看護師のための保健医療計画のミカタ No.28 「佐賀県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」

佐賀県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。

 

各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は呼子のイカで有名な佐賀県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。

 

佐賀県の看護職員数の動向

 

弥生時代の遺跡としては国内最大の吉野ケ里遺跡がある佐賀県。伝統的な「唐津くんち」や、毎年秋に行われるアジア最大級の気球の祭典「インターナショナルバルーンフェスタ」では、毎年多くの観光客が集まります。

 

佐賀県は全国で3番目に人口が少ないものの、出生数、合計特殊出生率は全国平均より高く、年少人口については全国で3番目に多くなっています。佐賀県は「子育てし大県“さが”」という、出会いから結婚、妊娠・出産・子育て、ワークライフバランスの実現まで、手厚くサポートするプロジェクトを実施しており、その成果が表れているのかもしれません。

 

保健医療的な特徴としては、平成22年時点で悪性新生物による死亡者数が全国平均の1.5倍となっており、年々増加傾向にありました。また、心疾患、肺炎、脳血管疾患のいずれも全国平均を上回り、これらへの対策を県の課題としています。

 

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は14,006人(保健師444人、助産師175人、看護師8,607人、准看護師4,780人)で、平成26年には、就業看護職員数は15,532人(保健師467人、助産師208人、看護師10,020人、准看護師4,837人)となっています。人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1,200人で、全国平均855.2人よりも344.8人と大幅に上回っている状況です。

 

 

データでは確かに「全国平均よりも人口10万人あたりの看護師数が多い」と取れるのですが、ここには少しカラクリがあります。

 

佐賀県全体での看護師数は、例えば同じ九州地方の半数程度です。しかし人口10万人あたりではほぼ同等。これは、佐賀県と熊本県との実人口を考えると予測できます。つまり、実人口が少ないが故に、看護師数の実数が半分でも、人口10万人あたりの看護師数がほぼ同等になってしまっているのです。


佐賀県の看護師需要

 

佐賀県の看護師就業場所の状況を、全国平均と比較してみます。

 

  • 病院勤務:佐賀県=72.0%、全国平均=72.8%
  • 診療所:佐賀県=13.2%、全国平均=12.4%
  • 在宅医療関連
  • 訪問看護ステーション:佐賀県=2.3%、全国平均=3.3%
  • 介護保険施設等は:佐賀県=7.9%、全国平均=6.5%

 

という状況のようです。

 

佐賀県ではこれまで、いわゆるがんによる死亡者数の増加に悩んできましたが、第6次佐賀県保健医療計画遂行中の平成28年には、75歳未満年齢調整死亡率が数値目標をよりも下がりました。また、平成25年5月には、(全国に4施設しかない)重粒子線がん治療センター「サガハイマット」が開設されました。九州だけでなく、全国から患者が訪れるこの施設は、国内でも最新鋭のがん治療施設として注目されています。

 

佐賀県は現在、がん医療従事者の人材育成を進めており、訪問看護ステーションなどでがん患者の在宅看護を担うほか、こうした最先端のがん治療に携わる専門的な知識と技術を持った看護師の育成も不可欠となってくることでしょう。

 

また、糖尿病の人口10万人当たりの受療率が高いことも大きな課題ですが、糖尿病専門医の不足から、糖尿病療養指導士などコメディカルの活用に力を入れており、大学附属病院や各医療圏の糖尿病治療専門医療機関を核として、糖尿病コーディネータ看護師の育成を支援しています。

 

このような医療の高度化、専門科に対応できる質の高い看護師の養成・確保を目指す中、県には平成29年11月現在で、認定看護師が112人、専門看護師が6人、認定看護管理者が14人います。

 

佐賀県では病床数が全国平均より高く、入院を受け入れる体制が整っていることもあって自宅での看取り数が全国で最も少なくなっています。こうした状況を受けて、特に在宅医療の対策に力を入れています。平成29年度までに達成すべき目標として、平成23年度時点では0だった在宅医療連携拠点機関の数を8施設に増やし、平成19年度~23年度の5年間で88人だった訪問看護師養成講習会修了者数 を、平成29年度までに120 人、毎年20人の確保を目標としています。

 

 

佐賀県の二次医療圏は5つの二次医療圏に分かれており、自圏域で治療を受ける患者が中部・北部は9割以上、西部・南部はおおむね7~8割以上ですが、東部医療圏は救急医療機関がないためか、自医療圏での受診率が7割に届かず、入院、外来共に隣県の福岡県に20%前後の患者が流出しています。また、県内に3施設ある周産期母子医療センターはすべて中部に集中し、県内の周産期医療は中部が一手に担っている状態です。

 

とはいえ各医療圏の看護師数を見ると、どの医療圏も人口10万人当たり1,100人を超えており、著しい偏在は見られません。佐賀県には離島もありますが無医地区はなく、ドクターヘリや「99さがネット」という救急医療情報システムを整備して、二次医療圏を超えた全県域で医療体制をカバーできる体制を構築しています。

 

人口当たりの看護師数が充実している佐賀県ですが、それでも高齢化に対応する在宅医療の拡充もあって、将来的には看護師が不足すると予測されています。そうした中で、看護師を計画的・安定的に供給するには、短時間勤務などの多様な働き方を推進し、勤務環境の改善や離職防止・未就業者の再就業をさらに進める必要があると県は考えています。


佐賀県の看護師確保に向けての取り組み

こうした状況から、佐賀県は以下のような取り組みを行っています。

 

(1)質の高い看護職員の養成・確保
  • 看護師等養成所の運営への支援
  • 看護教員・実習指導者の養成、教員研修の実施
  • 新人看護職員への研修など継続教育の推進

 

(2)看護職員の確保、離職防止、潜在看護職員の就業促進
  • 職業体験などの看護職の魅力の普及啓発
  • 県内就業率向上に向けた取り組みへの支援
  • 病院内保育施設への支援
  • 未就業者の就労促進や再教育
  • 短時間勤務などの多様な雇用形態に関する研修を実施

 

(3)在宅医療推進のための体制づくり
  • 訪問看護師への研修やネットワークづくりなど支援体制の充実強化

 

また、佐賀県看護協会では看護師の研修や就業支援に取り組むほか、看護職員への福利厚生として嬉野温泉・武雄温泉での優待、マッサージ優待、テーマパークの無料招待などのメニューを用意して、プライベートの充実も支援しています。

 

最先端のがん治療施設が稼働している佐賀県。同時に今後は在宅医療に力を入れるため、訪問看護ステーションなどのニーズはますます高まっていくことでしょう。出会いから結婚、子育てまでワークライフバランスへの支援が手厚い県ですから、プライベートを大事にしたいママさんナースにとっては子育てしやすい環境と言えるでしょう。折々のイベントのほか、有田焼、唐津焼などの有名な焼き物の産地でもあるので、休日は窯元めぐりでお気に入りの器を探すのもいいですね。

 

 

 

参考資料

 

佐賀県第六次保健医療計画
http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00334296/index.html

 

平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf

 

平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf

 

佐賀県ホームページ
https://www.pref.saga.lg.jp/

 

佐賀県看護協会ホームページ
http://www.saga-nurse.org/

 

子育てし大県さがプロジェクトホームページ
https://saga-kosodate.jp/

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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