医師ならではのキャリアプランニングとは?
■ 記事作成日 2015/8/22 ■ 最終更新日 2017/12/6
本コラムをご覧のドクターはきっと、「キャリアプランニング」という言葉を聞いた事があるでしょう。さらに、どのような内容なのかも、何となく分かっているのではないでしょうか。
キャリアプランニングとは…
将来の自分の理想像を考え、夢や目標を明確にし、その状況を得られるために、時系列による段取りを行っていくものです。要は、「なりたい自分になるための人生設計」という訳です。
最近では、大多数の大学に於いて「キャリアプランニング」という講義が継続的に一般的に行われています。…しかし、10年、20年、30年も前の大学では、そのようなカリキュラムは殆ど実践されていませんでした。
つまり、現時点における多くの転職適齢期の医師が、キャリアプランニング教育を受けておらず、学術的に、体系的に、何ら知見が無いと言っても過言ではないのです。
医師には、一般的な公務員やサラリーマンと異なり、実に様々な働き方があります。勤務医・開業医・フリーランス医と、一口に医師と言っても様々です。加えて、細かい専門医資格の取得や特定の症例数を積む必要性、博士号を取得したり特定の研究分野に従事するためのポジション争いなど、医師には人生の分岐点が多様に訪れるのです。医師とは、実に多角的かつ綿密なプランニングが要求される職業だと言えるでしょう。
「転職」を考えているドクターの皆さん。転職は、キャリアプランニングに於いて、最も大きな分岐点の一つです。この分かれ道で「なりたい自分」に近づけるよう、医師の転職キャリアプランニングについて、考えてみる事にしましょう。
はっきりとしたビジョンを持とう!
キャリアプランニングにあたり最も大切な事は、そのゴールのイメージを明確に持つ事です。「何となく~」…ではいけません。はっきりとした夢や目標を持つ事が大切なのです。
医業とは、一生に渡って比較的安定収入を見込みやすい職業とは言え、医局に自らのキャリアの形成を任せられない時代です。そんな医師の転職市場はすこぶる活況で、他の職業に比べてもより盛んな様子です。キャリアチェンジが頻繁に行われる職業ですから、その市場で勝ち抜き、生き抜いて行くには、人一倍しっかりとした、クリアなビジョンを持つ事が必至でしょう。
はっきりとしたビジョンとは何か?
ドクターは「ビジョン」と言う言葉を聞いた時、その意味をどのように解釈されるでしょうか?キャリアプランニングに欠かせないキーワードではありますが、夢やロマン、目標や計画などと、人それぞれに多様な捉え方ができる言葉です。
「ビジョン」とは、未来の自分が在りたい姿や状況を、具体的にイメージする事です。未来のある時点で、自らがどのような発展を遂げていたいか?成長していたいか?…などの未来像を描き、基本的な構想を掲げる事です。
従って「ビジョン」とは、ライフプランニングとは似て非なるものです。ライフステージにおける、就職・転職・結婚・出産・子育て・昇進・開業・などといったライフイベントとは違います。あくまで、それらの時点で、具体的にどう在りたいか?…という、具体的な理想像であるのです。
具体的な理想像とは?
たとえば、ドクターが5年後の時点での理想像を描く時…
どんな専門医資格を持つ医師で、今どんな研究をしていて、どんな病院で働き、どのような症例を専門とし、どのくらいの症例数を積んでいて、どのような役職に就いていて、どのような組織をまとめているか?年収はどのくらいで、現職で何年くらいのキャリアを積んでいるのか?どんな家に住んでいて、どんな車に乗っているのか?家族はいるのか?家族はどんな暮らしをしているのか?…etc.
仕事もプライベートも、その時点での自分の生活すべてをより具体的に思い浮かべるのです。身近な先輩や小説やマスメディアに出てくる憧れの人などから、ロールモデル(自分にとって、具体的な行動や考え方の模範となる人物)を見つける事も、具体的な理想像を描く助けになります。
どのくらい先の理想像を描くのか?
では、キャリアプランにおいて、どのくらい先の未来をターゲットに理想像を描けば良いのでしょうか?終身雇用制や医局人事制度が崩壊し、常に激しい潮流が行き交うキャリア市場において、何十年もの先の未来を描く事は不可能です。つまり、どんなに30年先、50年先のビジョンを細かく描いても、文字通り“絵空事”にしかなりません。
ドッグイヤーとの表現では足りず、マウスイヤーとも言われる近年、電光石火のスピードで情報技術は進化し、人々の暮らしも、常識も、市場状況も変わってきます。特に本格的な高齢化社会と密接に関わる医業においては、その根本的な医療制度までもが刻々と変わりつつあり、誰にも未来は分かりません。
はっきりとしたビジョンを意識した理想像は、およそ10年先のある程度具体的な中期的ビジョンと、3~5年程度の委細までイメージした短期的ビジョンの、2パターンを構築してみると良いでしょう。
その際、「短期的ビジョンから中期的ビジョンを描くのか?」「中期的ビジョンから短期的ビジョンを描くのか?」…に、どちらが正解という事はありません。10年後のゴールを決めて逆算していく方法は壮大な理想を描くのに適していますし、3年後のゴールを決めて積上げていく方法は、より具体的かつ詳細な理想を描くのに適しています。また、これらは、ドクター自身の性格により、やりやすい手法が決まってくるでしょう。
3年後から10年後を描いても、10年後から3年後を描いても構いませんが、大切な事は、充分な時間をとって、より委細に具体的にイメージする事です。何度も何度も反芻し、自らの心が美しく晴れ渡るところにまで、イメージをクリアにしておく事です。
キャリアの棚卸をしてみよう!
医師としてのキャリアプランを考える時、実際にどこから手をつけていったら良いか?…分からないでいる方が非常に多いようです。そんな時にお勧めしているのが、「キャリアの棚卸」です。
キャリアの棚卸とは?
キャリアの棚卸とは、医師として、これまでどの様な医療機関のどのような診療科に於いて、どのような役職や職務に従事してきたか?…を、総て書き出し、それぞれのキャリアの意味を探っていくものです。
その作業は研修医時代へのフォーカスまで遡ります。今まで自分が配属された全てのポジションを、かたっぱしから書き上げて下さい。同じ職場の同じ役職でも、担当する職務が違えば、それは別のキャリアになります。
これまでドクターが経験してきた全てのキャリアを並べ、
「どんな仕事をしてきたのか?」
「どんな仕事をした時に、力を充分に発揮できたのか?」
「どんな仕事をした時に、力を充分に発揮できなかったのか?」
その総てをリストアップの上、整理し、分析するのです。
これにより、「自分の強みは何か?」「自分の弱みは何か?」「自分の適性は何か?」「自分がどんな転職を欲しているのか?」…が、具体的に炙り出て来ます。
そしてその結果は、ドクターの転職活動の主軸として、キャリアシートに記載したり、面接時に訴求するセールスポイントや、交渉条件そのものになってゆきます。
キャリアの棚卸の方法
キャリアの棚卸は、以下のフローで行うとスムーズです。
1.全てのキャリアを具体的に書き上げる。
就業医療機関・部署・役職・職務内容をすべて書き上げて下さい。手書きでも良いですが、エクセル等の表計算ソフトを使うと、より便利でしょう。エクセル等を利用する場合、縦軸にキャリアを並べていくと便利でしょう。
2.それぞれのキャリアの横に実績を書き上げる。
上記1で並べたキャリアの軸の横に、ドクターが具体的にどんな実績を上げてきいたのか、書き足して行きましょう。どんな症例をどの程度の数積んだか?どんな論文を書いてどう評価されたのか?どんな専門医の資格をとったのか?どんな医療を提供してきたのか?どんなチームを形成したのか?…etc.具体的に思い出し、実績を記してください。その際、各時点での年収も記載すると良いでしょう。
3.自分のキャリアに対し、5段階で自己評価をする。
上記1.2で並べたキャリアと実績の横に、自己評価を記して行きましょう。評価の観点は、自分自身の満足度です。5段階評価などで満足度を可視化できるようにしましょう。
4.5段階自己評価の理由を考える。
そして、上記3の5段階の数値的評価の横に、なぜそう思うのか?…という、理由を書いて行きましょう。
「自分の診察で、患者を救う事ができた」
「遣り甲斐はあったけど、時間的ゆとりがなかった」
「勉強にはなったけど、給料が安かった」
「上級医師が症例を持って行き、実績を積めなかった」
「専門医の認定を受けるための症例がのぞめなかった」
「研修教育制度が全く無かった」
自己評価には、様々な理由があるでしょう。良い事も、悪い事も、一長一短な事も、すべて本心で記載して下さい。
5.変動の可能性を考える。
上記4のキャリア評価理由の横に、その自己評価の変動の可能性を考え、記入してみましょう。たとえば給料に不満があって、それが役職が上がる数年後に解決される見通しならば、変動の可能性は「ある=〇」という事になります。
たとえば自分が現在、取得したい専門医資格がとれない診療科に配属されていて、その医療機関に希望の専門医資格がとれるポジションがあるのなら、「あるかも?=△」ですが、専門医資格がとれる診療科がそもそも無かったり、異動の可能性が少ない場合、変動の可能性は「ない=×」という風になるでしょう。
この変動の可能性部分に記した事は、そのまま「転職理由」として利用できるものになります。
6.将来希望する自分の役職・職務などを記入しましょう。
ここは、過去のキャリアではなく、将来のイメージを記載する所です。上記①の縦軸の箇所に、未来像としての就業医療機関・部署・役職・職務内容を書き上げてみましょう。10年先くらいまでを目安に、必要に応じて複数記載して下さい。
7.将来の役職・職務の横に、目標・理想像を記入しましょう。
上記6で書き出した将来の役職や職務などの横に、具体的な目標や理想像を書き出して行きましょう。どんな医療機関でどんなポジションに就き、どのような権限を持っていたいのか?どのような部門での専門性を確立したいのか?…etc.などです。その際、各時点での希望年収も記載すると良いでしょう。
8.将来の目標・理想像における、理由を記入しましょう。
上記7で書き出した目標・理想像が、どんな理由で掲げられたのか?ドクターの気持ちや、将来性の理論などから、その理由を書き出していき、目標・理想像の横に書き上げて下さい。
9.実現の可能性を評価しましょう。
上記8で書き出した目標・理想像などを描いた理由の横に、現在の職場に於いて、そのビジョンが達成可能かどうかを評価して下さい。5段階などでレベルを可視化すると良いでしょう。
これらの作業「キャリアの棚卸」は、キャリアプランの基本中の基本となります。
キャリアの棚卸作業は、内容さえ把握できれば、どの様なフォーマットでも構いません。ここでは、サンプルのフォーマットを用意していますので、必要に応じてご活用ください。
キャリアの棚卸の必要性
なぜキャリアの棚卸が必要なのか?…もしもドクターが、何となくという動機で転職活動を始めてしまうと、「なぜ転職が必要だったのか?」「何を実現したかったのか?」などという、目標や目的の行方がぶれてしまいます。そうすると結果、「いつの間にか、転職という行為そのものが目的になってしまった」…「今の職場から逃げ出したいだけだった」…「何をしたいか、何をすべきか、分からなくなった」…「結局、また転職をしなければならない羽目になった」…と、散々たる結果に陥るってしまうのです。
また、キャリアプランの王道は、「今までのキャリアを活かす」…という事に尽きるとも言えます。ドクターの今までの人生を、次のキャリアに活かす事が、一番手堅いのです。転科をするにしても、今までのキャリアを活かせる専門科と、全く異なる専門科があるでしょう。
もしも、ゼロベースでキャリアチェンジをする場合は、相当な覚悟が必要です。同じ医業とは言え、基本的な臨床コミュニケーション能力などを除けば、今まで培ってきた技術や経験が、全く役に立たない分野もあります。
キャリアチェンジには、20代でも40代でも50代でも同じ覚悟が必要です。全くのゼロの環境で、果たして自分が生き抜いて行けるのか?勝ち上がって行けるのか?…を、自問自答して下さい。
今までとは異なる職務に就くとしても、これまでドクターが培ってきたキャリアを活用する事が、一番スムーズな方法なのです。同じ専門科でなくとも、今まで培ってきた技術や知識を新しい分野で転用できる方向性を探る事が、理想的です。
医師の専門性は、一朝一夕で得られるものではありません。何年・何十年と培ってきたキャリアを一蹴するならば、これまで努力して来た何年・何十年がそのまま必要なのです。
ゼロベースのリセットに、そんな気力も体力も時間もないドクターが大多数だとすると…キャリアの棚卸により、自身の特長などを見出し、「強み」「弱み」を明確にした上で、キャリアを活用する事が王道なのです。
転職は、人生の一大事件。キャリアプランニングの本丸とも言えるアクションです。そんなシーンでドクターを助けてくれるのは、紛れもなく過去の自分=キャリアなのです。
自分の強みを知り、転職戦線で武器として活用するためには、客観的に自分を知る事から始まります。医業における自分探しとは、「キャリアの棚卸」に他ならないと言えるでしょう。
市場価値の高い人材になるには?
医師不足と言われている現在、医師の転職は概ね「売り手市場」だと言われています。しかし、そんな活況市場においても、全てのドクターが、良い転職を実現できている訳ではありません。
それはもちろん、職務とのマッチング性や、転職エージェントやコンサルタントの質にも関わる事です。
しかしながら、転職によりどんどん収入アップする「金持ちドクター」がいるのと共に、どんどん収入ダウンする「貧乏ドクター」も確実に存在しています。
転職市場で引く手あまたな、「売り手至上主義」がまかり通る人材とは、どのようなタイプのドクターなのでしょうか?
このコラムをご覧のドクター自身が、転職シーンで「貧乏ドクター」への道を選んでしまわぬよう、売れる人材の行動・思考の特性を考えてみましょう。
自分の「強み」と「弱み」を明確に把握している
売れる人材とは、自分自身のキャリアポジションを、実に明確に把握しています。自らの専門分野に於ける医業スキルはどの程度なのか?コミュニケーションスキルやマネージメントスキルはどの程度あるのか?自身の性格やパーソナリティーとして、どのような分野に適性があるのか?…などを、客観的に把握し、自分を量る事ができる人です。
つまりそれは、「自分の強み」を存分に把握しているという事です。どこがセールスポイントなのかを分かっていると、市場において、相手に切り込んでいくポイントが分かります。
そしてそれは、「自分の弱み」も理解できているという事です。医師として必要なスキルをアベレッジ程度まで引き上げる努力はどんなドクターにも必要です。しかし、弱み部分が必要な職務には就かず、人に任せ、全体として良い方向へと導き結果を残す事も重要なのです。弱い部分は他人に委ねる寛容さと、もっと大きな目標を達成するためのマネージメント力が求められていると言えます。
自分を「商品」として明確に意識している
出来るドクターは皆、自分を商品だと見なし、商品力を高めるための自助努力を怠りません。それは、自分の医療スキルやビジネススキルを磨くために、自己革新を続けている人です。
自分を商品だと理解できていれば、常にどの程度の市場価値があるのかを問題視するようになります。そうすれば、専門性の追求や各種スキルアップを事欠く事はなく、意識的な日々を送る事ができます。新しい情報を取り入れ、謙虚に学び続けていく姿勢は、いつの間にか大きなスキルやキャリアになっているのです。
専門性を持っている
医師免許さえ持っていれば安泰…こんな時代はとうに終わっています。これからの医療市場においては、卓越した専門性が問われていくでしょう。ただその分野で専門医の認定を受けている…などの大枠ではなく、特定の診療科において、どの程度の医業レベルを持っているのか?という、偏差値的ポジショニング的もの…や、同じ専門医の中でも、どんな症例の診療や手術などに専門性があるのか?…という事です。
ドクター自身が、「私は〇〇科の専門医で、〇〇の診療について、多数の実績があります。」…と、一言で自分を表現できる専門性を持つ事が、売り手優位に立つために重要になるのです。
「一般内科であれば、どんな事でも普通にこなせます。」…といった体では、何の訴求力も持たないのです。
経営者視点を持っている
これはなかなか難しい視点ですが、医師とは言え、ビジネスパーソンの一人であるという思考は重要です。一般的な職業とは違い、売上アップとコストダウンを具現化していくという観点とは少々異なるかもしれませんが、その根源は同じです。
医療提供の場を、どうやってうまく回していくのか?…という観点は、結果的に、経営の安定にも繋がります。適材適所に人材や職務を振り分けたり、医業をサービス業と捉えたコミュニケーションなどは、これからの医業ビジネスパーソンに欠かせないスキルとなるでしょう。
自己のアンテナの感度が高い
アンテナの感度とは、現時点でのドクターのスキルやポジションとは関係ありません。個々人の意識の違いで、精度が変わってくるものです。それは、新しい情報を進取しようとする心の有り様です。貪欲に学び、創意工夫をしようとする心の有り様です。
そういう人材は、なりたい自分の理想像=ビジョンを持ち、そこに向けた行動計画を持っているものなのです。ビジョンと共にアクションが伴っている人間は、一般の人材が見逃してしまう情報やチャンスなども、キャッチする能力が備わっています。
コミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力とは、マネージメント能力そのものと言い換えても過言ではありません。患者さんはもちろん、同僚や上司や部下などに信頼を得て、他者を納得させたり、他者を動かしたりするためには不可欠な能力です。
同じ事を言っても、同じ行動をしても、「あの人の言う事ならば聞こう…」と、スムーズに事が進行する人と、そうでない人がいます。前者のタイプのドクターは、どんな職場に行っても成功するでしょうし、その前の転職活動でも有利に事を進められるでしょう。
コミュニケーション能力は、協調性にも、リーダーシップ性にも、多様に問われるスキルです。どんなに専門性の高い医業スキルを持っていたとしても、これが無ければ、何も始まりません。
このように、上述6つの項目のような、思考パターン・行動パターンを持っているドクターは、どのような転職市場においても重宝され、需要と供給のバランスの中で、優位な交渉を進める事ができるでしょう。逆に言うと、これら項目に当てはまるスキルに乏しい医師は、弱い部分を補強できるよう、意識した行動を起こしてください。
漂浪ドクターにならないための条件!
どうしたら、キャリアの海で彷徨う、漂流ドクターに陥る事態を避ける事ができるのでしょうか?
それには、ドクター自身が前項で述べた「市場価値の高い人材」になる事が一番なのですが…そのような人材が、転職市場でどのように評価されているか?…を、確認してみましょう。
年収とは稀少性とのバランス
ドクターの収入が、医療機関においてどのような査定の下に決められるかと言うと、それは稀少性とのバランスに他なりません。
市場ニーズと鑑み、稀少性の高い専門性を持つ人材は、需給バランスから高い付加価値がつきます。しかし、稀少性とは専門性だけではありません。ここに大した専門性が無いドクターがいたとしましょう。大都会では何の付加価値もつきませんが、医師不足の地方に於いては、就業してくれるだけで大きな価値を持つ事になります。そんな時、待ちに待ったドクターに求められるものは、専門性というよりも、一人一人と向き合うコミュニケーション能力かもしれません。稀少性とは、マーケット見合いのものなのです。
医療機関からして見ると、同じようなスキルの人材を選べる状況にあるならば、「若さ=どのくらい長く働いてくれるか?」や、「コスト=どの程度の年収に抑えられるか?」…などという観点での競争原理が働きます。
稀少性をフックに転職活動をする場合、キャリアやスキルといった専門性と共に、年齢や地域なども考慮し、どの市場に向けて自らを売り込めば、稀少性=付加価値が高くなるのか?…を、しっかりと吟味する必要があるという訳です。
専門性は年齢と共に要求される
たとえば研修医上がりすぐの20代の場合、専門性を持つ者などいません。そんな人材に要求されるのは、熱意ややる気といったものや、コミュニケーション能力や協調性といった、人間的なベーススキルが第一義となります。
しかし、30代や40代にもなると、ベーススキルよりも、専門性が問われてゆくのです。同程度の専門性を持つ人間が二人以上いて選考に迷った場合、初めてベーススキルにまで目を向けてくれると言っても過言ではないでしょう。一にも二にも、まずは専門性が重要です。30代を過ぎると、どんなキャリアとスキルを持っているのか?を、全面に出した戦略が重要です。
一般的に、年齢が高いと年収も高くなる傾向にあります。さもすれば、20代の若者ではなく、中年以降の人材を採用するための理由が必要です。他者を納得させるカンタンな理由は、その専門性になってくるのです。
属人性のあるキャリアやスキルに優位性がある
ドクターのキャリアには、ドクター個人に付帯する属人性のあるものと、大学や病院といった組織力に付帯するものがあります。
転職活動に於いて重要視されるのは、多くのケースで属人性のあるものです。それは、ドクター自身の医業に於ける知力や経験やコンサルテーションスキルなどです。
組織力に付帯するキャリアは、特定の組織では発揮される能力かもしれませんが、組織が変わると、無意味なケースもあるからです。特定の医療機器がなければ出来ない医業ならば、転職先にそれが無ければ無意味です。特定の優秀な人材を上司や部下に持つ事で、チームとして力を発揮していたならば、彼らがいなければ無意味なキャリアとなるのです。
誰にも負けないという観点の相対的な「専門能力」と、自分にしか出来ないという観点の絶対的な「保有能力」をしっかりと意識し、それらを属人的に積み上げていく事が重要なのです。
どの市場で勝負するかを考える
転職活動を優位に進めるためには、ドクター自身が持っているキャリアやスキルを、どんな市場に投げかけるか?…が、重要ポイントとなります。競争相手が多く飽和状態の市場では、良い結果が得られにくいのは当然です。
マーケティング的観点で、自身が最も売れる市場を探すのです。どの市場で勝負をすると、一番利があるのか?…は、自分自身のキャリアプランニングを完遂しなければ、見えてこないものです。勝負の場所を選ぶためにも、キャリアプランニングは非常に重要な行程なのです。
キャリアプランニングは、転職成功の基盤です!
いかがでしたか?転職活動において、自分がどう在りたいか?具体的に考え、進行していく事が、どれだけ重要なのかおわかりいただけたでしょう。
キャリアプランニングは、転職活動を成功に導くための、基盤中の基盤です。これがなければ、どんな計画も行動も成り立たないのです。
一見難しそうに見える作業も、コツを掴めば簡単なものです。自らの望む有り様を具現化し、どんどんアプトプットして、逆算していくのです。しかし、キャリアプランの最初の一歩は非常に難しいもの。そんな場合、自分ひとりで抱え込まず、キャリアプランの段階から転職エージェントに相談してみてはいかがでしょう?具体的な転職活動の前に、一見遠回りととれる時間を割く事は、結果「急がば回れ」につながります。
優良な転職エージェントでは、ドクターのキャリアを棚卸し、然るべき市場を見つけるためのキャリアプランニングにおいて、信頼できるパートナーとなってくれます。
私、野村龍一が、医師転職コンサルタントの立場から、口を酸っぱくして言っている事があります。それは…良い転職は、転職エージェント選択時に決まっている…という事実です。
将来のビジョンが見えていない、キャリアプランニングが出来ていないドクターは、転職エージェントの専門的な力が通常以上に必要です。ドクターがより良い転職を実現できるよう、当研究所がお勧めする優良なエージェントへのコンタクトを、心からお勧めします。
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
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