等の「子育てしやすい」条件を満たすために、産科は外して、婦人科で調べていただきました。その結果、3件中2件は比較的沿うものでした。
その2件の差としては、定時が17時30分か17時かの違い、患者数、病床数の違いや、片方は女性スタッフが多く、片方は男性スタッフが多いという点でした。
夜勤はなく、オンコール無し、日勤のみというとても良い条件ではあったため、もう少し詳細を聞きたいと思い、電話で詳細を伺いました。
その後、定時の早い方に絞り、決定する前に職場へ見学もさせていただけるように交渉していただき、見学させていただきました。そのあたりの段取りは全てお任せでやっていただきました。
【提示された条件】
出勤:8時30分
勤務終了:17時00分
給与:年俸1500万
院内保育あり
さらに、家から車で20分と比較的近く、仕事内容としても午前中は週に3コマ外来、他の日は健康診断外来を行い、午後は病棟業務を行うというものでした。
この時点で条件的にはかなり希望に近く、入職を決める気持ちに傾いていました。
見学後に、「いかがでしたか?」と転職担当のエージェントに聞かれました。「もし、少しでも追加したい条件があるならば交渉しますよ」とおっしゃっていただいたので、もう少しだけ条件をつけていただくようにお願いしました。
追加の条件とは、下記の2点です。
条件1:午後は病棟管理になっており、入院患者を診ることになっていましたが、今回の契約では、子供が小さいうち、特に時短制度が使える年齢までは、担当患者を2人までにするという制限もつけていただきました。
やはり制限が無く、5人・10人と診るようになると、病状説明や、体調の悪化などで結局残業しなければならないリスクも生じますので、できれば少なくしたかったところです。
条件2:基本的に主治医ではなく、担当医にしていただくことになりました。仕事そのものに責任を持つことは変わりませんが、家庭との両立も含めて、仕事がしやすく激変しました。
以上の条件も快諾していただけたようで、その後、実際に転職をする運びとなりました。
年収が300万円もアップした上、実際に働き始めても、最初に提示された条件と特に変わるところはなく、子育てと両立して働くことができています。何より夜勤が無くなったのが助かりました。今回転職して、本当に良かったと思っています。