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勤務先別に見る「医師の平均年齢」から「働き方」を考える

勤務先別に見る「医師の平均年齢」から「働き方」を考える

■ 記事作成日 2018/6/1 ■ 最終更新日 2018/6/1

厚労省では、医師・歯科医師・薬剤師の分布、及び就業の実態等を把握する目的で、2年ごとに「医師・歯科医師・薬剤師調査」を実施し、結果を公表しています。

 

今回は、平成28年に公表された上記調査結果より、各診療科の「医師の平均年齢」を見ながら、そこから見えてくる医師の「働き方」の選択肢を探って行きたいと思います。

 

※なお、今年は平成30年なので、今年の年末までには同調査が行われる予定です。

 

平成28年末現在、医師の勤務状況を振り変える

 

「医師・歯科医師・薬剤師調査」では、性別や住所、生年月日といった基本情報から、業務の種別や業務内容、従事する診療科名など、勤務内容も詳しく調査されています。

 

ではまず、医師が従事している施設と、業務の種別を見ていきましょう。

 

勤務している施設と業務の種別

 

前回、当コラムでは「医師の国家試験結果」について触れましたが、ここ数年は毎年7,500人規模の合格者が出ていますから、医師として勤務する人数も増えています。

 

例えば

 

  • 医療施設の従事者:304,759 人(総数の 95.4%)、前回比 7,914 人、2.7%増加
  • 介護老人保健施設の従事者:3,346 人(同 1.0%)、前回比 116 人、3.6%増加
  • 医療施設・介護老人保健施設以外の従事者:9,057 人(同2.8%)、前回比481 人、5.6%増加。

 

施設・業務種別にみた医師数

 

さらに「医療施設の従事者」の内、病院勤務医は7,000人以上、診療所勤務医は573人、増えています。

 

中でも最も増えているのは「病院(医育機関附属の病院を除く)の勤務者」、つまり医学大学付属病院以外の病院に勤務する医師が増えている、ということになります。

 

また、前回(平成26年)の調査結果と比較すると、病院、診療所ともに「代表者」である医師は減っているものの、勤務する医師の数は増えています。

 

上記のように、施設ごとに見るとそれぞれで順調に増えているように見えます。しかし医師数全体でみれば、ここ数年の「医師国家資格合格者数」は、年間7500人以上ですので、2年あれば15,000人の新人医師が増えていることになりますが、実際は医師数全体で8,500人あまりの増員、ということになります。

 

その理由としては

 

  • 年齢による引退、死亡などにより、勤務医が減少している
  • ライフワークバランスによる退職、休職により、勤務医が減少している

 

などが考えられます。

 

医師は一般サラリーマンとは違い、国立病院や県立病院、公営の医療団体など「公務員」として働かない限り定年はありません。しかし実際には、ある程度の年齢なると引退することもありますし、特に女性医師の場合は後者が多いのではないかと推測できます。

 

医師は、長く働きたくても、過酷な勤務実態などが背景となり、難しい場合も多いでしょう。それが女性であれば、妊娠・出産・育児などで仕事を続けられないケースもあります。

 

自分が何歳くらいまで働きたいのか、そのためにはどうすれば良いのか。具体的には、「何科であれば」長く続けられるのか、ということを考えてみることも、医師としての働き方を決めていく要素となるかもしれません。

 

年齢階級と平均年齢

 

年齢階級別に、医療施設に従事する医師数をみると、2年前(平成26年)の前回調査と比較し、今回(平成28年)は50歳代がやや減少しているものの、60歳代以降の年代では医師数が増えていることが分かります。

 

年齢階級別 医療施設に従事する医師の推移

 

さらに、医師全体の平均年齢をみると、平成26年は49.3歳、平成28年は49.6歳で、ごくわずかではありますが、平均年齢があがっています。さらに、この10年ほどで比較すると、毎年0.3歳ずつ程度、平均年齢は上がる傾向があるということが分かりました。

 

この理由として、前述の通り医師は「年齢による引退、死亡など」だけではなく「ライフワークバランスによる退職、休職」が多い、と推測できるのではないでしょうか。

 

この医師の平均年齢をさらに診療科ごとに見て行くと、自ずと「長く働ける」「ライフワークバランスをとりやすい」という診療科や職場環境が見えてくるかもしれません。

 

診療科別の医師の平均年齢

 

こちらは、診療科別に、病院勤務医、診療所勤務医、医師全体の平均年をグラフ化したものです。

 

診療科別 医師平均年齢の推移

 

このグラフからは、次のような事柄が読取れます。

 

  • 全体の平均年齢がもっとも高いのは、肛門外科医
  • 病院勤務医の平均年齢がもっとも高いのは、臨床検査科医で57.2歳
  • 診療所勤務医の平均年齢がもっとも高いのは、外科医で66.4歳
  • 病院勤務医と診療所勤務医の年齢差をみると、全体では15.1歳
  • 病院勤務医と診療所勤務医の年齢差がもっとも大きいのは消化器外科(胃腸外科)、その差は18.0歳(病院:45.3歳、診療所63.3歳)
  • 2番目に年齢差が大きいのは外科医で、その差は17.3歳
  • 美容外科医の平均年齢は40歳代だが、その差は3.8歳で診療所勤務医の方が若い

 

全体的に、診療所勤務医よりも病院勤務医の方が、平均年齢が若い傾向にあります。これは、病院勤務の後に開業する、あるいはクリニック勤務になることの方が、その逆よりも一般的であることが、その理由の一つでしょう。

 

ただ一つ、美容外科医だけは平均年齢が逆転し、診療所勤務医の平均年齢の方が若くなっています。

 

勤務場所による平均年齢からみた「医師の働き方」

 

医師として無理なく長く働くことを考えた場合、これまで見てきたデータを踏まえると、いくつかの方向性が見えてきます。

 

  • 病院勤務医の場合、長く働くことができそうなのは、臨床検査科、肛門外科、リハビリテーション科など
  • リウマチ科、感染症内科、形成外科、救急科は、同僚医師が比較的若い可能性がある
  • 病院勤務から開業する、あるいはクリニック勤務になる場合、長く働くことができそうなのは、外科、アレルギー科、消化器外科(胃腸外科)
  • 比較的若いうちに開業する、あるいは開業医へ勤務するなら、美容外科

 

一方、診療所勤務医のうち、病理診断科も平均年齢は高い方なのですが、「診察所に病理医を」というニーズは、世の中には多くないと思われますので、就職先、転職先があれば、という条件が付きそうです。

 

まとめ

勤務先別に見る「医師の平均年齢」から「働き方」を考える

 

長く働けるということと、良い働き先であるということは、必ずしも同じではありません。しかし、医師としての良い働き方を考える上で、一つの目安として考えられるのではないでしょうか。

 

少しでも長く働き続けたいのか、それとは関係なく希望する診療科で働きたいのか。データから見える現状を把握した上で考えてみることも、今後は必要なのかもしれません。

 

 

【参考資料】

 

厚生労働省 平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 医師
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/dl/kekka_1.pdf

 

同上 統計表
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/dl/toukeihyo.pdf

 

平成26年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 医師
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

 

平成24年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 医師
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/12/dl/kekka_1.pdf

 

平成22年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 医師
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/10/dl/kekka_1.pdf

 

平成20年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 医師
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/08/dl/gaikyo1.pdf

 

平成18年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 医師
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/06/kekka1-2-3.html

 

厚生労働省 第3回医師の働き方改革に関する検討会 資料
勤務医に関する各学会等による実態調査
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000181816.pdf

 

厚生労働省 第2回医師の働き方改革に関する検討会 資料
医師の勤務実態について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000178016.pdf

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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