スポットバイト体験記 眼科外来アルバイト(医療過疎地)@兵庫県
■ 記事作成日 2018/7/20 ■ 最終更新日 2018/7/20
今回のスポットバイト体験記は、兵庫県の医療過疎地にある眼科単科病院のアルバイトです。
以下の通り給与面がかなりいいのですが、場所が悪すぎてなかなか人が集まらないようです。
ここと思われる求人を色々な医師転職サイトでちらほら見かけます。
<勤務条件>
土曜日
9時から12時
1回7万円(交通費込 残業代なし)
報酬は高くともなかなか医師が集まらないエリアで「大感謝」され…
兵庫県と言っても広く、大都会から田舎までさまざまです。
今回はかなりの田舎で、車がないとアクセスできません。
県内からでも中心部から片道1時間以上かかるんですが、暇な日があったので物は試しと行ってみました。
高速道路を使うので、交通費込みというのもなんとなく損した気分になります。時給がいいから実際にはそんなに損でもないんですが。あとは通勤時間が長いと、その分稼ぎの効率は下がってしまいます。
朝早くに出発し、8時半ごろに病院に着きました。この時間は道も空いていて快適です。地方の衰退の典型のような、人気の少ない地域に病院はあります。建物もかなり年季の入ったものでした。
院内に入ると事務の方が出てこられ、簡単な説明を受けました。
やはりなかなかバイトの医師が来てくれないらしく、何度も感謝を述べられてなんとなくいい気分になります。笑
金銭的な報酬も大事だけど、こういう社会的報酬というか、人のためになるっていうのもモチベーションになるよなあ、と社会人になる前の医学生時代の崇高だった志を思い出しました。
いや、生きていくためにはお金は大事なんですけど。
診察室に着いた後も、コーヒーはいかが?お菓子はいかが?よく来てくださいましたね。と歓迎ムードのオンパレード。都会で搾取され、消耗している自分には天国のように思えました。
来院患者も軽症ばかりで、数もそんなに来ませんよ、ということでリラックスして診察室でカルテが回ってくるまで待ちます。
都会の殺伐とした眼科外来勤務とは大違い
9時15分くらいからぽつぽつと患者が診察室に回ってきました。眼科は最初に視力や眼圧などを測定するので、朝いちばんに来てもなかなか診察室まですぐには回ってこないんですよね。
眼底検査をする場合は散瞳の点眼をするので、それが効いてくるまでさらに約30分間待ち合いで待機になります。
手術もしていない病院だったので術後の人がいるわけでもなく、長年外来に通っているおじいちゃんおばあちゃんばかり、眼の病気というよりは半分おしゃべりに来ているような、のんびりとした患者層でした。
待ち時間が長いとぎゃんぎゃん騒ぐ中年サラリーマンもいないし、権利意識ばかり強く言いがかりをつけてくるおばさんもいません。型通りの診察をして点眼薬をdo処方するだけでも、みなさんとても感謝してくれます。
なんなら今日収穫した果物や野菜を持参してくれる人もけっこういて、なんかこう、心遣いにこちらのほうが癒されたくらいです。
こんなふうだったから、今より労働環境の悪かった昔でも医師はみんな文句を言わずに働いていたのかなあ、と物思いにふけります。今は医療者側に落ち度がなくても訴訟だなんだって脅してくる人もいますから。
疾患としては、高齢者に多い白内障、緑内障、ドライアイがほとんどです。
あと印象的だったのは翼状片ですね。
翼状片は結膜が角膜の中央に向かって進展してくる病気で、日光暴露が発症のリスクファクターになっています。
都会だとビルで働くホワイトワーカーばかりなのでほとんど見かけないんですが、この病院では軽い翼状片を併発している人が多かったです。(ひどくなければ経過観察で大丈夫です)やっぱり疾患には地域によって特徴がありますね。
僕が診察した人はみんな軽症だったのでいいんですが、重症な人や手術が必要な人なんかは隣町の総合病院に紹介するようです。
都会だと電車で紹介先にもすぐ行けて便利だけど、田舎は自家用車が必須なので大変です。しかも眼科の患者ということは視力が悪いわけで、運転も危険です。視力障害で免許が通らない人もいます。
付き添いがないと、満足に病院にも通えないんだなと思うと、地方は大変です。衰退していくのはしかたないのかもしれません。
都会で健康に暮らしていると、こういう視点は抜け落ちてしまいますね。外来が比較的ゆったりだったこともあり、ぼんやりといろいろなことを考えました。
眼科は他科とちがって入院適応になる病気が少ないですが、それも田舎の高齢者にとっては不利かもしれません。同居していない家族が送り迎えをする場合、入院してくれたら入退院時の送迎だけですむけれど、外来となるとその都度時間を取られてしまいます。
入院ですべてのケアを病院に丸投げにできるほうが、家族の負担は断然少ないはず。かといって外来でできるレーザーで入院させるわけにも眼科はいかないので、難しいところです。
海外では日本よりはるかに入院期間が短い(あるいは入院せずに外来で治療する)らしいですが、そのあたりどうやってるんだろう
3時間弱で患者は10名程。まったりとした勤務で、思わず自分の方が癒されてしまう
さて、患者自体は12時を待たずに途切れ、受付時間も終了していることから少し早目に勤務終了となりました。
トータルで患者数は10人ちょっとでした。考え事をするくらいの余裕はある、まったりとした外来でした。
事務の方にお食事どうされますか?近くにおいしい焼肉屋がありますがいかがですか?と言われたので、せっかくなのでご一緒しました。なかなかこんな田舎まで来ませんしね。
この界隈で一番いい(と思われる)お店で焼き肉をごちそうになり、お話の中で田舎ならではの大変さもうかがうことができました。
もともとは大学医局から医師が派遣されていて病院はやりくりできていたけれど、研修医のローテーション制度ができて医局の人数が減ってからは大変だそうです。
はじめは常勤が非常勤に変わり、非常勤が隔日派遣に変わり、週1回、そして派遣なしに。
今は高齢の眼科医が切り盛りしていて、休日を中心にスポットで応援をお願いしているそうです。しかし立地も悪くなかなか難しいみたいです。その常勤の方もいつまで働けるかわからないので、その方が病気でもしたら眼科は閉じざるをえない、とのことでした。
地方の病院ならではの「人のよさ」やゆったりと流れる時間、感謝されるやりがいを感じながらも、医療過疎地として徐々に地盤沈下していく暗い側面も実体験することになり、図らずもかなり考えさせられたスポットバイト勤務でした。
遠いのがネックで通勤が大変ですが、自分みたいな未熟者でもいろんな人に感謝される仕事ができるんだなっていう気持ちにさせてくれる勤務先ではあったので、待遇も悪くないし行ける日があればまた行こう、と心に誓い帰路につきました。
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