求人数の少なさがネックになるか?
よく言われることですが、眼科医師の求人情報は他の診療科目と相対するとかなり控えめな数字になっているケースが多いです。手頃な医師紹介会社や医師転職サイトを使って、眼科医の求人を絞り込んで調査してみるとすぐそのボリュームのなさに気づくでしょう。
それには様々な理由がありそうですが、点数が下がって眼科クリニックを開業する方が、一昔前のブームと比べて落ち着いてしまったことなど、コンタクトショップの減少傾向がありそうです。勤務眼科医が辞めなければ、当然、求人募集の増加には結びつきません。
専門医取得は有効だが更新条件を忘れない
眼科医師の転職市場において、専門医の取得はそれだけで有利になることは間違いありません。ただし、更新条件があることを忘れないで下さい。1度専門医を取得してしまえばその後はずっと安心ということではありません。
白内障、緑内障等の手術症例を多く手がけた方は当然有利ですが、市場動向をあまり分かっていない若手医師のなかで、結構な数の人数がいまだに眼科を専門とする傾向は続いています。
就業先が「経験重視」なのか「(体力気力のある)若い人材重視なのか」という本音を早い段階で見極めてから、面談に臨みたいものです。
コンタクトショップの減少傾向について触れましたが、求人は更に少なめですので注意をして下さい。ご希望の方はマメな求人サイトチェックや、医師転職コンサルを雇いこんで定時ウォッチングさせるくらいの意気込みで臨むべきでしょう。
一時期膨らんだレーシック市場はどうなる?
大手美容外科の戦略的なレーシック専門眼科の出院攻勢によって、興隆を極めたレーシック市場。今後の状況としては厳しいものがあるでしょう。もともと技術がいらない(ほぼ全てを医療機器が行う)分野な上に、レーシック被害者(レーシック難民)という言葉が一人歩きを初めて社会問題一歩手前まできているような状況ですので、一時のアルバイトとして割り切って求人を眺めるに越したことはありません。
おまけに、レーシック分野は事業としての採算性が取れないケースが現状ではほとんどです。
今後は高齢者需要
眼科はどちらかというと患者のターゲット層が広い診療科目です。老若男女問わず患者として応対することが求められます。しかし今後はコンタクトなどの若年層ターゲットよりも、白内障、網膜硝子体、緑内障を中心とした高齢患者をターゲットとして、各医療機関は集患戦略展開を図ってくることが大いに予想されます。白内障患者は入退院も激しく、その数もかなり多いのはご承知のとおりです。
そのため、就業希望医師についても、高齢者に受けの良い「やわらかい人当たり」「女性」であったり、白内障と緑内障手術経験および今後のヤル気を相当重要視した上で、採用活動にあたってくることが考えらます。
地域格差をとらえよ
どの診療科目にも言えますが、診療の性質と医療機関の療圏および経営戦略、そして患者の人口動態によって、エリア毎の医師数には差があります。
眼科医の場合は下記のようなエリア格差が発生しており、当然、人口当たりの眼科医師数が少ない地域ほど、好条件での求人も多く、スムーズな転職に繋がりやすい傾向があります(ただし、そのエリアでの居住とあなたが希望するライフスタイルが一致するかどうかは全くの別問題です)。
日本眼科学会のデータによると、眼科医は都市集中型の診療科目ですが、埼玉県や千葉県のような人口が多く首都に近いエリアでも深刻な眼科医不足となっています。
人口10万人当たりの眼科医数のトップが同学会のウェブサイトで公開されていますが、トップは東京の17.99人、最下位は埼玉の6.16人です(地域格差2.92倍)。この地域格差は、産科・産婦人科の地域格差2.26倍や、小児科の地域格差2.49倍を大きく上回っています。
眼科医は大変地域格差が大きい診療科目であるといえます。当然、転職求人市場にもこの数字は大きく関わってきています。
都道府県別人口10万人当たりの眼科医数ランキング
1 東京 17.99 | 2 大阪 14.53 | 3 京都 13.86 |
4 岡山 12.75 | 5 鳥取 12.44 | 6 兵庫 12.37 |
7 徳島 12.12 | 8 高知 11.77 | 9 福岡 11.76 |
10 奈良 11.49 | 11 香川 11.47 | 12 愛知 11.34 |
13 広島 10.91 | 14 石川 10.85 | 15 愛媛 10.79 |
16 滋賀 10.76 | 17 長崎 10.32 | 18 和歌山 10.14 |
19 富山 10.11 | 20 山口 9.92 | 21 宮崎 9.88 |
22 福井 9.55 | 23 熊本 9.54 | 24 神奈川 9.07 |
25 沖縄 9.04 | 26 島根 8.89 | 27 宮城 8.81 |
28 三重 8.81 | 29 大分 8.79 | 30 山形 8.78 |
31 鹿児島 8.73 | 32 山梨 8.68 | 33 佐賀 8.49 |
34 群馬 8.41 | 35 新潟 8.25 | 36 北海道 8.22 |
37 長野 8.17 | 38 岐阜 8.05 | 39 岩手 7.99 |
40 静岡 7.96 | 41 栃木 7.86 | 42 福島 7.76 |
43 秋田 7.54 | 44 千葉 7.29 | 45 茨城 6.99 |
46 青森 6.71 | 47 埼玉 6.16 | 全国平均 10.55 |
開業前の修行
もともと開業率が高い眼科医ですが(医師全体では63.9%が勤務医に対し、眼科医は38.7%のみが勤務医)、コンタクト改定、レーシック市場の混乱などで今後は今までのように楽に開業することが難しい可能性があります。
そもそも、眼科医の開業には(特に手術をするばあい)大きな設備投資が伴うことも多く、リスク要素が他の診療科目と異なってきます。
現在は転職希望だが将来的には開業も視野に入れたいと考えている先生は、就業希望先の医療機関がどのように市場分析を行い、今後どういった患者をターゲットに戦略を練っているのかをじっくりと盗み取ることをおすすめします。
そのためにも、冷静にいまの眼疾患治療(市場)の現状を見据えている就業先を、冷静に調査してから転職することが大事になりそうです。アルバイト希望者以外は、「楽だから」の理由で一昔前の考えのままの眼科へ安易に就業などしないことです。
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