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■ 記事作成日 2015/3/13 ■ 最終更新日 2017/12/6

 

厚生労働省が公表している「必要医師数実態調査」の調査結果報告書によると、  (現役医師数 + 必要医師数(正規・非正規含む)÷ 現役医師数 という計算式で倍率が算出されていますが、この中で最も倍率が高いのは、リハビリテーション医です。

 

これは以前、こちらのコラムでもお伝えしていますが、その倍率は「1.29」。

 

次いで倍率が高いのは、今回お伝えする救急医で「1.28」です。数字上は第2位になりますが、その差はわずか0.01。第3位の産科(1.20)、第4位の呼吸器内科・腎臓内科・神経内科・心療内科・病理診断科(いずれも1.20)との差と比較すると、非常に僅差であることが分かります。

 

統計データ上でみると、2012年現在での救急科の現役医師は2,600人あまり。うち非常勤医師は430人程度ですので、およそ6人に1人は非常勤医師であることが分かります。この数値をどう捉えるかは2分すると思います。

 

 ・非常勤での求人も、探せばみつかる
 ・常勤として「日勤も当直もできます」と自分を売り込みやすい

 

いずれにしても、救急医は経験がものをいう世界です。救急専門医になれば就職先は探しやすくなりますが、専門医と認定されるまでは、どれだけの症例を担当したか、という実績が必要になります。

 

また更新(現在は5年更新)までの間には、関係各学会への出席、学会発表の実績、司会・座長・指定討論者になるなどの実績が求められます。


救急医になるための条件

では、救急専門医として認定されるまでに必要な条件をみてみましょう。

 

救急専門医として認定されるまでには、3つの段階をクリアする必要があります。まず第1次の審査は、救急勤務歴の審査です。クリアの条件としては、申請時において

 

・継続的に3年以上日本救急医学会の会員であること
・5年以上の医師としての臨床経験があること
・少なくとも1年以上の救急専従歴を含む、救急勤務歴3年以上が必要 

 

です。

 

ただし、救急専従歴が1年以上あれば、救急兼任歴は2年でOKだが、その場合は以下の計算式で24カ月以上となることが必要となります。

 

救急兼務歴の月数 × 週あたりの関与回数(2回まで) ÷ 6

 

つまり、例えば週1回の救急兼任を36カ月行っても

 

36カ月 × 1回 ÷ 6 = 6カ月

 

となるため、加算できるのは6カ月のみです。

 

他にも、救急専従歴に対する加点制度も定められており、救急科専門医指定施設での救急専従歴が長い場合が、もっとも点数が高くなるようです。

 

第2次審査は、診療実績です。これは決められた症例をどれだけ経験したか、が問われます。

 

【必修の手技】
心肺蘇生、気管挿管、除細動、胸腔ドレナージ、創傷処置、骨折整復・牽引・固定、中心静脈カテーテル挿入、動脈穿刺と血液ガス分析、観血的動脈圧モニタ、腰椎穿刺、呼吸管理、超音波検査、気管支鏡検査

 

【経験が望ましい手技】
心嚢穿刺・心嚢開窓術、肺動脈カテーテル挿入、IABP、イレウス管挿入、腹腔穿刺・洗浄、胃洗浄、消化管内視鏡検査、ゼングスターケンチューブ挿入、減張切開、血液浄化、全身麻酔、頭蓋内圧モニタ、出血等に対するIVR。

 

術者として行った症例をのみ申請でき、【必修の手技】については各症例5例ずつ、計65例の記載が必要。【経験が望ましい手技】については、各疾病分類ごとの記入数を3例までとし、合計で20例以上が必要

 

この他にも、必要な知識や必要な症例などが、事細かく決められていますので、経験年数だけ積んでいても、必要条件を満たすには至らない、という状況にも成り得ます。

都道府県別、救急医の活躍が期待される地域は

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救急専門医として認定されるために必要な経験値(経験すべき手技・知識・症例)を統合的に考えると、おおよそですが、救急搬送時に中等症から重症、あるいは来院時心肺停止(CPAOA、一昔前の“DOA”の状態)や死亡などの状態である患者さんへの対応が経験できるかどうか、であると思われます。

 

この観点から考えると、より多くの症例が経験できそうな地域はどこなのかを調べてみました。

 

全体的な救急搬人数でみると、やはり東京、大阪、神奈川、愛知、兵庫、埼玉、千葉、福岡の順に高くなっており、大都市およびその周辺地域では、救急搬送される患者数が多いことが分かります。

 

ただし、1つ注目したいのは、例えば大阪府は全体的には2位ですが、比較的「軽症」患者が多く、救急専門医が診察する対象とはならない症例も多そうです。

 

また、例えば福岡県は全体的には8位ですが、中等症の比率が高く、救急専門医が診察する対象となりそうな患者比率が高い可能性はあります。

 

一方、やはり東京やその周辺地域では、圧倒的に中等症~重症・死亡の患者数が多いことが分かりますので、救急専門医を目指すなら、やはりこの地域で数年間、救急専任の医師として勤務するのが近道かもしれません。

 

都道府県ごとの求人数をみても、東京(453.2)、大阪(309.5)、神奈川(181.8)、福岡(147.9)、千葉(130.7)となっていますので、やはりこの地域では“より必要とされる医師”といえるでしょう。

 

いかがでしたか。今回は救急科医師に注目してみました。認定までの道のりを考えると、専門医になるのは大変かもしれませんが、世の中にはとても必要とされる医師であることは間違いありません。

 

やりがいは非常に大きく、社会貢献度も高い職種といえます。今後、救急専門医師が増えることを望んでいます。

 

【参考資料】

 

厚生労働省 必要医師数実態調査 診療科別現員、必要医師数
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/other/dl/07.pdf

 

同上 ◎診療科別現員医師数(正規雇用+短時間正規雇用+非常勤)(二次医療圏別)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/other/dl/08.pdf

 

日本救急医学会 日本救急医学会専門医認定制度
http://www.jaam.jp/html/senmoni/senmoni_2013_1.pdf

 

同上 救急科専門医新規認定申請 審査方法
http://www.jaam.jp/html/senmoni/senmoni_2011_2.pdf

 

同上 診療実績表
http://www.jaam.jp/html/senmoni/senmoni_2013_3.pdf

 

総務省 消防庁 平成26年版 救急救助の現況 Ⅰ 救急編
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/kyukyukyujo_genkyo/h26/01_kyukyu.pdf

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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