三重県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

元看護師のライター　紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は松坂牛と赤福で有名な三重県の看護師就業状況と、同県の看護師確保対策についてお伝えします。

三重県の看護職員数の動向

国内で最も格式の高い神社・伊勢神宮と、その門前町としてレトロな街並みが人気の「おかげ横丁」など、古き良き日本文化を伝える三重県は、県土の3分の1以上を自然公園が占めています。

志摩半島の美しいリアス式海岸と海に囲まれた島々では、伊勢海老など豊かな海産物に恵まれ、海女が漁を営む島は、三島由紀夫の小説『潮騒』の舞台にもなりました。世界で初めて真珠の養殖に成功したミキモト真珠の発祥地でもあります。

そんな三重県、平成18年までは人口増加傾向が続いていましたが、その後はゆるやかな減少傾向へと転じています。年少人口の割合は平成23年には13.6％と低下、その一方で、老年人口は24.3％となり、高齢化が進んでいます。

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は19,587人（保健師561人、助産師297人、看護師13,016人、准看護師5,713人）で、平成26年には、就業看護職員数は21,135人（保健師645人、助産師386人、看護師14,910人、准看護師5,194人）となっています。

人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は817人で、全国平均855.2人よりも38.2人、下回っている状況です。その一方で、平成26年の人口10万人当たりの准看護師数は284.6人と、全国平均の267.7人を上回っています。

三重県では病院勤務の看護師が最も多い（70.7％）のですが、全国の72.8％を下回っています。一方、診療所に勤務する看護師も、全国は12.4％であるのに対し、三重県は11.8％と少ない状況です。在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3％に対し3.0％ですが、介護保険施設等だけは全国6.5％に対し9.4％と多くなっています。

二次医療圏の状況

三重県の看護師数は年々増加しているものの、全国と比較すると、まだ少ない状況にあります。全国平均より10万人当たりの看護師数が少ない一方で、准看護師は全国平均より多いことから、県内では看護師数の不足を准看護師によって補っている状況と言えます。

病院、社会福祉施設や介護施設、在宅医療を支える訪問看護ステーションなど、看護師の就業場所が多岐に渡るようになり、今後さらに看護師のニーズが高まるなかで、看護師不足になることが予測され、三重県は、この看護師数の確保をまず喫緊の課題として掲げています。

さらに医療技術の高度化への対応や、訪問看護ステーションや介護保険施設などの医療機関ではない施設において、医療職として的確な判断や技術を求められる現場では、それに対応できる質の高い看護を担える人材は必須です。三重県には平成29年10月現在で、認定看護師が215人、専門看護師が24人、認定看護管理者が48人います。

二次医療圏で見ると、4つに分かれた二次医療圏のうち、中勢伊賀医療圏と南勢志摩医療圏には、三重県独自の「サブ医療圏」が設けられています。

それぞれの圏域を見ると、老年人口の割合は東紀州医療圏が35.2％と最も高く、最も低い北勢医療圏の21.1％よりも14.1ポイント高くなっています。年少人口の割合は、逆に北勢医療圏が最も高く14.6％、東紀州医療圏は11.3％となっており、地域によって大きく差があることがわかります。

各医療圏の10万人当たりの看護師数は、中勢伊賀保健医療圏が10万人当たり1,007.6人、南勢志摩保健医療圏は794.6人と全国平均より高いものの、伊賀サブ保健医療圏では533.8人と少なくなっています。

また、東紀州保健医療圏では看護師数が569.7人と少ないのに対して准看護師数は481.4人と多く、他医療圏の10万人当たりの准看護師数が223.1～393.4人であるのに比べると、准看護師の割合が非常に高くなっています。

看護師・准看護師を合計した数としては、中勢伊賀保健医療圏では1,315.7人と最も多く、伊賀サブ保健医療圏では756.9人と、地域によって看護師数・准看護師数の格差が大きいことがわかります。

なお、三重県の看護職の離職率は毎年約9％で推移しており、全国では11～12％であるのに比べると、低い水準といえます。特に平成22年度の新人看護職員の離職率は3.5％と、全国の8.1％よりも大幅に低くなっています。

三重県では、看護師確保のための取り組みとして、次の3つの方向性を打ち出しています。

• 看護職員養成のさらなる充実強化と看護職員の確保促進
• 離職防止対策の充実などによる看護職員の定着促進
• 資質向上のための研修の充実

それぞれの方向性に対する取り組みの具体的な内容については次の通りです。

【1.看護職員養成のさらなる充実強化と看護職員の確保促進】

• 看護の魅力についての普及啓発等による、看護師養成施設入学者確保
• 民間の看護師養成施設への支援
• 県内の定着をはかるための修学資金の貸付
• さまざまな勤務形態での雇用を含めた再就業の促進
• 再就職の不安を軽減する復職支援研修の実施
• ナースバンクへの求職・求人登録者数の増加

【2.離職防止対策の充実などによる看護職員の定着促進】

• 院内保育所の設置など、子育てしながら働きやすい環境の整備
• 新人・中堅看護師の職場定着を支援する研修体制の充実
• 職場の就労環境を改善して離職防止を推進するモデル病院へのアドバイザー派遣
• 勤務環境についての相談窓口の設置

【3.資質向上のための研修の充実】

• 県内の看護師養成施設と連携し、教育の充実と資質の向上に取り組む
• 最新の技術・知識を習得できるよう、研修体制の一層の充実をはかる
• 看護管理者の研修や情報交換を進め、資質の向上を図る
• 訪問看護の認知度アップと、訪問看護師の資質の向上をはかる育成研修の実施

全国に比べて離職率が低く、看護師数は少ないながらも、認定看護師、専門看護師といった高度な知識・技術を持つ看護師の人数はある程度確保されている三重県。保健医療計画には具体的に書かれてはいませんが、県内の医療施設は働きやすく、キャリアアップも目指しやすい職場環境なのかもしれません。

休みの日にはお伊勢参りで心を清め、豊かな自然の中ではアクティビティも楽しめます。海辺の新鮮な海鮮料理や松坂牛のステーキなどのグルメツアーも楽しそうですね。

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