第16回: 良い医師になれる研修医、なれない研修医
■ 記事作成日 2017/4/11 ■ 最終更新日 2017/12/6
良い医師になれる研修医、なれない研修医
元看護師のライター紅花子です。
このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で感じた“医師として活躍するために必要な素質”について考えてみたいと思います。
今回は、将来的に良い医師になりそうな研修医の姿と、「大丈夫か?」と思われてしまう医師像を、看護師の視点からご紹介します。
看護師も認める頑張り屋の研修医A氏
A研修医は、医師だけではなく、周りの看護師も認める“頑張り屋”でした。あまり笑顔を見せない、「俺の言うことを聞け」といういわゆる“医師気取り”の研修医がいる中、A研修医だけは“研修医”という立場を心得ており、なんでも頑張ります。
医師から指示された仕事はもちろんのこと、看護師が電話をした時にもすぐに対応できるようにと、電話は肌身離さず持ち歩いていました。当直後のシャワー室にまで持ち込んでいたということです。もちろん、私たち看護師が電話をすれば、どんな場合にでも飛んできてくれていました。
また、自分が手術を担当した患者さんの術後は、何と病棟の看護師よりも早く病室へ赴き、自ら術後のバイタル測定をおこなっていました。
そんなひたむきな姿は、医師だけでなく、ベテラン看護師からも「あの先生は、将来立派な医師になりそうだ」と、噂されているほどでした。その予測通り、A氏は医師になってからもどんどん成長し、現在でも活躍を続けています。
誰に対してもどんな時も態度を変えない。研修医B氏
B研修医は物静かな研修医で、あまり目立つタイプの研修医ではありませんでした。しかし、一部の医師や看護師からは「この研修医は将来大物になるであろう」と一目置かれていました。その理由は、誰に対しても、どんな時にでも態度を変えないということでした。
あくまでも椿の経験上ですが、研修医時代に、医師、看護師や患者さんとの間で態度を変える研修医は、実は結構多く居ると感じていました。また、担当している患者さんが教科書通りの経過をたどらなかっただけで、パニックを起こす研修医もいました。
しかしB研修医は、そんな時でも感情が高ぶることなく、誰に対しても全く態度を変えずに、淡々と診療や処置にあたっていました。
もちろん、B研修医は周囲の医師や看護師の予想通り、医師となってからもこのスタンスを貫いており、患者さんからも一目置かれる医師へと成長しました。
公私混同の研修医C氏
前述のA研修医、B研修医とは変わり、こちらは結構イケていない、医師からも看護師からも「大丈夫か?」と思われていたC研修医です。
C研修医は頭がよく、学生時代の学力はトップクラスだったそうですが、とにかく公私混同の甚だしい研修医でした。仕事中にプライベートの話ばかりするのはもちろんのこと、その白衣からは、診療では使わないであろうものが出てくることが、多々ありました。
実はこのC研修医、とあるスポーツを嗜んでいる医師でもありました。
ある日、楽しみにしていたスポーツの予定と、別の病院で夜間の救急外来(これはまだ新研修医制度がスタートする前のお話しです)の予定が重なり、C医師はスポーツを優先。あろうことか、それをその日の勤務先となる病院へ伝えていなかったことが発覚。幸い、前日に指導医である先輩医師が気付き、何とか人員をやりくりして事なきを得ましたが、C医師の言動は大きな問題になりかけました。
この公私混同の甚だしさに、周りの医師や看護師は不安を抱いていましたが、現在では、イケていないながらも、医師として頑張ってはいるそうです
研修医時代から周囲に一目置かれる医師像
“医師としての礎”を築く時期であると言っても過言ではない研修医時代。この時期に回りから一目置かれる存在となることは、ご本人たちの自信にもつながっていくのではないでしょうか。前述した3例から立派な研修医像をまとめると
- ひたむきになんでも頑張る
- 相手が誰であっても、どんな状況であっても、態度を変えない
- 仕事とプライベートを、きっちり分けて考えられる
といったところになるでしょうか。研修医の皆さんは、指導医がいないと何もできないということに、悔しさやふがいなさを感じるかもしれません。「研修医時代は地獄だった」と思う医師が多いという声も聞きますし、学ぶことや調べることやるべきことがたくさんあり、余裕が無いかもしれません。
しかし、上記にまとめた立派な研修医像を見ると、「医師としての知見」というよりも、人として、社会人として、学ぶ立場の者として、当たり前のことばかりです。つまり、「医師だから特別では無い」ということです。
まとめ
これから研修医生活をスタートさせる若い医師たちは、いわゆる“ゆとり世代”の特徴を色濃く残している世代です。 “ゆとり世代”という言葉は、悪い意味で使われることが多いかもしれません。しかしその一方で、「1つのものに対して深く探究していく力がある」という人達もいると言われています。
前述した研修医像に加え、この世代の「良い特徴」が発揮されれば、誰から見ても申し分のない研修医となり、その後立派な医師へと成長できるのではないでしょうか。
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