看護師のための保健医療計画のミカタ No.23 「青森県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」

青森県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。

 

各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は「リンゴ」と「大間のマグロ」で有名な、青森県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。

 

青森県の看護職員数の動向

 

本州の最北端に位置し、三方を海に囲まれている青森県。縄文文化を伝える三内丸山遺跡でもわかる通り、古くから人々が居住してきた歴史を持ち、世界遺産の白神山地や十和田八幡平国立公園など豊かな自然にも恵まれ、数多くの温泉が湧出する県でもあります。

 

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は18,324人(保健師571人、助産師297人、看護師11,354人、准看護師6,102人)。
平成20年度末に比べると、准看護師は152 人減少、看護師は653人増加しています。

 

その後、平成26年には、就業看護職員数は18,755人(保健師602人、助産師318人、看護師12,274人、准看護師5,561人)となり、人口10万人当たりの就業者数では、看護師は929.1人で、全国平均855.2人よりも73.9人上回っています。

 


青森県の看護師需要

 

青森県では病院勤務の看護師が最も多く、およそ72.0%。全国の72.8%よりわずかに少ない割合です。診療所も全国12.4%に対し青森県11.2%、介護保険施設等も全国6.5%に対し青森県6.4%と、わずかに少なくなっていますが、訪問看護ステーション勤務は全国3.3%に対し5.8%と、やや多くなっています。

 

青森県民は健康上、多くの課題を抱えています。最も多い死因であるがんは、平成23年の75歳未満年齢調整死亡率を人口10万人当たりで見ると、男性が135.1人(全国107.1人)で全国1位、女性は66.3人(全国61.2人)で全国5位と、非常に高くなっています。

 

また、青森県の平均寿命は男女共に全国で最も低く、その大きな要因となるのが糖尿病です。青森県において糖尿病による人口 10 万人に対する死亡率は全国平均より高く、平成23年では全国を5.2人上回っています。
平成22年都道府県別年齢調整死亡率のうち、糖尿病による年齢調整死亡率を人口10万人当たりで見ると、男性は全国6.7人に対し青森県9.0人、女性は全国3.3人に対し青森県4.0人と、いずれも全国より高い状況にあります。

 

また、県内では糖尿病が重篤化してから生活改善を考える患者が多く、その時点ですでに3大合併症を発症している割合が多いという調査結果も出ました。こうした現状から、県では糖尿病の予防対策に力を入れており、患者の症状と治療状況に応じた医療体制づくりに取り組んでいます。

 

また、医療の高度化・専門化への対応や介護・福祉分野の進展にともなって、専門家としての看護職員の必要性がますます高まっています。がん患者や糖尿病患者の多い青森県では、こういった分野の認定看護師や専門看護師の需要は非常に高く、県も資格取得を後押ししています。
同時に、がんの在宅療養や脳卒中の在宅リハビリ、また通院困難な地域における患者の救急医療など、在宅医療を支える診療所や訪問看護ステーションの重要性も高くなっています。

 

青森県では、在宅医療関係機関に求められる役割として

 

  • 在宅療養者のニーズに応じて、医療や介護を包括的に提供できるよう調整する
  • 高齢者のみでなく、小児や若年層の患者に対する訪問診療、訪問看護等にも対応できるような体制を確保する

 

ということを挙げています。


青森県の看護師確保に向けての取り組み

青森県では看護師の養成確保と資質向上を目標に掲げ、平成26年に看護師確保対策として「青森県看護師等サポートプログラム」
を策定し、平成32年度末までの達成目標と具体的な取り組みを以下のように掲げています。

 

県内就業の支援

 

【目標】

  • 看護師養成機関卒業生の県内就業率62.1%→76%(全国平均)
  • ナースバンクのあっせんによる就職数183人→300

 

【具体的な取り組み】

  • 中高校生の看護体験や出前講座、出前トークなど
  • 看護学生への就職相談やインターン、修学資金貸与など
  • ナースセンターでの無料職業紹介、進路相談など
  • 潜在看護師の掘り起こし
  • 再就業支援
  • U・Iターンの促進

 

キャリアアップ応援

 

【目標】

  • 認定看護師数135人→385人(250人増)
  • 看護職員養成講習会未受講者19人→0人

 

【具体的な取り組み】

  • 実習指導者や看護教員の養成
  • 養成所の運営費補助
  • 新人看護職員研修
  • 認定看護師の養成
  • 実践力に応じたキャリアアップのための継続研修
  • 新人看護職員研修の責任者への研修
  • 訪問看護の推進を拡充
  • 他病院との人事交流

 

魅力ある職場づくり

 

【目標】

  • 新人看護職員離職率8.7%→2.7%
  • 常勤看護職員離職率8.5%→3.9%

 

【具体的な取り組み】

  • ワーク・ライフ・バランスの推進
  • 新人看護職員の離職防止
  • 処遇改善
  • 病院内保育所等の設置
  • 医療労務管理相談コーナー

 

また、平成29年から新たに、ひとり親家庭の親または子、父母のいない子を対象として、看護師資格取得に必要な学費と生活費を貸与し、5年勤務すれば返還を免除する独自の事業も行っています。

 

がんや糖尿病対策に積極的に取り組んでいる青森県。高度な知識を持つ看護師のニーズが高く、県が看護師の資格取得を奨励しているので、すでに関連資格を持っているナースだけでなくキャリアアップを目指すナースも要注目の県と言えるでしょう。

 

プライベートでは、夏はねぶた祭りで盛り上がり、秋は十和田湖や奥入瀬渓流などで紅葉を堪能、冬は温泉やスキーを満喫するのも一興ですね。

 

 

参考資料

 

青森県保健医療計画
http://www.pref.aomori.lg.jp/welfare/health/iryo_plan.html

 

平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf

 

平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf

 

青森県ホームページ
https://www.pref.aomori.lg.jp/

 

青森県看護協会ホームページ
http://egao-park.net/

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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