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消化器内科医の現状(厚労省医師数調査から)

消化器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

■ 記事作成日 2016/10/21 ■ 最終更新日 2017/12/6

 

消化器内科医師数は全診療科中で7番目に多い

 

厚生労働省の調査によると2014年の胃腸内科医を含む消化器内科医の人数は13,805人でした。国内の医師総数は296,845人ですので消化器内科医は4.7%を占めます。

 

最も医師数が多い診療科は一般内科医の61,317人(20.7%)で、消化器内科医は40科中7位でした。一般内科と消化器内科の間の順位は、2位整形外科、3位小児科、4位外科、5位臨床研修、6位精神科となっています。

 

消化器内科医の人数は11年間で81%増えている

 

消化器内科医の人数を2004年と比較してみましょう。当時は消化器内科と消化器外科を合せた「消化器科」として集計していたのですが、それでも2004年の消化器科医は10,352人でした。2014年の消化器内科医13,805人と消化器外科医4,934人を足すと18,739人ですので、「消化器内科・外科医」はこの11年間で81%も増えています。

 

医師総数も2004年の256,668人から2014年の296,845人へと増加していますが、増加率は15.7%に過ぎません。このことからも「消化器内科・外科医」の増え方は突出していて、「消化器内科・外科医」の7割以上を占める消化器内科医は「爆発的な増え方をしている」という見方もできるでしょう。

 

一般内科・外科からの標榜変えが要因か?

 

医師総数の増加率より消化器内科・外科医(特に消化器内科医)数の増加率が高いということは、標榜科を消化器内科に変える医師が増えたということになります。「転科元」は一般内科と一般外科のようです。一般内科医数は2004年から2014年にかけて16.8%減、一般外科医は33.8%減となっています。

 

医療情報サイトを運営するメドピア株式会社が、医師約3000人に「標榜科目を変更したことがありますか」と尋ねたところ、変えた経験がある医師は1割強に及びました(2013年公表)。

 

変更は「外科から内科へ」が目立ち、その理由は「手術に耐えられなくなった」「老健勤務となり内科医になった」「時代の流れに対応すべく変えた」などが挙がりました。

 

消化器内科医の急増はこうした「内科志向」傾向も背景にあるかもしれません。

 

若い医師が消化器内科を目指す?

 

厚生労働省の医師数のデータからは、若い医師が消化器内科医を目指す傾向にあることも読み取れます。

 

2014年末の消化器内科医の平均年齢は45.9歳で、40科中21位、ほぼ中間でした。興味深いのは、その11年前の2004年の消化器科医の平均年齢も45.3歳と、ほぼ変わらないことです。

 

全医師の平均年齢は47.8歳(2004年)から49.3歳(2014年)へと1.5歳も上がっています。消化器内科医が0.6歳しか上昇していないということは、若い医者が入ってきていることを表しています。

 

ちなみに一般内科医の平均年齢は、2004年の52.4歳から2014年の57.6歳へと5.2歳も上昇していて、医師の高齢化が進んでいる診療科といえます。

 

消化器内科医の開業は一般内科医よりは難しく外科系医師よりは容易?

 

厚労省のデータからは「消化器内科医の多くは病院にいる」ということも分かりました。2014年の消化器内科医13,805人のうち病院医は76.0%を占め、診療所医は24.0%に過ぎません。

 

一般内科医が病院医35%、診療所医64.8%であることと比較すると、「消化器内科医は一般内科医よりも独立開業しにくい」ということが類推できます。

 

また、診療所医の割合が最も高い診療科は美容外科の97.4%で、2位は心療内科の68.3%でした。データ上これらの診療科は「独立開業しやすい」といえ、これは一般市民の肌感覚とも合致する結果ではないでしょうか。

 

逆に病院医の割合が高い診療科は、高い順から臨床研修医(99.9%)、臨床検査科(99.6%)、救急科(99.5%)、血液内科(99.3%)、呼吸器外科(98.9%)、病理診断科(98.4%)、心臓血管外科(97.1%)、小児外科(96.5%)、感染症内科(95.3%)、消化器外科(94.5%)となっています。

 

消化器内科医の開業は、外科系医師の開業よりは容易であるといえそうです。


★消化器内科医の求人票ひろい読み

消化器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

2000万円の大台も散見される

 

「医師紹介会社研究所」の転職サイトランキングで上位に入っている「MCドクターズネット」から、消化器内科医の求人票を見てみましょう。

 

年収は、東京都足立区の病院は1800万~2200万円、東京都あきる野市の病院は1200万~2000万円、札幌市のクリニックが1500万円、北海道帯広市の病院が2000万円、北九州市の病院が1300万~1700万円となっています。

 

一般的に医師の年収は、都会は低く、地方に行くほど高くなる傾向がありますが、足立区の病院を例外とすれば、消化器内科医もその傾向を示しているといえそうです。

 

ではなぜ、足立区の病院は、千代田区の病院よりも高くなっているのでしょうか。2つの求人票の詳細をのぞいてみましょう。

 

足立区の病院(1800万~2200万円)の求人の特徴

 

新規オープンによる採用となっています。日勤時間は9時から17時で、当直は19時から翌9時までです。当直回数は記載されていませんでした。週5日勤務で外来をメーンにしていますが、希望すれば病棟管理や内視鏡室での勤務も可能です。

 

あきる野市の病院(1200万~2000万円)の求人の特徴

 

「内科診療可能なら専門問わず」のPRが目を引きます。さらに「外来多め」「病棟多め」「在宅メイン」といった医師の要望に柔軟に対応することも求人票に書かれています。この病院は療養病棟を持ち看護基準は20:1ですので、慢性期、または高齢者が多い病院と類推できます。

 

9時から17時までの日勤のみで、当直はありません。ただ、休みが日曜と祝日しかない点が気になります。


消化器内科の学会の幹部の「目」

消化器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

消化器内科分野の学会は、国内に20以上あります。その中で2つの学会に焦点を当て、学会幹部を務める医師がどのような研究分野に興味を示しているか紹介します。

 

新しいESD支援デバイスの開発

 

日本消化器内視鏡学会理事長は、東京慈恵会医科大学先進内視鏡治療研究講座教授、田尻久雄氏です(2016年10月現在)。この講座の研究テーマのひとつに「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)支援デバイスの開発」があります。

 

ESDは、リンパ節転移がない早期の食道がん、胃がん、大腸がんへの治療が医療保険の適応となっています。内視鏡を挿入してがんを切除するのですが、医療用食塩水の注入やがんの「切り取り」「はぎ取り」といった、細かい作業が必要になります。これは医師の技量に加えて、医療機器の開発が治療成績に大きく関与します。

 

株式会社ホギメディカルは、院内感染防止を目的とした医療材料メーカーとしてスタートして、現在は内視鏡支援デバイス事業にも進出しています。

 

内視鏡メーカーといえば、オリンパスや富士フイルムが知られていますが、ホギメディカルは内視鏡本体ではなく、内視鏡の周辺機器の開発で注目を集めています。

 

従来のESD用の内視鏡は、処置をするために内視鏡を動かすと、同時にカメラも動いてしまうため、医師は術野を「一瞬見失う」ことになります。また、処置する部位の固定も難しかったのです。

 

ホギメディカルが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと開発した新しいESD支援デバイスはこうした問題を解決した商品です。カメラと処置をする部品の操作を分離させたことで、医師は術野を見たまま処置が行えます。また、内視鏡の先端から「屈曲デバイス」という、内視鏡本体よりさらに細いワイヤを出すことで、患部の固定が容易になりました。

 

NASHをスマホで治す研究

 

日本肝臓学会の理事長、小池和彦氏は、東京大学大学院医学系研究科消化器内科学教授です(2016年10月現在)。この研究所で注目したいのは、スマホのアプリ開発です。

 

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝硬変や肝がん、さらに心筋梗塞に進行するリスクが高い肝臓病です。NASHの患者数は現在200万人で、予備軍は1000万人といわれています。

 

ただ現状は特効薬がなく、治療ガイドラインで示されているのは、食事療法、運動療法、減量(ダイエット)といった状況です。しかもこの3つの治療法は、外来診療の限られた時間で患者に習慣化させることが難しいという課題があります。

 

そこでスマホを活用し、患者の日常生活に医師が治療介入するシステムを構築したのです。患者は1日10~15分程度、自分のスマホで専用アプリを開き、動画や文章によって、治療ガイダンスを受けます。研究チームは、患者に医療知識を伝えるだけでなく、NASHの治療・改善を目指していて、厚生労働省の「医療機器の薬事承認」を目標に据えています。


まとめ

消化器内科医師の年収・収入・将来性と転職条件

 

厚生労働省の統計ではかつて、消化器内科と消化器外科を区別していませんでした。しかし「消化器科」でひとまとめにしたのでは、現代の医療を反映できないと考え、両科をひとつの科として統計を取るようになったのです。

 

診療科の専門化や細分化はときに批判されることもありますが、しかし専門化と細分化こそ医療の進歩といえるのではないでしょうか。

 

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2017/10/21

 

参考資料

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2014年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/dl/kekka_1.pdf

 

●厚生労働省「診療科別にみた医師数」2004年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/index.html

 

●メドピア「標榜科目の変更アンケート」
https://medpeer.co.jp/press/_cms_dir/wp-content/uploads/2014/05/Posting_130725.pdf

 

●MCドクターズネット
http://mc-doctor.net/fulltime/area-01:12:40/medical-022003/

 

●株式会社ホギメディカル「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)支援デバイス発売に関するお知らせ」
http://www.hogy.co.jp/material/pdf/150415sinseihinn.pdf

 

●東京大学大学院医学系研究科消化器内科学など「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)治療アプリの臨床研究」
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20160930.pdf

 

この記事を書いた人


野村龍一(医師紹介会社研究所 所長)

某医療人材紹介会社にて、10年以上コンサルタントとして従事。これまで700名を超える医師の転職をエスコートしてきた。担当フィールドは医療現場から企業、医薬品開発、在宅ドクターなど多岐にわたる。現在は医療経営専門の大学院に通いながら、医師紹介支援会社に関する評論、経営コンサルタントとして活動中。40代・東京出身・目下の悩みは息子の進路。

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