えっ、そんな事がセールスポイントに!?
■ 記事作成日 2015/8/23 ■ 最終更新日 2017/12/6
転職を意識しているドクターは皆、「自分のセールスポイントとは何だろう?」…と、考えてみるかと思います。
転職エージェントのコンサルタントにも、「ドクターの一番のセールスポイントは?」…と聞かれたり、「一緒にセールスポイントを探して、良い転職を目指しましょう!」…と、たしなめられたりするものです。
医師としてのセールスポイントを言語化しようとすると、多くのドクターは、その専門性にのみに焦点を当てようとします。保有している専門医資格は何か?どんな医療機関でどんな症例を積んで来たのか?どんな論文でどんな研究成果を出して来たのか?
もちろん、医業そのものに於ける、直球の答えは必要です。そしてそのセールスポイントは、ドクターの転職活動の幹となる至極重要な内容を占めます。
しかし、その枝葉にどんな花を咲かせ、実を成らすのか?…は、ドクター自身や転職エージェントのセンスが問われるものなのです。
自分では転職のセールスポイントにはならないと思われる様々なキャリアや思考などが、実は内定を引き出す大きなポイントになる事もしばしば。ドクター自身がクローズアップしなかった経歴が、意外な突破口として転職戦線のセールスポイントになる事があります。
ここでは、転職活動を総体的に上手く推し進めていくための、いわゆる「意外なセールスポイント」を、考えてみる事にしましょう。
語学力や留学経験
グローバル化社会の到来と言われて久しい今日この頃、語学力が転職に優位に働く事は、医師の世界でも例外ではありません。
やっぱり優位な英語力
多くのドクターは、難関の医学部への合格を勝ち取ってきた訳ですから、英語に関する基本的なスキルはお持ちでしょう。しかしながら、読み書きはある程度完璧でも、スピーキングやヒアリング能力に加え、言語を自在に操るコミュニケーションスキルがあるか?…というのは話が別です。もしもドクターが英語コミュニケーションが堪能ならば、転職活動で非常に優位なPR材料となる事は間違いありません。
都市部…特に2020年の東京オリンピックを控えた「東京」や、米国の有名旅行雑誌「Travel+Leisure」(トラベル・アンド・レジャー)の世界的権威ある調査“世界人気都市ランキング”で一位となった、観光エリア「京都」などでは、一般の外来診療に於いても、英語スキルを持つ医師が優遇されるケースが特に多いようです。
都市部でなくとも、医師が診療を英語で対応できると、実際に英語圏の患者の診療が少ないケースでも、その医療機関の大きな看板となります。「英語診療可」…という項目をWebサイトに掲げられるだけで、行政や各種サービス機関の情報誌やサイトなどに、様々な医療機関情報露出がされ、大きな宣伝効果に繋がるからです。
また、大きな医療法人の場合、ISO(International Organization Standardization=国際標準化機構)の認定を受ける為にも重要なサービス整備と見なされます。
ニーズのある言語は多様化
外国語のニーズは英語だけではありません。どんな言語でも、ドクターにそのスキルがあれば、もれなく転職のセールスポイントとなります。ロシア語でもフランス語でもベトナム語でも何でもいいのです。その中でも、特に観光客が増加しているエリアの言語、「中国語」や「韓国語」などは、都市や医療機関によって、具体的な診療対応ニーズとして顕在化している所もあります。
英語以外の言語は、そのスキルが比較的低くとも、英語程の高い能力を求められない傾向にあります。英語で言うところの、TOEICで何点以上だとか、英検何級だとかいう、細かい事は問われにくいのです。需給のバランスにより、その言語をある程度使いこなせる造詣があるだけで、一定の評価をされます。どんな言語でも、その語学力はプラスのセールスポイントと見なされるのです。
ドクターがもし、英語以外の言語に少しでも明るいならば、仮にその言語の資格試験を受けた事が無くとも、例えば…フィンラドンド語(日常会話程度)…というカッコを付ける事で、そのスキルは、一つのセールスポイントに早変わりするでしょう。
留学経験は医学関係以外のものもOK
医師の留学と言えば、医局から派遣される、研究機関や医療機関への留学のみが価値があると思われがちです。しかしながら、医学以外の留学経験も、実にプラスに働くセールスポイントとなるのです。
ドクターの皆さんは、どうしても「試験」といったものを突破してきた性質上、「資格」などで第三者評価をされていないものは、価値のないものと考えてしまう思考回路があるようです。
しかし、学生時代の語学留学や、インターンシップ留学、趣味のための料理研修留学や、アート学校への留学まで、ありとあらゆる留学が、短期であろうが長期であろうが、転職のセールスポイントになり得ます。
留学経験は、グローバルシティズンとしての資質を量る分かり易い指標でありますし、ドクター自身の為人を示す格好の材料にもなります。これからの転職シーンでは、医業のスキルだけではなく、ドクター自身の様々なキャラクタが、訴求力を持つ時代なのです。
スポーツ経験とスポーツ負傷者診療経験
ドクターは学生時代、スポーツをされていましたか?社会人になった今、何かスポーツをされていますか?この「スポーツ」という切口は、どの社会においても意外なセールスポイントになるのですが…それは医業でも例外ではなく、むしろ医業では、一般的な職業以上に重要な役割を示す事もあるのです。
どんなスポーツに青春を掛けてきたか?
ドクターは、学生時代にどんなスポーツを経験されましたか?
転職シーンでなくとも、多くの人は、共通のスポーツ経験者同士が一気に仲間意識を持ちあう姿を、目の当たりにした事があるでしょう。
スポーツとは己の能力の限界まで知力・体力を追い込み、それを超えていく事でスキルアップをし、習熟していくものです。個力に加え、チームプレイといったスキルを学ぶ場として適したものでもあります。よって、その人間がどんなスポーツをやってきたか?…という経験値は、その人の人生の背景を読むのにピッタリとお誂え向きなのです。
剣道や柔道などの武道に励み、孤高の精神を鍛え上げて来たドクター。ラグビーや野球やサッカーなどのチーム競技に励み、上下関係のコミュニケーション能力や、計画遂行能力・目的達成能力を培ったドクター。特に若手医師の場合、医師としての専門性が充分でない事から、医業以前の経験や能力…そのドクターの人的資質を重要視される傾向にあります。
そんな時、もしも面接担当者や理事長や医院長や上級医などと同じスポーツを経験していると、一気に距離が近づきます。採用側も、求める人材像をプロファイリング化する際、「ラグビーで言えば“SO”つまり司令塔になれる人材」などと考え、選考する事も多いのです。
スポーツでどんな風に体を動かしてきたか?
外科や整形外科などの場合、スポーツによる外傷や疾病による患者も非常に多い事でしょう。そんな時、ドクター自身がスポーツ経験者で、スポーツマンとしてどんな風に体を使い、動かして来たか?…という実際の経験値は、具体的な診療や、患者とのコミュニケーションに多いに役に立ちます。
それは、リハビリテーション科などでも言える事です。机上の空論の学問ではない、ドクター自身が自ら体得した知恵や経験は、患者の心の中心を捉え、前向きな治療計画に協力を得られる手立てとなるでしょう。
また、患者の外傷や疾病が、スポーツに於いてどのような影響を及ぼすのか?その影響を最小限にするためにはどうしたら良いのか?…という説明や目算にも、ドクター自身のスポーツ経験が、非常に役に立つはずです。
どんなスポーツの外傷や疾病を診て来たか?
例えば都心の病院の場合、バレリーナやフィギュアスケーターといった特定のスポーツ等をやっている患者が多く訪れる病院もあります。運動に怪我は付きものですが、その外傷や疾病を最小限のダメージで押さえてくれ、今後の競技への影響を最小限にするための視点を持っているドクターは、非常に重宝されるのです。
バレエで足関節靭帯損傷をしてしまった場合、単に歩けるようになる通常の完治と、ポワント(つま先を丸めた指先で立つ)をして、トウシューズを履けるようになる時期は、全く異なります。さらに、舞台に立って人前で充分なパフォーマンスが出来る時期には、相当の開きがあるでしょう。
患者の外傷や疾病が、どの程度で完治し、どの程度で自身のスポーツなどに耐えうる状態になるのか?…などを目算できたり、そのスポーツなどで使用する重要な体の部分を守る治療法などを提供できる医師は、それだけでスペシャリストです。
実際…「バレリーナの怪我には〇〇病院が良いよ」
「野球のピッチャーが肘を壊したら、〇〇病院がいいよ」…などという口コミ定評は、市場のあちらこちらで囁かれています。
もしもドクターが、たとえば一般的な整形外科医だとしましょう。診療してきた症例も、骨折や挫傷や挫創や靭帯損傷(捻挫)など、至極一般的なものとしましょう。その場合、一見特にセールスポイントの無い、平均的な医師だと自身を評価したり、転職エージェントや求人元に評価されてしまう事があります。
しかし、スポーツという付加価値があれば、「バレエやフィギュアスケートによる外傷の症例数が多く、都心の高級住宅地の〇〇病院に向いている。」…などという、セールスポイントに繋がります。スポーツは、自身の経験も、診療経験も、転職の付加価値として形成しやすい切口なのです。
ボランティア活動やNPOなどでの就業経験
どんなに社会が成熟しても、医師には社会的使命がつきまといます。「医術は仁術」という言葉は根深く、医師には報酬を得る手段だけではない、様々な役割が求められているのも事実です。
「医師が行うボランティアは、社会には必要な重要な仕事に、たまたま制度上の報酬がついていないだけ」…という考えの下に、できる限りのボランティアを続けている医師も多いようです。
そんな社会通念の中、医師のボランティア活動の実績は、転職活動におけるセールスポイントにもなるのです。
海外での協力隊活動
青年海外協力隊に代表される派遣型のボランティアは、医師が医業と言うスペシャリティを以って、開発途上国や紛争地域などに出向き、医業を提供するというものです。ボランティアの分かり易い活動例として有名ですから、若い時にこのような活動を経験した医師もいる事でしょう。
海外でのボランティア活動は、医業そのもののスキルアップを図ったり、専門性を培うものではありません。しかし、医師としての根本的な姿勢を鑑みる重要な手掛かりとなり、多くの医療関係者に説得力のあるセールスポイントになるでしょう。
また、派遣された地域によっては、海外の医療市場を体験してきたという付加価値になる事もあります。(医療が先進的な国や地域の医療や、中国における東洋医学など、西洋医学のメインストリームから離れた医療を体験した場合など)
震災等の被災地におけるボランティア活動
ボランティアとして被災地の医療に従事されドクターも多いと思います。特に阪神淡路大震災や、東日本大震災における医療ボランティアの活躍は、記憶に新しい所です。
100%ボランティアでも、NPO法人などに属した上での就業的ボランティアでも、被災地における医療提供の経験値は、どんな職場でも高く評価されます。
それは、医師としての資質に適していると見なされる事だけでなく、被災地医療やパニック状態での救急医療を経験し、相応のスキルを持っているドクターとして重要視され、重宝されるからです。
いつ何時、震災が訪れるかは分かりません。有事はどの地域にも潜んでいますし、医療機関には「有事対応マニュアル」や「危機管理計画」の作成が求められています。そのような背景からも、震災ボランティアを経験した医師は、そのキャリアをスキルとして見なされ、セールスポイントとして活用する事ができるのです。
地域における様々なボランティア活動
ボランティアと言えば、海外協力隊や被災地医療などの、大きな枠組みでの活動を考えがちですが、それだけではありません。日常的に継続的にボランティア活動をしている医師も、実は沢山いるのです。
心肺蘇生術などの出前講習会、乳幼児や小児医療の啓蒙活動、小中学校などでの課外授業、ホームレス向けの健康相談…etc.
医師には、社会のために出来る事が沢山あります。そして、自分の出来る範囲の活動を、地道に真摯に続けている医師も一定数存在しています。
地域のボランティア活動は、医師本人の問題意識を象徴していますから、ドクターのドクターとしてのポリシーを伝える良い材料となるでしょう。
また、医療法人においてもCSR(corporate social responsibility = 法人の社会的責任)が問われる今、医師の個人的な活動を、医療法人が応援する形でCSRを推進したり、その結果を医療法人の広報活動に役立てる事もできるでしょう。
医師のボランティア活動は、医師個人としてのポリシーを体現する鑑となるだけではなく、医師が働く医療法人における様々な活動にも役立つ情報です。もしもドクターがボランティアに従事された経験をお持ちなら、転職の医業スキルとは無関係だとは思わずに、転職エージェントや求人元へのセールスポイントにしてゆきましょう。
医業以外の職業経験
医師は一般と比べて転職回数が非常に多い職業です。しかしそれは、医業から医業への転職で、全く異なる職務を経験した医師は非常に稀少性の高い存在であるのが特徴です。
現在の多角的な価値観が必要とされる社会に於いて、「学校と病院しか知らず、了見が狭い」…と、揶揄される事もある医師。特に大病院などの経営に従事しようとしたり、特殊なターゲットに向けたクリニックなどを運営しようとした場合、他の職業を経験した医師が、非常に重宝される事もあるのです。
講演や執筆の経験
医師以外の職業とは言っても、医業をフックにした職業経験として目立つのが、講演活動や執筆活動です。
医師という観点で社会を読み、広く大衆に呼びかける力を持っている医師は、フラッグシップ性という意味や、医療機関の広告塔という意味などから、転職活動におけるセールスポイントを得やすいと言えるでしょう。
もしもローカルの新聞社やテレビ局などの医療顧問になっていたり、自身が関連してメディア露出などがある場合は、よりそのセールス力が強固になります。有名なメディアの名前を冠するだけで、転職活動の後光効果は完璧さを持ちます。
完全なキャリアチェンジによる医師
ドクターの中には、高校卒業後すぐに医学部に入った訳ではなく、別の学部の大学を卒業し、一旦社会に出て就職をした後に、「どうしても医師になりたい」…と、大学を受け直し、医学部で学び直して医師になった…という人材が、一定数います。
ドクターの医局にも、不自然に年齢の高い研修医が、一人くらい混ざっている事があったのではないでしょうか?
医業としては「遠回りした」…と見られるキャリアも、考え様によっては大きな武器になります。医師として一人前になれた、専門医を取得できるほどのキャリアを積んだ後は、医業しか知らない医師よりも、稀少な人材として注目を集める事もあるのです。
例えば銀行など金融機関に勤めていたり、公認会計士や税理士などのライセンシーとしてのキャリアがある方は、大病院の理事職や病院長、クリニックの医院長などの経営スキルに直結させる事ができるでしょう。これは、医業しかしらない医師が、非常に不得手な会計分野です。
例えば広告やマスコミ業界に勤めていた人ならば、客商売として医業を考えた場合の、広報広告活動などに力を発揮する事ができるでしょう。
完全なキャリアチェンジにより医師になった人は、以前のキャリアをあまりPRしたがらない傾向にあります。それは、医学部や研修医時代から、特異な目で周囲に見られ、「遠回り」という表現をされてきた事が、原因かもしれません。
しかし、医師としては遠回りをしてきたかもしれませんが、ビジネスパーソンとしては全くの逆で、最短で様々なスペシャリティを身に着けた、複数分野でのスペシャリストとして存在できます。
医業以外の職業経験を持つ人材が少ない医師の世界に於いて、そのキャリアはウィークポイントではなく、セールスポイントになるのです。
趣味や特技といった切口
一見すると、医業とは全く関係が無いと思われる趣味や特技の追求も、転職活動のセールスポイントになる事があります。それは、車やワインなど、多くの医師が傾倒しがちな消費活動と関連するものや、ピアノや茶道や絵画といった文化活動、ゴルフやテニスや乗馬など、コミュニケーションツールとしても用いられる社交性のあるスポーツなどに言えるようです。
共通の趣味による切口
医業に於いて成功し、医療法人の理事や院長に就任するような一定の成功者は、それなりの趣味の世界を持っている事が多いものです。彼らは、自分が付き合う相手に、相応の文化性を求めます。
例えばゴルフを社交だと思っているドクターは、ゴルフをするドクターを認め、ゴルフ社交が出来るラウンドスキルがある人材を、高スキルのある人間だと認める傾向にあります。そのようなタイプが医療法人の上層にいた場合、仕事の一環としてゴルフ社交に帯同できるドクターは、それだけでセールスポイントになります。
医業には全く関わりそうも無い、ワインや車といった趣味においても、もしも面接担当者や上層部がその趣味を持っていた場合、医業の話が5分、趣味の話が60分という面接もあり得るでしょう。共通の趣味と言うものは、瞬時に共感性を生み、図らずともセールスポイント化する事があるのです。
消費性や文化性や社交性がキーワードとなる、医師にありがちな趣味や特技を持つドクターは、履歴書の趣味・特技の欄に、やや詳しくその項目を書いてみると良いでしょう。
転職では何が吉と出るかは分からない!
医師の転職に於けるセールスポイントは、医業だけじゃない!…と言うと、多くのドクターは訝しげな顔をされます。
しかし、ドクターの為人やキャリアや趣味などを詳しくヒアリングして行くと、ドクターにしかない、キラリと光る持ち味が見えてくる事があります。
実際、医業だけでセールスポイントを作ろうとしても、それほどの特異性を見出せないドクターが大多数です。医療スキルは他のライバル達ともどんぐりの背比べですから、年齢や実績に応じた、一般的なPRしかできません。
そんな時、「医業スキル」×「〇〇」という掛け合わせを行う事で、非常に力強い訴求力を得る事も可能なのです。それはつまり、ドクターの転職活動に於いて、ドクターのキャリアやスキルを隅から隅まで洗い出せる環境=転職エージェントにおけるコンサルタントとのコミュニケーションの重要性が問われるものです。
私、野村龍一が、医師転職コンサルタントの立場から、口を酸っぱくして言っている事があります。それは…良い転職は、転職エージェント選択時に決まっている…という事実です。
特に、自身の医療スキルを差別化をしにくいドクターは、転職エージェントの専門的な力によって、セールスポイントを形成し、戦略を立てる事が、通常以上に必要です。ドクターがより良い転職を実現できるよう、当研究所がお勧めする優良なエージェントへのコンタクトを、心からお勧めします。
この記事を書いた人
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