第21回:看護師に好かれる医師は得か損か
■ 記事作成日 2017/9/16 ■ 最終更新日 2017/12/6
医師にとって看護師に好かれることに重要性はあるか?ないか?
元看護師のライター紅花子です。
このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で感じた“医師として活躍するために必要な素質”について考えてみたいと思います。
今回は、看護師に好かれる医師は得か損かということを考えていきます。
もちろん、医師達が仕事を行う上で、看護師に好かれようと必死になる医師は居ないでしょう(居ないと思いたい)。
しかし、チーム医療が推進される昨今では、看護師と医師の関係性は以前よりも重要なものとなっていると考えられます。
これを踏まえて、看護師に好かれる医師は得か損なのかについてみていきます。
看護師に好かれようと動いていた研修医A医師
A医師は大学病院で研修医として働いていました。
その病院は当時医師が1番偉い存在で、看護師は(言葉は悪いですが)医師の小間使い、と考えている医師が多く、看護師を顎で使うような医師が多かったのだそうです。
そのような態度をすれば、当然看護師からは嫌われてしまうだけではなく、「この医師から指示された仕事は必要最低限、事故が起きないようにだけ注意して行えば良い」という風潮もあったそうです
これを見ていた若き日のA医師は「看護師さんたちを敵に回してしまうと、医師の職務上でも面倒を抱えることになる」と悟ったのだそうです。そのため、研修医時代はイエスマンとなり、自分よりも年上の看護師から「お願い」される業務もすべて引き受け、時には自ら進んで看護師の仕事を手伝っていました。
その結果、A医師はその病院内の看護師たちから人気ものになり、看護師たちを味方につけることができました。
結果的に、医師として自立してからも、A医師の指示はほとんどの看護師達が素直に聞き、A医師が指示を出すよりも先に準備をする、A医師の指示以上に手厚い看護をする、という行動をする看護師たちが増えたということです。
医師に好かれようと動いた研修医B医師
A医師と同じ大学病院で研修医として働いていたB医師。
他の医師がとる行動や、医師同士の対応、看護師への対応を見て、医師として出世していくためには「医師に好かれるべきである」と思ったのだそうです。
そのため、他の医師と同様に
- 自分の同僚や上司である医師には常にイエスマン
- 看護師からのお願いは全く聞かない
- 周りの看護師に対して、他のベテラン医師達と同様のふるまい
という行動をとっていました。
もちろん、医師には医師同士のコミュニケーションの取り方があり、自分よりも上司に対して「イエスマン」であることの方が多いでしょう。
しかし、例えば看護師が「○○さんへの投薬指示をお願いします」という、治療の上で重要な業務を、「まだ指示が出ていないから、私たちは動けない」という訴えであったにも関わらず、B医師は「今ヤダ」といって、すぐには動かなかったのだそうです。
その結果、どうやらB医師は、看護師たちからは嫌われてしましました。
B医師の診療補助に、自ら進んでつく看護師は誰もおらず、B医師の指示に対しては必要最低限しか行わない、という状況が生まれてしまったのだそうです。
もちろん、患者さんには影響のない範囲で、ですけどね。
看護師の口コミを、みくびってはいけない
看護師は、同じ病院内に勤務していても、看護師独自のネットワークを持っています。
病院付属の看護師養成学校(大学、短大、専門学校に関わらず)を卒業しているなら、「違う勤務場所で働く同期」がたくさんいます。
しかし看護師が他の職種と大きく違う点は、「勤務異動」があるということです。
医師の場合「今日は外来で明日は手術」という違いはあっても、科を変わることはほとんどありませんよね(研修医を除く)。
しかし看護師の場合、病棟勤務だとしても、同じ勤務場所にずっと勤務しているわけではありません。
例えば「整形外科病棟」から「循環器病棟」へ異動になれば、看護師は自分の持つネットワークを駆使し、「循環器病棟の看護師の人間関係」や「循環器の医師の性格」など、今後の自分の仕事に影響しそうなことに対し、情報取集をします。
つまり、医師からみれば「初めてあう一看護師」でも、看護師からみれば「あー、■■で有名な先生ね」と、初めましての瞬間から、医師のことをある程度は知っている可能性があるのです。
その看護師ネットワークの中で
- ××科の研修医、B先生って、指示出しお願いしてもすぐにはやってくれないんだよね
- @@科の研修医、A先生って、看護師がお願いする前に指示出しは終わっているし、看護師の手が離せない時は、代わりに患者さんへの説明もしてくれるの
などという言葉が出ていれば、医師当人の知らないところで「医師の評判」はまことしやかに囁かれているのです。
まとめ:看護師に好かれておいて損はないはず
もちろん、診療の上でメインとなるのは、医師の判断であり、医師の技術ではあります。
しかし、それをサポートしていくのは、看護師を始めとする医療スタッフです。
そのため、看護師を顎で使うような立ち振る舞いをするB医師の場合、当然ながら看護師のサポートは受けられず、自分やりたい診療を思い通りに進めることは難しくなることがあります。
前述の例のほかにも、「医師が病棟に来る前には、患者さんの検査結果がすぐ確認できるようになっている」ということはありませんか?
A医師タイプなら、これが日常になるかもしれません。
しかしB医師タイプの場合、患者さんの検査結果は、自分でカルテを開いて探さなくてはならない、というのが日常になることもあるでしょう。
つまり、看護師側がその医師に対して、どれだけ気を配ろうという気になるのか、ということなのです。
チーム医療、他職種連携という言葉が声高に言われている昨今の医療業界。看護師に好かれておくということは、医師の業務を円滑に進める上でも、決して損はしないのではないでしょうか。
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