スポットバイト体験記 年越し当直4日間@関東某県
■ 記事作成日 2018/11/9 ■ 最終更新日 2018/11/9
今回は、私の友人である産婦人科医師Aさんからの寄稿体験です。
年越し当直を行ってきたそうで、しかも4日間、スポットバイトとしてはやや長めのアルバイトです。
年末年始の大病院の当直は高給であるという点と、いつもの専門科のみの診療であるのと違い、さまざまな病状の患者を診れるため急患好きな自身にとって、飽きないというメリットがあります。(人によってはデメリットかもしれません)
知り合いの医師がお盆休み中に同様のバイトをして、経験もつめて高時給のためお勧めしてくれたので、紹介サイトで探していたら、県内では有名な大病院が1名募集しており、すぐ問い合わせをしました。
<勤務条件>
- 12/30,12/31,1/1,1/2の4日間
- いずれも20:00〜5:00
- 日給12万円 (交通費別)×4=48万円
- 休憩室あり
- 仮眠可
学べることの多かった年末年始の当直バイト
専門は産婦人科ではありますが、海外ボランティアで救命に関わることもあり、その経験を中心に先方に問い合わせをかけると、半日後に返答が来て、是非お願いしますとのことで当日すぐ採用されました。
決まったのが12月初旬だった為、救命に関わった時に学んだことを再度確認し、初心に戻って自身の中でシミュレーションを行い、12/28を待ちます。
今回は給料だけが目的ではなく、もう一度救命の時に学んだ知識を活かし、大人子ども関係なく、狭い視野にならず、固定観念に囚われない診療をすることが目的です。普段は女性しか診ませんが、やはりそれだとどうしても視野が狭くなってしまいがちです。
この経験を日々の診療にも生かしていくために、学べることの多い4日間にしたいと考えました。
勤務内容
初回当日は19時頃到着し、救命救急に近い職員専用入口より出勤、管理人がいる部屋に寄り、身分の確認と、記名、押印を行い、中に入りました。
今日の担当する診察室と、仮眠室を案内してもらい、薬の種類や電子カルテの使用も軽く確認、救急時に必要なものや薬や器具の確認を念入りに行いました。
今回は2人体制で、昨年度の経験者である医師がみえたので、昨年度の様子を聞き、ある程度流れが分かったところで20時になりました。
20時30分を過ぎた頃から風邪やインフルエンザの急患が増えてきて、最初の5名はインフルエンザの疑いだった為、インフルエンザの検査を行い、3名が陽性でした。
3名を中待合に少し隔離する形で、その場で吸入出来るように手配し、看護師と薬剤師にバトンタッチしました。
患者から吐気症状、だるさ、熱、下痢、腹痛、心拍の上昇または下降の有無を確認し、麻黄湯のみでも治療可能な軽度なインフルエンザ症状なのか、吸入が必要なのか判断しました。
その後、救急車で運ばれた患者が3名いるとのことで、救命救急の方の手助けに呼ばれました。1人は生後半年の子供で、産婦人科の時に新生児科と連携して勉強していた時期があったため、担当になりました。
ご両親にここまでにあった出来事を詳しく聞き、トリアージを素早く行った後、両親には外で待機するようお願いし、すぐルート確保を行い、点滴を開始することができたため、なんとか容態が落ち着きました。
もともと喘息の既往があるお子さんだったため、朝まで入院に切り替えて経過をみることとし、その後は日勤の担当医にお任せすることにして、救命救急を出て、夜間外来に戻りました。
その時にすでにもう深夜の1時を回っており、患者がいなかったため、休憩室にて仮眠をとりました。少し休めるかと思い30分経った頃に、薬疹が出たと思われる若い女性が外来にきました。
即座にエピが必要かどうか確認する為患者を診察室に呼び、容態確認。エピは必要ないと判断し、点滴を指示、落ち着くまで病院にいることと、後日でいいのでなるべく早めに、負荷試験やアレルギーテストを一度してみるように説明し、受け方の詳細は看護師から聞いてもらうように指示しました。
看護師は常勤で勤務している方だったため、特に問題なく資料等用意して患者へ説明を行っていただけました。稀に看護師でも夜勤アルバイト専門のような働き方をしている方もいて、そういう方だとお互い慣れていない環境でどうしてよいかわからなくなることがありますが、今回は大丈夫でした。
その時点で深夜3時になっていました。それから朝5時まではインフルエンザの疑いの患者が3名と、歯痛の患者が1名で、無事終了しました。
12/31,1/1,1/2にも勤務を行いましたが、やはり同じくらい急患がきて、仮眠室はあってもほとんど戻る時間がありませんでした。大みそかは意外と2時間ほど眠ることができましたが、特に1/1と1/2は飲み過ぎや、風邪・インフルエンザの方が非常に多く、一睡もできませんでした。
1晩12万円、4日で48万円と考えると当直代としては高いような気もしますが、寝ずに働くことを考えるとコストパフォーマンスは何とも言えないところです。日中は自由にできますが、結局ほとんど寝てしまいますので、実際寝当直で1泊12万円を4日続けるか、それこそ日当直で1日あたり15-18万円もらった方がいいかもしれません。
私自身は救急が好きで、まだまだ医師として経験を積みたい年代でもありますので、また機会があれば応募したいとは思いますが、必ずしも皆に勧めたいかというと、自身を持ってお勧めできないところです。
実際にアルバイトの紹介サイトでも救急メインのこうした病院は、敬遠する医師も多いのか、ぎりぎりまで応募者があらわれず残っていることも多々あります。
実際に当直の相場としては、1晩4-5万なら寝当直、7-8万ならやや仕事があるものの仮眠もとれる当直、10万だとかなり忙しい当直、12万だと挿管症例や重症の救急搬送もたくさんくる当直といったイメージです。
今回は軽症が比較的多い当直でしたが、年末年始ということもあって1回あたり2万円ほど上乗せされているようでした。
夜間の救急診療において必要な知識や判断
夜間の救急当直では下記の事項が大切だと思います。
- 早いトリアージ(緊急なのかそうではないのかをファーストタッチでまず見極めること)
- 分からない範囲は専門医が必要なのかどうかも判断し、不安があれば必ず独断では行わないこと
- 搬送時間、病状が出てからどれくらい経っているか、患者からあらゆる情報を短時間の間に聞き取ること
- 勤務先の医院で治療困難な場合の陸路、空路を把握しておくこと
- エピネフリン注射、骨髄針を行える技量があること
- 心電図、spo2 、血圧、その他のモニター数値の変化を必ずしも看護師がチェックしてくれるとは限らないので、きちんと見逃さず自身でチェックするようにすること。
- 看護師など周囲に的確な指示が出せること
- 区切りがついたら、患者にどんな治療を行い、今はどういう状態で、どのように落ち着き、今後もこんな経過をたどることが予想されるということを伝えること
これらを意識しながら診療にあたることで、見逃しが少なく効率的な診療が可能になると考えています。
今回は年末年始の年越し救急当直についてレポートしました。楽なアルバイトではありませんが、経験を積みながら比較的短期間で連続してお金を稼ぐことができますので、そういった診療が好きな方にはお勧めです。
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この記事を書いた人
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