少子高齢化が進むニッポン、もっとも深刻な土地は?
■ 記事作成日 2016/5/17 ■ 最終更新日 2017/12/6
医師の仕事は、患者さんがいないと始まりません。つまり、人口が多いところには多くの病院ができますし、医師の需要も高くなります。
以前も当コラムの中で、「どの地域への転職がオススメか」、さらに「医師が多い・少ない都道府県はどこか」という市場分析の情報をお伝えしていますが、今回は、各都道府県の人口増加率と高齢化率などから、日本の医師不足に関する状況を考えてみたいと思います。
日本の中で、人口増加率が多いのはどこか
総務省が公開している、平成25年10月現在の「人口推計」によると、次のようなことが分かっています。
- 総人口は21万7千人の減少、日本人人口は減少幅が拡大
- 生産年齢人口が32年ぶりに8000万人を下回る
- 4人に1人が65歳以上人口となる
人口増減率を都道府県別にみると、
- 増加は8都県、もっとも高いのは東京都(0.53%)、次いで沖縄県(0.44%)、愛知県(0.21%)
- 減少は39都道府県となり、もっとも低いのは秋田県(-1.18%)、次いで青森県(-1.04%)、山形県(-0.90%)
となっています。
これに、もう少し新しい平成26年10月1日現在の人口増減率を含め、過去3年間の都道府県ごとの状況をみると、以下のようになります。
2011年の福島県の人口減少率が突出して低くなっている原因は、東日本大震災の影響であると考えられます。しかしそれだけではなく、東北地方の6県のうち宮城県を除いた5県では、年を追うごとに人口が減少していく傾向がみられます。
比較的増加傾向が続いているのは関東地方ですが、それでも茨城県、栃木県、群馬県といった北関東地方では、人口減少傾向が続いています。
中国地方、四国地方、福岡県を除く九州地方では、ここ数年ずっと人口減少傾向が続いています。特に和歌山県や高知県ではその傾向が高いようです。
都道府県ごとの高齢化率を比較すると
では、高齢化が進む日本の中で、都道府県ごとにはどのような違いがあるのかをみてみましょう。平成26年の「都道府県,年齢階級別人口」というデータから、各都道府県ごとの高齢化率をグラフに表してみました。
高齢化率がもっとも高い都道府県は秋田県(32.7%)で、これに高知県(32.1%)、島根県(31.7%)が続きます。一方で高齢化率がもっとも低い都道府県は沖縄県(19.0%)で、これに東京都(22.5%)が続きます。先ほどの「都道府県別人口増加率の推移」と比較すると、次のようなことが推測できます。
- 高齢化率が低い都道府県は、人口増加率が高い傾向にある
- 逆に、高齢化率が高い都道府県は、人口増加率が低い傾向が続いている
特に秋田県は、高齢化率は全国で一番高く、人口増加率も一番低い県となっています。逆に東京都は、高齢化率は2位ですが、人口増加率は一番高くなっています。
人口増加率と“人口10万対医師数”は反比例する?偏在する医師の数
以前、当コラムでは「医師が多い・少ない都道府県はどこか」という情報をお伝えしましたが、人口増加率と人口10万対医師数は、反比例することがあります。色々なデータを比較すると「ここ数年、人口そのものが減少傾向にあるため、相対的に“人口10万対医師数”が多くみえる」場合がある、ということです。
例えば高知県はここ数年、医師数は大きく変わっていません。しかし人口そのものが減少を続けていることから、相対的に(県外からみると)医師数が多いようにみえてしまいます。
また、“人口10万対医師数”が多いところでも、実際の医師の数としては偏在している地域もあります。例えば東京都は、人口そのものが増えており、“人口10万対医師数”も全国3位です。
東京都には大学病院などの大病院が集中し、人口だけではなく、病床数も医師数も、とても多い都道府県です。しかし同じ東京の中でも、病院は中心部に集中しており、23区外の地域や、東京都東部・西部の地域では、やはり深刻な医師不足が続いているという現実もあるようです。
都道府県別別にみた“必要求人医師数”
では次に、都道府県別での“必要医師数倍率”と“必要求人医師数倍率”の差=ギャップをみてみましょう。
このデータからは、次のようなことが推測できます。
- 必要医師数倍率が高いところは、医師不足が深刻化している
- 必要医師数求人倍率が高いところは、医師不足への対策として、より多くの医師を集めようという動きがある
- 必要医師数倍率と、必要求人医師数倍率の差が大きい都道府県は、必要であることが分かっていても、医師の増加を図ることが難しい何かがある
中でも3.については、島根県、山梨県、香川県などで、大きな差があることが分かります。その理由については、都道府県ごとの事情がありますので一概にはいえないかと思いますが、高齢化、人口の減少、都道府県内における病床数の調整、医師の就職先となる医療機関側のスペックの問題などが、挙げられるのではないでしょうか。
全国的にみれば、医師不足が解消に向かっている都道府県はありません。どの地域でも、“現役医師数よりも多くの医師”を必要とし、医師確保に対する対策を立てています。また、同じ都道府県内でも、医師の偏在化が顕著となっている地域もあります。
医師はまだまだ、売り手市場であることが分かりますね。
【参考資料】
総務省 平成25年10月現在 人口推計
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2013np/pdf/2013np.pdf
厚生労働省 第1回 今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会
医師を取り巻く現状等について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2011/01/18/1300372_2.pdf
日本総研ワーキングペーパー 日本医師会 病院における必要医師数調査結果
http://www.jmari.med.or.jp/download/WP346.pdf
総務省統計局 日本の統計2016 都道府県別人口と人口増減率
http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
同上 都道府県,年齢階級別人口
http://www.stat.go.jp/data/nihon/02.htm
東京都 東京の医療問題
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/shisaku/kondankai/iryo_kaigo.files/siryo1.pdf
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