第25回:人気のある診療科と医師個人の幸せの関係
■ 記事作成日 2017/12/13 ■ 最終更新日 2017/12/13
医師就職難の時代を目の前に迎えた、診療科選択考
元看護師のライター紅花子です。
このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で感じた“医師として活躍するために必要な素質”について考えてみたいと思います。
今回は、医師がどの診療科で働くと幸せなのかについて考えていきます。
現在、ひと昔前まではなかったリハビリテーション科や総合診療科といったさまざまな診療科が新設されています。
今までメジャーとされてきた診療科で働く方が医師にとって幸せなのか、はたまた最近新設されつつある診療科で働く方が幸せなのか、看護師の視点から医師が幸せに働くことのできる診療科について分析していきます。
現在の診療科数はどのくらいあるのか
現在、日本にはどのくらいの診療科があるのでしょうか。
厚生労働省が、各診療科に従事する医師数を調べる際に医師が従事する診療科として、調査対象にあげている診療科は、39の診療科があります。
1 | 内科 |
---|---|
2 | 心療内科 |
3 | 呼吸器科 |
4 | 消化器科(胃腸科) |
5 | 循環器科 |
6 | アレルギー科 |
7 | リウマチ科 |
8 | 小児科 |
9 | 精神科 |
10 | 神経科 |
11 | 神経内科 |
12 | 外科 |
13 | 整形外科 |
14 | 形成外科 |
15 | 美容外科 |
16 | 脳神経外科 |
17 | 呼吸器外科 |
18 | 心臓血管外科 |
19 | 小児外科 |
20 | 産婦人科 |
21 | 産科 |
22 | 婦人科 |
23 | 耳鼻咽喉科 |
24 | 眼科 |
25 | 気管食道科 |
26 | 皮膚科 |
27 | 泌尿器科 |
28 | 性病科 |
29 | 肛門科 |
30 | リハビリテーション科 |
31 | 放射線科 |
32 | 麻酔科 |
33 | 病理診断科 |
34 | 救急救命科 |
35 | 臨床検査科 |
36 | 腎臓内科 |
37 | 糖尿病内科(代謝内科) |
38 | 血液内科 |
39 | 乳腺外科 |
リハビリテーション科は、病院によって理学診療科という名前となる場合もあります。
また、病理科については平成20年より病理診断科という名称に代わっています。
しかしこれ以外にも、様々な診療科の名称を目にすることがあります。
これは、医師あるいは病院の開設者が、厚生労働省通知および医療法施行規則に則って、自施設での診療科名をつけているためです。
実際に医師が「広告」として明示している診療科には、以下のようなものがあります。
医科で広告するに当たって通常考えられる診療科名の例(名称順)
つまり、厚生労働省が主たる診療科としている診療科は39診療科ですが、それ以外の診療科の名称は、医師が患者を集める手段として、分かりやすく細分化して定めているというようなところになるでしょう。
診療科別医師の現状とは?
次に、厚生労働省が主たる診療科としている診療科に従事している医師の現状を見ていきましょう。
病院に従事する医師が最も多い診療科は内科であり、約20%が内科医として勤務しているようです。
二番目に多いのは整形外科で全体の約7%、三番目が小児科と精神科で全体の約5%前後が従事しているという状況にあります。
また、診療所に従事する医師を診療科別に見ても、内科医が最も多く全体の約40%、その次が眼科で約8%、次が整形外科で約7.7%となります。
逆に従事者数が最も少ないのが
- 病院:美容外科、気管食道外科、アレルギー科、肛門科
- 診療所:臨床検査科、救急科、気管食道外科、感染症内科
となるようです。
内科は、総診療科数が多いことや、高齢の医師でも比較的従事しやすいという点が、人気のポイントとなっているようです。
実際に医師の平均年齢をみると、内科に従事する医師は全国平均を大きく超えています。
一方、そもそも開設されている医療機関が少ない診療科や、若い医師でないと務まりきれないような(ある意味で過酷な状況になりやすい)診療科では、従事者数が少ないということが考えられます。
この先、可能性を秘めている診療科とは
医師が「働くことで幸せだと思える」診療科。
それは将来的な可能性を秘めており、生涯にわたって働き続けることが可能な診療科、という一面を持ち合わせている診療科ではないでしょうか。
医師の転科事情を調べてみると、やはり内科への転科者が圧倒的に多く、その理由としては
- 開設している医療機関が多く、どの病院にもある
- 高齢化に伴い需要が高まり、需要が無くなることが無い
という所が大きな理由となるようです。
しかし、内科への転科者が増えてきていることに加え、医師の専門性を重視する情勢が強まることから、他の診療科を専門的にやってきた医師がいきなり内科に転科しても、内科系の専門医資格が無い場合には、医師として勤務していくことは厳しい状況になることが考えられます。
そのような状況の中で、今後の可能性を秘めており、ひそかに注目されているのが「リハビリテーション科(理学療法科)」です。
現在、急性期病床での在院日数の影響もあり、早い段階から患者がリハビリテーション科へと転科していく傾向にあります。
また、リハビリテーション科には様々な診療科から患者が転科してくることから、過去の経験を発揮することもできます。
さらに、少子高齢化が加速する中で、患者からの需要が高い診療科であることも確かです。
また、リハビリテーション科に転科した医師の多くは、そのメリットとして「仕事とプライベートの両立」を上げています。
治療よりも復帰が中心となる診療科であるため、他の診療科よりも他職種が活躍する場面が多く、自分自身への負担が比較的軽い、というのも転科の決め手となっているようです。
その他女性医師の中では、他の診療科よりも救急で呼び出されることが少なく、自由診療など幅広い診療を手掛けることができる、皮膚科への転科は人気があるようです。
形成外科も、専門医であれば将来的に「美容外科クリニックの開院」も視野に入れることができるため、比較的人気が高いようです。
一方で、近年新設されている「病理診断科」などは、まだまだ人手不足の状況が続いています。
需要が高まっている一方で、病理医の資格をとる為には
- 5年を超える程の病理診断の経歴
- 病理解剖50症例以上
- 病理診断3,000症例以上
- 迅速病理診断50症例以上
- 解剖経験
など、様々な要件があることから、中途での転科は難しいと感じる医師が多いようです。
医師が働いていく上での本当の幸せは
将来性や自身のライフワークバランスを考えても「この診療科で働くことが幸せ」という診療科は、一般論としてはあるのかもしれません。
しかし、医師として自分の好きな診療科について学び、好きな仕事を極めていくということが、医師にとっての本当の幸せではないでしょうか。
自分の「性」に合っていて、やりがいを感じる診療科であれば、周囲が勧める診療科でなくても、医師は幸せと感じることができると考えられます。
その「幸せと感じる要素」は何なのか。
仕事の内容、プライベートとの関係、ライフワークバランスとの関係、人によって感じ方は違います。
男女差、年齢差もあるかもしれません。
この先「医師が過剰となる時代」に備え、自分自身が「本当に幸せだと感じる診療科」を、より真剣に探してみるべき時代に入りつつあることを感じています。
参考資料
日本医師会 診療科名の標榜方法の見直し ~組合せの例
https://www.med.or.jp/doctor/report/hyoubou/reiji.html#hourei
厚生労働省平成26年度調査結果の概要
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf
同上 診療科名別にみた医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/06/kekka1-2-3.html
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