看護師のための保健医療計画のミカタ No.36 「山口県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回はふぐで有名な山口県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、第6次保健医療計画をもとにお伝えします。
山口県の看護職員数の動向
九州に面した本州の西端に位置し、三方を海に囲まれた山口県。県内は国内最大級の鍾乳洞である秋芳洞(あきよしどう)や県央の連山、入り組んだ海岸など自然の変化に富み、美しい景観が数多く見られます。この地域は古くから大陸の玄関口として、中国大陸や朝鮮半島の文化を取り入れ「西の京」と呼ばれるほど栄えました。
源平合戦で最も有名な戦である壇之浦の戦い、長州藩から数多く輩出された維新の志士など、重要な時代の転換期にも深く関わりのある地域です。
県内の医療面での特徴については、平成23年における人口区分を見ると、年少人口は12.6%、生産年齢人口が59.1%全国平均より少ない中で、65歳以上の高齢人口だけが28.2%と、全国平均の23.3%よりも高い割合となっています(以上、総務省統計局 人口推計(平成23年10月1日現在)より)。
受療率を見ると、入院は全国で5番目、外来は全国で8番目に受療率が高く、住民の医療への依存度は高いと言えます。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は22,040人(保健師729人、助産師392人、看護師13,760人、准看護師7,159人)で、平成26年には、就業看護職員数は23,859人(保健師710人、助産師423人、看護師15,598人、准看護師7,128人)となっています。
人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1,107.8人で、全国平均855.2人より252.6人も上回っている状況です。
山口県の看護師需要
山口県では病院勤務の看護師が最も多く74.3%で、全国の72.8%を上回っています。一方、診療所に勤務する看護師は全国で12.4%であるのに対して11.4%と少なくなっています。在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3%に対し2.9%、介護保険施設等は全国6.5%に対し6.9%となっています。
全国平均と比較するとそれほど大きな差はありませんが、病院や介護保険施設など一定規模の施設での勤務者が比較的多いことがわかります。
山口県では平成23年現在で人口10万人当たりの病院数が10.2、病床数は1,900.1となっており、全国平均の病院数6.7、病床数1,238.7をいずれも大きく上回っています。
急性期医療からターミナルケア、在宅療養など、看護師の活躍する場が拡大している現在、ますます高度化、多様化していく医療にも適切に対応できる看護師の養成と人数の確保、資質の向上は山口県として重要な課題となっています。
山口県には平成29年12月現在で、認定看護師が241人、専門看護師が9人、認定看護管理者が57人います。
がん医療については、医療の充実と水準の向上に向けて県が特に力を入れています。拠点病院においては化学療法や緩和ケアなど、がん看護の専門看護師や認定看護師の適正な配置を進めており、チーム医療体制の構築を進めています。その中で看護師が果たすべき役割は、これまで以上に専門的で高度なものになっています。
また、今後は通院困難な患者を支える在宅医療を、訪問看護ステーションと連携しながら充実させていく方向です。病院で24時間対応することが難しい場合も、訪問看護施設との連携によって24時間対応できる体制を整備することを目指しています。
県内では平成29年12月現在、110を超える訪問看護ステーションが整備されています。平成23年には85だったので、6年間で30施設以上が増加したことになります。
次に県内の二次医療圏を見てみましょう。それぞれの高齢化率、医療施設数は、医療圏ごとにばらつきがあります。
県庁所在地である山口・防府医療圏の高齢化率が24.5%と低い一方で、柳井・長門・萩の3医療圏では高齢化率が35%前後で過疎化が進んでおり、他の医療圏は26~28%程度となっています。
山口・防府医療圏よりも人口の少ない宇部・小野田医療圏ですが、病院数は山口・防府よりも多く、下関は病院が比較的少ない一方で一般診療所数が多く、医療の完結率は高くなっています。
岩国・萩医療圏は患者流出率が27%超となっており、医療完結率が規定よりも低い状況ですが、地理的条件から圏域を再編することは難しく、今後は医療施設を整備することで完結率を高める方向です。
岩国では平成25年に基幹病院である岩国医療センターが新設移転されました。萩においても現在、萩市民病院の事業改革が検討されており、地域医療の再編成は着々と進められています。
山口県の看護師確保に向けての取り組み
このような状況を踏まえて、山口県では次のような施策を展開しています。
資質の高い看護職員の養成
- 看護職養成施設への支援や指導で看護教育を充実
看護職員の確保
- 養成施設在学者への修学資金貸与によって県内で従事する看護師を確保
- 情報サイトなどを通じて情報を配信し、県内就職を促進
- 中小病院の教育を強化する研修会の開催
- 看護師就業協力員による就業支援
看護職員の離職の防止や再就業の促進
- 病院内保育所を設置している病院への支援
- 無料職業紹介や再就業研修、コーディネーターによる相談など
看護職員の資質の向上
- 医療の高度化・専門化、在宅医療の充実強化などに対応できるよう研修を実施、特にがん医療を支える看護師確保に向けては、以下のような施策を掲げています。
- 緩和ケア専門の医療従事者の育成に向けて研修を実施
- がん看護や化学療法の専門看護師・認定看護師など、専門性の高い人材の育成
山口県看護協会ではナースの研修や就職支援のほか、福利厚生としてレジャー施設の優待や割引、無料招待などの特典を用意しています。
日本最大級の鍾乳洞である秋芳洞、世界でも珍しい木造の五連アーチ橋として有名な錦帯橋、海辺から断崖の上に鎮座する本殿まで123もの赤い鳥居が立ち並ぶ元乃隅稲成神社(もとのすみいなりじんじゃ)など、山口県には自然と歴史が生み出した景勝地が盛りだくさん。
美しい景色を堪能した後は、温泉でフグ刺しをつまみながらヒレ酒で一杯、なんていう贅沢な休日も楽しそうですね。
参考資料
第6次山口県保健医療計画
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a11700/iryoukeikaku/201505190001.html
平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf
山口県ホームページ
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/
山口県看護協会ホームページ
http://y-kango.or.jp/