看護師のための保健医療計画のミカタ No.38 「鳥取県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は二十世紀梨で有名な鳥取県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、第6次保健医療計画をもとにお伝えします。
鳥取県の看護職員数の動向
日本一広大な砂丘を持つ鳥取県。『出雲国風土記』に記され、平成30年に開山1300年を迎える大山を擁し、『古事記』の物語「因幡の白兎」の舞台にもなるなど、古代史と関わりの深い地域です。
大山から見える星空は美しく、「星取県」としてその魅力を発信しています。気候は比較的温暖で、春から秋は好天が多く冬は積雪のある四季のはっきりした環境。梨以外にもメロンや柿、ブルーベリーなど果物の栽培がさかんで、松葉ガニなどの海産物も豊富です。
47都道府県で最も人口の少ない鳥取県では、他県と同様に年々若年人口が減少し、高齢化が進行しています。
県民の保健医療を見ると、死因第1位のがんによる死亡割合が少しずつ減少しているのが特徴です。
がん検診の受診率を見ると、平成22年の受診率は全国より高く、こうした動きががんの早期発見・早期治療につながっているのかもしれません。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は8,521人(保健師311人、助産師189人、看護師5,588人、准看護師2,433人)で、平成26年には、就業看護職員数は9,186人(保健師300人、助産師229人、看護師6,340人、准看護師2,317人)となっています。
人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1104.5人で、全国平均855.2人よりも249.3人上回っている状況です。
鳥取県の看護師需要
鳥取県では病院勤務の看護師が最も多く73.4%で、全国の72.8%をやや上回っています。一方、診療所に勤務する看護師は全国で12.4%であるのに対して9.6%とかなり少なくなっています。在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3%に対し3.2%、介護保険施設等は全国6.5%に対し9.1%となっています。
全国平均と比較すると、診療所に勤務する数の少なさと、介護保険施設で勤務する看護師の多さが目立ちます。これも、高齢化の現れかもしれません。
鳥取県の看護師数は年々増加し、人口10万人当たりの看護職師数も全国平均より高くなっています。
しかし看護体制の充実や、短時間勤務など多様な勤務形態の導入、時間外勤務の削減など、職員が働きやすい労働環境を目指す中で、看護師のニーズはますます高まっています。
特に公的医療機関である救急・災害・小児医療などの不採算部門を担う病院、中山間地域などの医療を担う診療所などは、医師・看護師不足から医療体制の維持が難しくなっています。
そこで県では、地域の医療機関との連携体制の充実と役割分担を進めるための公立病院の再編・改革に着手しました。二次医療圏ごとにその現状と課題を見てみましょう。
東部保健医療圏
回復期や慢性期を担う医療機関が少なく、急性期医療もより幅広い分野で高度・先進的な医療を提供できる医療機能が必要として、新鳥取県立中央病院の建て替え計画が進められています。
圏域の中核病院として500床以上の規模を持ち、圏域内で医療を完結できる県の基幹病院としての位置づけで、県内の医療人材育成を目指しています(平成30年12月にオープン予定)。
中部保健医療圏
厚生病院が周産期医療や小児医療をはじめとした急性期医療を担い、他病院と機能分担しながら医療を提供。
しかし高度・特殊な医療を提供できる体制ではないため、高度な医療機能の充実と、他圏域とのさらなる連携が必要としています。
西部保健医療圏
高度な急性期医療を提供する鳥取大学医学部附属病院を中心に、複数の病院が連携して医療を提供。
規模や機能で重複が見られる病院があるため、機能分担と連携を進めることによって、より一層の医療機能の向上を目指しています。
また、医療の高度化・専門化・チーム医療に対応できる質の高い看護の提供が求められるため、高度な知識をもつ看護師は今後ますます必要となってくるでしょう。
それに向けて学校での教育の充実を図ることも重要です。
鳥取県には平成30年1月現在で、認定看護師が124人、専門看護師が6人、認定看護管理者が11人います。
県では大学卒の看護師の県内就業を促すため、医学部の保健学科看護学専攻の地域枠を創設、また県の看護職員養成枠も設置して、奨学金を貸し付けています。
こうした取り組みによって、新卒者の県内就業者数は増加傾向となってきました。
しかし県内看護師の離職率は平成22年度で7.9%となっており、医療機関での離職防止や働きやすい職場環境をつくることが課題となっています。
また、新卒の確保だけでなく、医療機関で働いていない看護資格保持者の再就業も進める必要があります。
鳥取県の看護師確保に向けての取り組み
以上のような状況から、鳥取県の看護師確保策をまとめると以下のようになります。
看護職を目指す学生を増やす
- 進学指導を通じた中学、高校生等への意識啓発活動
- 看護師体験、オープンキャンパスなどで看護職への理解を深める
県内での看護師養成数を増やす
- 看護師養成機関の新設の推進
- 看護学校の教員の研修、実習指導の充実
看護学生の県内就業促進
- 看護職員修学資金貸付制度の継続
- 看護師養成施設の地域枠入学者等への奨学金貸付
- サマーセミナー(看護現場研修)の開催
- 県内の看護師就業情報の提供
働き続けやすい環境の整備
- 院内保育所の設置
- 労働環境改善に向けた看護管理者への教育
その他にも、就業相談、再就職支援研修会などを開催して潜在看護師の再就業を促進しています。
また、学生だけでなく、現在働いている看護職員へも資質向上へ向けて、認定看護師等の資格の取得を推進し、高度医療、医療安全などに関する研修会の補助などを行っています。
中核病院の建て替え計画のある東部保健医療圏は、最新の機器や教育機能が整備され、キャリアアップやスキルの向上を目指すナースにとっては魅力的ですね。
また、公立病院は慢性的な看護師不足なので歓迎されることでしょう。
現在、医療機能の分担や勤務形態の改善が進められているので、今後いっそう働きやすくなることも予想されます。
鳥取県は「ゲゲゲの鬼太郎」の作者、水木しげる氏の出身地でもあります。
堺港の「水木しげるロード」には130体以上の妖怪ブロンズ像が立ち並び、その数は今なお増え続けている模様。
他には米子駅発着の鬼太郎列車や記念館もあります。
休日には堺港に出かけて、お気に入りの妖怪と共に記念撮影するのも楽しいかもしれませんね。
参考資料
鳥取県保健医療計画
http://www.pref.tottori.lg.jp/76907.htm
平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf
鳥取県ホームページ
http://www.pref.tottori.lg.jp/
鳥取県看護協会ホームページ
http://www.tottori-kangokyokai.or.jp/