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医師の需要と供給のバランスの実際 この5年間の動向

医師の需要と供給のバランスは?その3=直近5年間の動向=

■ 記事作成日 2016/3/17 ■ 最終更新日 2017/12/6

厚生労働省では、数年ごとに「必要医師数実態調査」を行っています。その一方で、「医療施設(静態・動態)調査」という調査も行い、その時点での診療科別、都道府県別などの医師数および歯科医師数を把握しています。

 

今回は、この2つの調査結果から、「(医療機関側で)必要とする医師数」と、実際の医師数とのギャップを考えてみたいと思います。


医療施設実態調査からみた医師数

医師の需要と供給のバランスは?その3=直近5年間の動向=

2015年11月19日に、厚生労働省は「平成26年医療施設(静態・動態)調査」の詳細データを公表しています。これによると、2014年10月1日時点での全国の医療機関総数は177,546です。このうち、病院は8,493、一般診療所は100,461となっています。

 

また、病床数としては、病院・一般診療所等を合わせて1,680,712、このうち病院の病床数は1,568,261です。皆さんもご存じの通り、病院の病床数は年々減少傾向にあります。

 

しかし、だからといって医師数が減少しているわけではありません。以前、こちらのコラムでもご紹介しましたが、全国の医師数は、年々増加傾向にあります。

 

  • 計算上は、年間、およそ8,000人から9,000人の「新米医師」が誕生している
  • 47都道府県で平均すると、1都道府県あたり170人~190人くらいが増えている
  • 人口10万対でみると、毎年およそ8人程度が増加中

 

20年以上前から、少子高齢化の進行に伴い、いずれは働き手となる医療者数の増加率もゆるやかになると予測されるため、病床数は減少傾向にあります。現在は特に「地域包括ケアシステム」の推進や、「住み慣れた街(家)で最期を迎える」ことが推奨されていますが、その背景には、こういった現実があります。
一方で、医療の高度化、先進医療技術の開発も進んでおり、入院可能な医療施設=病院に求められる姿も変わりつつあります。医師に対しても、より高度な技術が求められる時代になってきたといえるでしょう。

 

こういった背景を踏まえ、実際の医師数を見てみましょう。図2は、平成27年12月に公表された「平成26年(2014)医療施設調査」という調査結果における、2014年時点での「診療科別の医師数」のグラフです。

 

実際に働いている医師の中では、内科医が圧倒的に多いことが分かります。次に、外科医、整形外科医、精神科医と続き、同じ内科の中でも循環器内科、消化器内科などが続いています。


5年前の「必要とされる医師数」はどうか

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では、同じ診療科別に「必要とされる医師数」について、5年前の調査結果を見てみましょう。

 

図2と比較するとどうでしょうか。

 

5年前の時点でも、現役医師数+必要とされる医師数は、「内科」がトップで、これに「外科」「整形外科」「精神科」が続き、同じ内科の中でも循環器内科、消化器内科などが続いています。おおよそではありますが、「世の中で必要とされる医師数」通りに、医師の数が増えてきたことになります。
ただし、5年前の必要数と、5年後の実数との間で、内科と産婦人科は違った結果となりました。


「世の中で必要とされる医師」とは

図2と図3を比較すると、内科医は必要数よりも多くなっています。

 

5年後の実数37,685.70 -(5年前の現役数+必要数=31,534.60)= 6,151.10

 

一方で、産科医はまだまだ足りていないことが分かります。

 

5年後の実数5,606.80 - (5年前の現役数+必要数=8,789.80)= -3,183.00

 

日本は、少子高齢が今後も進行する国ですので、妊娠・出産数は今後も減少傾向が続くと予測されます。しかしその一方で、高齢出産数の増加、それに伴う難易度の高い出産数の増加が想定されているのも事実です。こういった現実を考慮すると、今後さらに「世の中で必要とされる医師」は、産婦人科医かもしれません。

 

その他にも、まだまだ必要数に達していない診療科があります。トップ5を見てみましょう。

 

  • 臨床検査科 -525.6
  • 眼科 -405.5
  • 消化器外科(胃腸外科) -283.9
  • 腎臓内科 -241.7
  • 脳神経外科 -218.8

 

これらの診療科の医師は、まだまだ売り手市場にあると言えるでしょう。今後、医師転職市場の動きとしては、これらの診療科の医師に対しては、ある程度好条件での転職が可能かもしれません。

 

【参考資料】

 

厚生労働省 平成26年(2014)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況調査の概要
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/14/dl/01_tyousa.pdf

 

医療施設調査 平成26年医療施設(静態・動態)調査 上巻 年次 2014年
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001141080

 

※統計表 J2 病床数・人口10万対病床数・1病床当たり人口,年次・病床の種類別
※統計表 J27 病院の医師数(常勤換算),性・開設者・診療科目(主たる診療科目)別

 

同上 結果の概要 4従事者の状況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/14/dl/1-4.pdf

 

同上 必要医師数実態調査 必要医師数実態調査詳細結果(全体版)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/other/dl/14.pdf

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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