看護師のための保健医療計画のミカタ No.39 「島根県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」

島根県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9

 

元看護師のライター 紅花子です。

 

各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回は宍道湖のヤマトシジミが有名な島根県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、平成25年度からの保健医療計画をもとにお伝えします。

 

島根県の看護職員数の動向

 

『古事記』や『日本書紀』の国譲り神話で有名な島根県。出雲大社に祀られるオオクニヌシノミコトは日本を造った神様として深い信仰を集め、縁結びの神様としても知られています。

 

特産品としては、ヤマトシジミの他にもベニズワイガニやいわがきなど日本海での水産資源が豊富。
農産物もブドウ、メロン、米などの栽培が行われています。産業としては昔から「たたら製鉄」が栄え、現在も鉄鋼関連の産業が盛んです。

 

県内の保健医療的な特徴を見ると、死亡原因の上位に肺炎などが入らない代わりに不慮の事故や自死が入っており、自殺死亡率は全国6位。
精神医療の面での課題を抱えている状況にあるのかもしれません。

 

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は10,990人(保健師444人、助産師226人、看護師7,034人、准看護師3,286人)で、平成26年には、就業看護職員数は11,751人(保健師462人、助産師285人、看護師7,890人、准看護師3,114人)となっています。

 

人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1,132人で、全国平均855.2人よりも276.8人上回っている状況です。

 

 

島根県は看護師数が増えてはいるものの、県全体的に看護師等の不足と偏在が課題となっています。

 

その背景にあるのは、看護配置基準や夜勤体制の見直し、訪問看護や福祉・介護部門での需要増加など。もともと応募者の少ない離島や中山間地域の病院だけでなく、都市部の大病院でも看護師の確保は難しい状況です。


島根県の看護師需要

 

島根県では病院勤務の看護師が最も多く70.9%で、全国の72.8%をわずかに下回っています。
また、診療所に勤務する看護師も全国で12.4%であるのに対して9.2%と少なくなっています。

 

一方で、在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3%に対し4.1%、介護保険施設等は全国6.5%に対し9.3%。全国と比較すると、在宅医療関連に勤務する看護師が多い傾向にあります。

 

こうした数値からは、島根県では「入院医療から地域医療へ」という流れの中で、看護師の病院から在宅関連への移行が比較的進んでいるように読み取れます。県が対策を進めている精神科医療の訪問看護の利用者数も、全国平均より高い状況です。

 

県の保健医療計画では、がんや地域医療の施策のなかでも看護師の役割が他県に比べて具体的に明記されており、それだけ看護師の育成と新たなニーズへの対応に力を入れているのかもしれません。

 

特にがんに精通した専門看護師、認定看護師の養成には力を入れているようです。一例として、平成25年3月の段階で11人だった緩和ケア認定看護師が、平成30年1月には25名に増加しました。しかし他の分野も含めて、こうした専門的な知識と技術を持つ看護師は、まだまだ不足しているのが現状です。

 

島根県には平成30年1月現在で、認定看護師が135人、専門看護師が9人、認定看護管理者が21人います。

 

県では在宅での緩和ケアを支えるため、24時間対応が可能な診療所・訪問看護事業所・介護サービス事業所の充実を目指しています。訪問看護を提供する県内の訪問看護ステーションは、平成24年10月の56カ所から平成29年4月現在は69カ所と着実に増加しています。

 

しかし、県西部や中山間・離島地域では地理的な困難さから、そして市街地は需要の高さから訪問看護師の確保が難しく、患者のニーズを十分には満たせていないようです。

 

 

地域の医療の確保状況を二次医療圏ごとに見てみると、松江医療圏、出雲医療圏は病院の設備も整い、医療が充実していますが、他医療圏での医療完結率は低い状況です。特に最も高齢化率が高い大田医療圏と離島の隠岐医療圏は、医療自給率が60%未満となっていました。

 

しかし、県の取り組みによって各医療圏の医療自給率は上昇しています。平成32年度には大田医療圏の中核病院となる新太田市立病院がオープンする予定となっており、医療偏在の解消に大きな役割を果たすことでしょう。


島根県の看護師確保に向けての取り組み

このような状況を受けて、島根県では以下のような取り組みを行っています。

 

看護師の確保・定着に向けた支援
  • 県内で就業する看護学生への修学資金貸与
  • 県立高等看護学院や県立大学の地域推薦入学
  • 新人看護職員研修を実施する病院への支援
  • 病院内保育所整備・ 運営費の支援
  • 就業相談体制の強化
  • 離職を防止する勤務環境の改善への取組を支援
  • 「雇用の質」の向上への取組
  • 離島や中山間地域の中小医療機関における臨地実習の促進

 

県内進学の促進
  • 民間の看護師等学校養成所に対する運営費の補助
  • 高校生のための進学ガイダンス
  • 看護教員の計画的な研修受講の支援

 

また、働いていないナースの再就業の促進目指して積極的に取り組むともに、看護職員の資質の向上を図るため、各種研修事業の充実をはかっています。

 

少子高齢化と看護師へのニーズの多様化の中で、看護師数が不足している島根県。離島や中山間地域はもちろん、生活が便利で勉強しやすい環境にある都市部の病院でも看護師のニーズが高いので、就職しやすいかもしれません。

 

自然がいっぱいの島根県では、休日は海や山のアクティビティが楽しめそうです。国宝松江城や世界遺産に登録されている石見銀山など歴史的建造物も多く、観光地では、ゆるキャラグランプリで上位争いの常連だった「しまねっこ」にも会えるかもしれませんね。

 

 

参考資料

 

島根県保健医療計画
http://www.pref.shimane.lg.jp/medical/kenko/iryo/shimaneno_iryo/hokenniryoukeikaku/hokenniryoukeikaku.html

 

平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf

 

平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf

 

島根県ホームページ
http://www.pref.shimane.lg.jp/

 

島根県看護協会ホームページ
https://www.shimane-kango.or.jp/

 

この記事をかいた人


紅 花子 (べに はなこ)
正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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