宮城県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

元看護師のライター　紅花子です。

各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は牛タンの特産地として有名な宮城県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、第6次保健医療計画をもとにお伝えします。

宮城県の看護職員数の動向

フカヒレ、牡蠣、ほやなど、グルメな海産物が豊富な宮城県。米どころとしても有名で、おにぎりキャラ・むすび丸が「仙台・宮城観光PR担当課長」として、伊達政宗公の甲冑やお祭りスタイルのコスチュームで県の観光や特産品をPRしています。

平成23年の東日本大震災では、津波によって沿岸部が壊滅的な被害を受け、震災前は147施設だった病院は全壊6施設、一部損壊98施設と、実に7割が被害を受けました。

震災前のデータによれば、宮城県では定期健康診査や人間ドッグ等の受診者の割合は約7割。平成22年度の特定健康診査の実施率は49.9％で全国平均の42.9％を上回り、全国4位となっています。検診受診率は年々減っているものの、健康に対する意識の高い県民性がうかがえます。

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は24,897人（保健師922人、助産師679人、看護師16,073人、准看護師7,223人）で、平成26年には、就業看護職員数は26,318人（保健師1,026人、助産師735人、看護師18,119人、准看護師6,438人）となっています。

人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は778.3人で、全国平均855.2人よりも76.9人下回っている状況です。

宮城県では病院勤務の看護師が最も多く71.6％で、全国の72.8％をわずかに下回っています。一方、診療所に勤務する看護師は全国で12.4％であるのに対して14.5％とやや多くなっています。在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3％に対し3.2％、介護保険施設等は全国6.5％に対し6.7％となっています。

宮城県における看護師の就業場所の割合は、全国平均と大きくは変わらないと言えるでしょう。

宮城県では、もともと「７：１」看護基準によって看護師の需要が大きくなり、都市部の大規模病院の就業が増えて地方の看護師が不足する「地域的偏在」という大きな課題を抱えています。また、看護師だけではなく医療従事者全体の問題として、宮城県では人口10万人当たりの従業者数が全国平均より低いうえ、東日本大震災によって、被災地ではさらに医療従事者不足が深刻化しました。

震災復興に向けて、県は「第二期宮城県地域医療再生計画及び宮城県地域医療復興計画」を策定し、医療体制の回復と共に、先進的な地域医療モデルづくりを目指し、着々と歩を進めています。

被災した県内の数多くの病院が、移転・新築によって高度で専門的な医療に対応できるよう機能や設備が一新される中で、看護師の需要はますます大きくなっていくことが予想されます。特に、「高度で専門的な知識や技術を持つ看護師」のニーズは、現在もこれからも高まっていくことでしょう。

宮城県には平成29年12月現在で、認定看護師が282人、専門看護師が26人、認定看護管理者が46人いますが、県ではさらなる看護師のキャリアアップを支援する体制づくりを目指しています。

次に医療体制や病院の整備状況について、二次医療圏ごとの状況を見ていきましょう。

仙南医療圏

県内でも少子高齢化の進んでいる仙南医療圏では、入院の際に住民の約3分の1が圏域外の医療機関に流出しており、10万人当たりの医療従事者数は医師、歯科医師、薬剤師、看護師のいずれも県平均を下回っています。特に看護師は県内で最も少なく、10万人当たり441.5人となっています。

仙台医療圏

政令指定都市の仙台市がある仙台医療圏は、各科の高度な医療機能を担う医療機関が多く交通の便もよいため、県全体の医療の中核を担っています。入院の際、住民のほとんどは圏域内の医療機関で受療し、県域外から流入する患者も多数。看護師数も県平均を上回っています。

平成26年度には仙台市立病院が移転新築され、平成30年度には東北大学病院に先進医療棟がオープン予定、同31年度末には仙台医療センターの建て替えが終了する予定です。

大崎・栗原医療圏

旧大崎医療圏と旧栗原医療圏が合併した広大な面積を持つ大崎・栗原医療圏。大崎市に医療機関が集中し、圏域内に入院する住民は8割近くと、ほぼ自圏域で医療が充足しています。

平成26年度に移転新築された大崎市民病院は、圏域内の医療の中核を担っており、平成29年度には、高度な医療を提供する病院として全国の市町村立病院でトップレベルの医療機能と評価を受けました。

しかし圏域内では医師・薬剤師・看護師など、すべての医療従業者数が県平均を下回ること、また、へき地での医療の確保・充実が課題となっています。

石巻・登米・気仙沼医療圏

3医療圏が合併した石巻・登米・気仙沼医療圏は、東日本大震災において県内で最も大きな被害を受けました。旧石巻医療圏では市立病院など3病院が休止となったほか、多くの診療所も被災。平成24年8月末時点で医療機関の再開率は88.1％でしたが、その後、石巻市立病院が平成28年度に移転新築するなど着々と復旧は進んでいます。

他に気仙沼市立病院移転、公立志津川病院新築、市立急患センター建設など医療施設の整備が次々と進められています。どの圏域も看護師が不足しており、特に南三陸町は看護師確保に向けた事業費が割り振られています。

こうした復興の最中にある宮城県では、看護師確保のため、以下のような対策を掲げています。

• 看護系大学や看護師養成施設と連携した看護師の安定的な確保
• 看護学生修学資金貸付事業や就職ガイダンスで若い看護師の定着と地域偏在の解消
• 子育てしながら安心して勤務できる短時間勤務制度の導入や院内保育体制の推進
• 未就業看護師の再就業支援
• 新人看護師や復職看護師などへの院内研修の推進
• 認定看護師などにキャリアアップできる体制づくり

東日本大震災の津波被害から6年が経過し、着々と復興へ向かって歩んでいる宮城県。壊滅的な被害から立ち上がり、新しい医療施設は建設ラッシュの真っ最中です。慢性的に医療人材が不足している中で看護師のニーズは高く、特に着々と整備されている先端医療に携わるスキルの高い人材は大歓迎されることでしょう。

設備だけでなく、病院の制度や旧来の体制なども一新されることで、より働きやすい職場環境が期待できます。

休日は日本三景である松島のほか、2015年にオープンした「仙台うみの杜水族館」や不思議体験ができる大崎市「感覚ミュージアム」など、見所がたくさん。山盛りの新鮮なカキを味わえる海岸沿いのカキ小屋、笹かまぼこの手焼き体験など、グルメ納得の地元の味も魅力的な県ですね。

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