看護師のための保健医療計画のミカタ No.31 「福井県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は越前ガニで有名な福井県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策について、第6次福井県医療計画をもとにお伝えします。
福井県の看護職員数の動向
「フクイリュウ」をはじめとする学術的価値の高い恐竜の化石が次々と発掘され、「恐竜王国福井」のブランドで町おこしを行っている福井県。福井県立恐竜博物館は、恐竜博物館の中では世界で3本の指に入ると言われています。
一方、福井県は農業が盛んな地域でもあり、日本で最も愛されるお米・コシヒカリが生まれた県でもあります。工業も盛んで、国内の眼鏡の90%以上を生産する鯖江ブランドが有名ですね。県民は、広い家に3世代同居する共働き世帯がほとんどで、車の所有率は全国1位。平均寿命は全国トップクラスで、都道府県別国民生活指標では「癒す(医療・保健・福祉サービス等の状況)」という領域で全国1位となっています。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は11,135人(保健師499人、助産師202人、看護師7,100人、准看護師3,334人)で、平成26年には、就業看護職員数は11,775人(保健師503人、助産師218人、看護師7,958人、准看護師3,096人)となっています。人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1,007.3人で、全国平均855.2人よりも152.1人上回っている状況です。
福井県の看護師需要
福井県も他の都道府県と同様、病院勤務の看護師が最も多く72.6%で、全国平均の72.8%とほぼ同じとなっています。一方、診療所に勤務する看護師は全国で12.4%であるのに対して10.2%と少なくなっています。
在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3%に対し4.4%、介護保険施設等は全国6.5%に対し8.7%となっています。全国平均と比較すると在宅医療関連施設関連の看護師が、やや多くなっていることがわかります。
近年は介護保険制度が充実していくのに伴い、介護保険関係施設への就業が増加しているようです。
福井県の死亡者割合を主な死因別に見ると、1位がん、2位心疾患、3位肺炎、4位脳血管疾患で、全国の順位と同じになっています。また、生活習慣病である心疾患・脳血管疾患・ 糖尿病の受療率が全国平均より高くなっているため、県は、がん、心疾患(中でも急性心筋梗塞)、中でも脳卒中の死亡率低下と、糖尿病などそれぞれの病状に応じた医療機関が選択できる医療提供体制の構築を目指しています。
福井県内では最先端のがん治療施設として、平成23年4月に福井県立病院陽子線がん治療センターが整備されました。他にも公立病院の再整備や高度医療施設の整備が着々と進められてきています。
こうした状況から、福井県は疾病にかかわる高度な知識と技術を持つ看護師の需要が高まっています。県内には平成29年11月現在で、認定看護師が175人、専門看護師が7人、認定看護管理者が24人いますが、さらなる人材の育成が求められています。
また、全国より3年ほど高齢化が進んでいる福井県では在宅医療のニーズも高まっています。県は訪問看護ステーションの拡充に力を入れており、その数は平成29年11月現在で78カ所。平成24年の58カ所から5年余りで20施設増加しています。高齢者に加えて若年層や小児の自宅療養者も増加しており、福井県看護協会では訪問看護ステーションに勤務する看護師の研修や相談、実態調査など、手厚い支援体制を整えているようです。
看護職員の離職状況をみると、平成22年度の離職率は6.9%(全国11.0%)、新卒看護職員に限った離職率は4.2%(全国 8.1%)にとどまっています。
また、潜在看護職員の再就業にも力を入れており、働きたい人と施設との勤務条件などについてきめ細かな調整が必要と考えているようです。
ところで、福井県の形ですが、何かに似ていませんか?県の東側を頭、西側を尻尾と考えると、少しいびつではありますが、オタマジャクシのように見えませんでしょうか。この地形の影響も大きいのですが、福井県内に10あるといわれる無医地区のうち、7つが尻尾側の嶺南医療圏にあります。
この医療県内では、公立小浜病院(一部の地区については他の医療機関への委託)による巡回診療が行われていますが、地理的な不便さもあり、住民の通院が難しい地域になっているようです。
福井県の看護師確保に向けての取り組み
こうした状況を踏まえて、福井県では看護師数の確保・県内定着と資質向上に向けて、次のような施策を掲げています。
(1)看護職員となる人材の養成
- 高校生などへ看護職の啓発活動
- 修学資金貸与事業による学生の確保
- 民間の看護師養成施設の運営支援
- テレビ会議のシステムを導入した効果的な教育体制の整備
- 看護教員の資質向上や実習指導者の養成による基礎教育の充実強化
(2)県内での就業と定着の促進
- 県内外の看護学生への就職情報発信や合同就職説明会の開催
- 再就業を希望する潜在看護職員を対象にした再就業体験研修の実施
- ナースセンターの求人・求職相談や就労あっせんの強化
(3)離職の防止
- 院内保育所の運営支援
- 看護師宿舎などの施設整備を支援
- 看護職員の勤務環境の改善と離職防止
- 早期離職を防止する新人看護職員への研修会
(4)看護職員の資質向上
- 看護協会、医師会、大学等が連携した専門分野や看護実践の研修
- 認定看護師教育機関の運営を支援
- 訪問看護養成講習会や訪問看護ステーション看護師への研修会を開催
- 在宅療養の多様なニーズに対応できる質の高い訪問看護師の育成
高度先進医療施設などを整備して、より専門的で高度な知識や技術を持つ看護師の育成を目指す福井県。これから認定看護師などのキャリアアップを目指そうと考えているナースにとって、働きやすい県かもしれません。
また、男女の出会いから出産、育児まで行政の支援が手厚く、婚姻数、出生率共に全国で上位の県でもあります。女性の就業率が高く共働きが多数派で、保育園などの子育て支援も充実しています。結婚・出産後もしっかり働きたいナースにはうってつけの県と言えるのではないでしょうか。子どもたちが大好きな恐竜を堪能したあとは、温泉につかり、カニに舌鼓をうつ……そんな休日を満喫できるかもしれません。
参考資料
第6次福井県保健医療計画
http://www.pref.fukui.lg.jp/doc/iryou/iryoujouhou/6ji-iryoukeikaku.html
平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf
福井県ホームページ
http://www.pref.fukui.lg.jp
福井県看護協会ホームページ
http://kango-fukui.com/