看護師のための保健医療計画のミカタ No.6 「静岡県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/2/24 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は日本のほぼ中央、東西の境目に位置する静岡県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。
静岡県の看護職員数の動向
日本の象徴・富士山と有数の温泉地を擁する静岡県。全国に先駆けて第7次保健医療計画を策定し、高齢化への対応にもいち早く取り組んでおり、男女ともに全国トップクラスの健康寿命県でもあります。
平成24年12月末に県内で就業していた看護職員数は37,256人(保健師1,530人、助産師874人、看護師27,627人、准看護師7,225人)で、看護師は平成18年末の22,440人と比べて5,187人(23.1%)と増加する一方、准看護師は556人(7.1%)減少しました。(厚生労働省「平成 24 年衛生行政報告例」)。
同様に、「平成26年衛生行政報告例」では、就業看護職員数は38,643人(保健師1,599人、助産師952人、看護師29,174人、准看護師6,918人)でした。人口10万人当たりの就業者数では、看護師は787.4人で、全国平均855.2人よりも67.8人下回っています。
静岡県の看護師の就労状況
静岡県では、全国平均と比較すると、診療所に勤務する看護職員の割合が多く、病院に勤務する看護職員の割合がやや少なくなっています。
静岡県民の受療動向調査では、「軽い病気にかかったと思われるときに真っ先に受診するところ」という質問に対して「診療所へ行く」という回答が75.7%、「大きな病院へ受診する」という回答が12.9%となっています。これは、県民が病状に応じて診療所(かかりつけ医)と病院を上手に使い分けている、ということではないでしょうか。
二次医療圏の状況を見てみると、他県と比較して人口はそれほど偏っていないのですが、医療従事者数をはじめとする医療資源は、都市部に集中する傾向があります。多くの医療圏には複数の特定機能病院が配置されているのですが、伊豆半島の特定機能病院は、加茂医療圏には0、熱海医療圏は災害拠点病院が1のみです。現状としては、特定機能病院を多く抱える駿東田方医療圏が、この2医療圏の高度医療をカバーしているようです。
他の県と同様、静岡県も少子高齢化の傾向にあり、慢性疾患や在宅療養患者などの療養を支援する訪問看護のニーズは、年々高まっています。また、医療の高度化・専門化によって、高度専門医療を担う看護師の役割が、より一層重要視されています。
全国的にも、このように看護師の需要が増え、役割も多様化する一方で、業務の負担による健康上の理由で離職を考える看護師が、病院を中心に多いことが分かっています。静岡県ではこうした看護師の離職を防止するため、看護師の勤務環境の改善が必要だと考えています。例えば、看護師養成数の増加だけでなく、 いわゆる「潜在看護師」の再就業を支援して、人員を確保していくことを重要な課題として掲げています。
静岡県の看護師確保に向けての取り組み
では、静岡県での具体的な看護師確保対策を見ていきましょう。
看護職員の職場環境の向上
静岡県では、様々な方向から、看護職員の職場環境向上を目指し、次のような施策を打ち出しています。
- 「看護職員研修の責任者や教育担当者」に向けた研修会の実施
- 実践能力を高めるような新人研修の実施を支援
- 看護職員がより働きやすい、魅力的な職場環境を目指し、病院の管理者研修や病院の業務内容の見直しを行うように指導
- 院内保育事業の充実
- ナースステーション等の改修
- 看護師宿舎の個室化
- 最新医療機器の導入
- 短時間正規雇用の促進
- 時間外労働を減らし、夜勤の負担を軽くする
- 年休の取得促進
などです。全体的にみると、県が看護職員の勤務する環境(病院施設や制度、管理者、指導者など)を改善するとともに、看護の質を向上させることに重点を置いていることがうかがえます。
啓発活動と看護師育成の充実
静岡県では、高校生などを対象とした看護職の啓発活動を行っています。また、資格を取得した看護師が県内で就業し、定着してもらうために、県内の看護学生に対する奨学金貸与制度を実施。就業後も、手厚い研修によって、新人看護師を支える体制を整えています。
さらに卒後研修として、多様化する看護師の業務にも対応できるように整備された、研修の充実ぶりも注目です。e-ラーニング(webを利用した講習)なども活用し、きめ細かく学びやすい研修体制を整えて、看護師の資質向上をはかっています。
看護師の再就業を促進
いわゆるブランクのある看護師に対しては、最新の看護知識や技術を習得するための講習会や研修会を開催し、再就業をサポートしています。訪問看護ステーションでは実務に携わりながら技量に応じた研修を受けることも可能。ナースセンターから、交通費や託児費用の支援もあります。
まとめ
病院の制度改善や管理者・リーダーの教育を進めることで、看護師の働きやすい環境を整えることに注力する静岡県。今後、病院で時短勤務や有休の取得を促進していくならば、余裕のある勤務ができそうです。出産・育児で退職したナースの、再就業を支援する体制も整えられているので、特に育児をしながら働きたいナースには、魅力的な県かもしれません。
【関連】
県域の東西が155km、南北に118kmととても広い面積を有しており、海、山、湖と、豊富な自然資源を持っている土地です。静岡県のもっとも有名なランドマークといえば、やはり富士山。2013年には世界遺産に登録され、今や世界中から観光客があつまる地域となりました…。 2016/7/22 |
参考資料
静岡県第7次保健医療計画 第7章 医療人材の確保
http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-410/documents/7syou.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/gaikyo.pdf
静岡県看護協会ホームページ
http://www.shizuoka-na.jp/