医師不足は今後も続くが転職では女性が有利
男性の産婦人科医先生には少々申し訳ないのですが、診療科目の性質上、産婦人科医師の転職市場では女性医師の方が全てにおいて有利に働きます。
もしあなたが女性医師ならば、ご自身のジェンダーを十分活用した転職活動になるでしょうし、男性医師ならば、好条件の求人情報が取り合いになった場合においての、多少の不利を最初から承知で転職活動に臨むべきでしょう。
とはいえ、超売り手市場の産婦人科医師の求人状況は続いていますので、かなり高待遇の求人情報が見つかります。ただしその場合もライバルは同じ産婦人科医ですので心を引き締めて転職準備にかかりましょう。
増加する医師総数と減少する産婦人科医師
厚生労働省の調査によれば、医師の総数はこの10年程で増加傾向にあるものの、産婦人科医師の数は減少傾向にあります。
平成20年からは若干持ち直して入るものの、全体の医師総数の伸び率に比べればその増加度は「微増」と言わざるをえません。この傾向からみても、まだまだ今後も産婦人科医師の不足=転職求人市場における買い手市場は続くと言えます。
増加する医師総数(厚労省による施設別調査)
平成24年(2012年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況より
減少する産婦人科医師数
平均年齢が高い産婦人科医師
面白いデータが有ります。厚生労働省発表の平成24年(2012年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況によると、医師総数(病院、診療所勤務)では48.9歳なのに対し、産婦人科が60.4歳、産科が54.9歳、婦人科が61.9歳と発表されています。
これが意味するところは、やや経験不足だったとしても、転職を希望とする若手医師を受け売れる十分なニーズが市場にあると同時に、遠からず引退する高齢の産婦人科医師が相当数市場には存在しているということです。
医師紹介会社の求人情報を覗いてみても、産婦人科医師まわりの求人数はほんと多いですね。給与はもちろん高止まり傾向です。
産婦人科 | 産科 | 婦人科 | |
---|---|---|---|
平均年齢 | 60.4歳 | 54.9歳 | 61.9歳 |
※医師総数の平均年齢は48.9歳
求職医師側の条件と訴訟リスクへの考え方
産婦人科は医師不足が顕著な超売り手市場の診療科目なのですから、求職する医師の側から就労条件を細かく提示してみる価値は多いにあります。求人募集も、ご自身が経験を積みたい患者層、常勤ならば勤務のバックアップ体制や30時間を超えるような長時間労働の有無とその処遇(残業代)など、かなり細かくリサーチした上で、不明な点は面接上でズバズバと医療機関に聞いてしまってもよいです(買い手転職市場の診療科目ではこうはいきません。
場合によっては大きな墓穴を掘る可能性もあります)。女性医師ならば更にその傾向は顕著で、女性にとって働きやすい職場風土かどうかを直接面と向かって聞いてしまうべきでしょう。
不妊治療に関する経験と技術がある産婦人科医は転職市場においてとても有力です。具体的に求められる技術として、羊水検査、染色体異常に関する診断・カウンセリング、エコーによる胎児顔貌の捕捉、体重予測などがあります。吸引アウスは言うまでもありません。
訴訟リスクが高いと言われる産婦人科(産科)ですが、同じく常に訴訟リスクにさらされている外科や内科と比較しても、その訴訟リスクは高く留まります。とはいえ、医療機関としてイザ訴訟沙汰になった場合に、どのように現場の産婦人科医師をケアしてくれるのかはとても重要です。
事前に転職希望先の医療機関が、訴訟リスクについてどのように考えているのか、過去の訴訟時にとった実際の対応、特に、医師に責任を押し付けて組織的コンプライアンス責務を回避したりしていないかどうかを中心にリサーチするべきでしょう。
面接において、求人側の医療機関から口火を切って訴訟リスクの話に及ぶことも珍しくありません。あなたなりのリスクへの考え方を事前にまとめておき、方向性が一致する医療機関を就業先に選ぶことをおすすめいたします。
産婦人科 |
16.8件 | 161件 |
---|---|---|
整形外科・形成外科 |
6.6件 | 139件 |
外科 |
5.4件 | 188件 |
内科 |
2.7件 | 256件 |
精神科 |
2.5件 | 32件 |
小児科 | 2.2件 | 33件 |
※左列…医師1000人当たりの既済件数(平成18年)
※右列…診療科目別既済件数(平成18年)
婦人科外来を希望する場合
分娩に携わらない分訴訟リスクへの対策は相対的に楽であるといえますが、ご自身の経験と対応可能な婦人科手術範囲に関しては、別途に訴訟リスクについて考えておく必要があります。加えて、腫瘍、子宮筋腫、乳がん、不妊治療など、ご自身が専門といえる分野を面接上ではっきりと示すことはやはり大切です。
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