転職先を決めるときに考えるべき5つのポイント
医師転職支援コンサルタント・野村龍一のアドバイス
「転職を考えたら、即行動!それも良いですが、むやみな転職を自己流で始めて失敗する例も後を絶ちません。そのため、考えおくべきポイントを幾つかお伝えしますので、参考になさってください」。
自分が転職する理由を明確化することから始める(自己分析)
一般的に「条件に恵まれている」はずの医師の皆様が転職するからには、現在の労働条件になんらかの不満があることは間違いないでしょう。明確な不満ではなくとも、漠然とした転職希望においてすら、つきつめて自己分析をしていくと、「どうしても今(将来)転職をしなければ行けない理由」がそれぞれの胸のうちにしまわれていることがほとんどです。
医師の転職理由で最も数が多い理由としては「(時には医療崩壊を起因とする)過酷な労働条件」が挙げられます。その他にも給与面や人間関係などさまざまな原因が医療現場にはあるようです。転職先を探す際の条件には、その原因となったポイントを払拭できるかを徹底的に調査する必要があるでしょう。
医師の転職理由TOP5
1.年収に対する不満(年収アップ)…昇給が臨めない、教育費や住宅ローンなどの家庭の事情で給与アップが必要、輸入車が欲しいなど趣味のための資金等。
2.時短や当直やオンコール減を望む…多忙すぎて子供や家族とじっくり向き合う時間がない、恋愛をする時間がない、趣味に費やす時間がない、当直やオンコールで心身が疲労している、妊娠や出産等。
3.勤務地の変更…子供の進学をきっかけに郊外から都会に引っ越ししたい、医局から地方に派遣されて単身赴任を強いられている、郷里で仕事がしたい、定年間近なので静かな郊外でマイペースに仕事をしたい等。
4.キャリアアップを図りたい…医師としての自己実現、手術経験をもっと積みたい、尊敬できる上司のもとで働きたい、専門医資格を取得するために症例を積み上げたい、救急医療に携わりたい、最先端設備を有した医療機関で働きたい等
5.転科・開業を考えている…年齢的に転科を図るには最後のチャンス、開業前に実地で経営を勉強したい、独立開業に理解のある医療機関で働きたい等
そうでないと、転職したはいいが、短期間の勤務の後に再度転職をしなければならなくなるといったことになりかねません。そうなると職務経歴書上の記述欄が無用に増えることとなり、確実に貴方の医師としてのキャリアが傷つくこととなるでしょう。
転職自己分析においては、まず、現状の職場に対して不満を思っている点を、とにかく文書に書き出してみると良いでしょう。すると意外に色んなことに悩んたり、不満を持ったりしていたことに気付きます。そこから条件を出して、転職する目的を明確にすることがポイントです。そうすることで、自分が医師としてどんな環境で働きたいのかがはっきりと見えてきます。
また、最近では「マインドマップ」といったような、ビジネスシーンで使われるロジカルシンキングツールを使用することで、医師としての貴方のキャリアを客観的に整理することも良い手法の1つとしてお勧めです。マインドマップの解説については様々な書籍などがでておりますので、是非、お手にとって調べてみてください。
具体的な転職条件を更に明確にする
転職理由を周辺から浮き彫りにすることで、少しずつ「望ましい条件」や「譲れない条件」が見えてくるでしょう。その逆に「妥協すべき条件」「重要かと思っていたが、よく考えたらそれほどでもない条件」なども同時に明確化されてきます。
そうなれば、今度はその条件をしっかりと優先順位付けします。不満の改善はもちろんなのですが、何よりこれから新しい職場に移ったでの医師としてのやりがいや使命感など、必ずしも数値化できない部分に関しても、自分にとって大切な事については全てを条件に加えていきましょう。
通常は給与面が必須条件としてまず出てくることも多いでしょうが、必ずしもそれだけでに縛られてはいけません。例えば医師として働きながら他の科を学んでみたい、専門科を極めるためにも最新医療を日々の職場で学んでいきたいなど、自分のドクターキャリアスタイルによって身を置くべき環境は変わってきます。
ある医師は自信が秀でている科に勤めたいと思う人もいれば、改めて自分のやっていきたい道を見つめ直し、新たな科にチャレンジしたい人もいるでしょう。そうなれば病院はそれぞれが得意な科というものがありますから、自ずと転職先候補が絞られてきます。給与が良ければどんな病院でも良いというわけにはいかないのです。
勤務地の大切さ
医師が転職の相談をされる場合に、勤務地は二の次として考えている方は思いの外多くいらっしゃいます。医師という職業に対する使命感、義務感、責任感が強い方ほど、その傾向が強いようです。「患者がいるところならばどこへでも行く」という、熱血タイプの真面目な先生にもその傾向は強いようです。
大変に素晴らしくご人徳のある先生であるのは間違い無いですが、「転職」という人生の岐路に立つ歳には、できるだけ勤務地についても真剣に考慮していただきたいと思います。
また、中には給与や労働条件をあまりに優先的に挙げることで、そういった好条件を得ることができるならばと、転職勤務先の候補範囲を無理して広げてしまうケースも見受けられます。
しかし実際に通勤に時間のかかる場所などへ転職すると、他がいくら好条件でも長続きしないケースの方が多いことを知っておきましょう。
特にあなたが常勤医師としての転職を希望するのであれば、呼び出しや急な対応を余儀なくされることもあるでしょう。その時に、勤務地から自宅が遠い場合は相当な不都合が生じます。必要以上に家族を置き去りにして病院に寝泊まりが続く勤務先を望む方はそう多くはないと思います。医師とはただでさえ勤務時間に神経を注ぎ込む職業ですから、通勤にまでエネルギーを費やすのはあまり得策ではありませんよね。
ただ大都市圏以外の地方地域にて転職活動をする場合は、どうしても勤務地候補を広げないと良い仕事が見つからないということもあります。しかしそれでも、できるだけ近い場所を選ぶことを基本的にはお勧めしますが、あなたが独身の場合や、家族の理解と了解が得られる場合には、引越しを視野にい入れながらの広い転職活動を戦略的に行なってみるのもありでしょう。
プロの情報網を利用する
もし効率的、効果的に転職情報を集めようとお考えならば、まずは医師専門の転職サイトに登録して複数の求人情報を集めましょう。しかもできれば「非公開求人情報」を多数取り扱っているような、医療現場との強いネットワークを持っている会社が望ましいでしょう。まずは5社程度をピックアップして、一生に登録をしてしまうことをお薦めします。
転職支援企業のサイト上では給与、勤務地、勤務日数、専門科、勤務体験(常勤、スポット、他)などの条件検索だけならば無登録でも利用できますし、実際にエージェントサービスに登録すれば、あなたの個別ニーズを代わりにリサーチしてもらうこともできます。その時には、病院の経営方針や財務内容も確認できるかどうかが大切です。
やり手のエージェントサービス企業の場合には、雇用元の病院内情についても相当詳しく情報収集しています。そういった現場の情報網を活用して、希望転職先の人間関係なども教えてもらうようにしましょう。離職率などの情報からも、就業環境の善し悪しは見て取れますが、実際の現場情報に勝る有益リソースはありません。就業条件が良いのにやたらと離職率が高いという職場には、必ず人間関係や経営に問題があると見て良いでしょう。
出来るだけ複数の医療機関を相対比較する
自分で探したり紹介されたりした転職候補先の医療機関は、必ずそれぞれを各条件でマトリックスにして比べてみべきです。実際に、その医療機関へ足を運んでみるのもお勧めです。友人知人を通じて、候補先医療機関の現場の雰囲気、空気というものをヒアリングするのもよいでしょう。とにかく、自分に合っているかどうかは自らの目で確かめてみることが一番といえます。
また待遇といった条件面は、人材エージェントを経由して交渉してもらうことができますので、表面的に公開されている数字には必要以上に執着し過ぎない方が得策です。ある医師は、自分が専門とする科の実績を認めてもらうことで、希望する年収を300万円以上上回った条件を引き出し、尚且つ、年齢を考慮して当直を免除してもらうなどといった条件を引き出させました。しかしそれらは結果論であり、まずは数字に現れない現場の空気を重視して転職に成功された方の1例です。
とはいえ、個別就業条件に関しては、実際に勤務先に就業した後にに交渉することはできませんから、事前に交渉を済ませておく必要があります。ただし、どんなに優秀な転職コンサルタント、転職コーディネーターを雇ったとしても、あまりにも非常識で無理な条件交渉には医療機関側が応じてくれるわけではありません。どの程度柔軟な柔軟に対応できるかは医療機関の事情によって異なりますので、勤務候補先は1つに絞ってしまうではなく、いくつか複数を同時に比べながら並行して転職活動を進めていく方が得策です。
この記事を書いた人
医師キャリア研究のプロが先生のお悩み・質問にお答えします
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