大分県の看護師求人事情と、看護師確保対策を知る

元看護師のライター　紅花子です。

各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回はだんご汁ととり天（鶏肉の天ぷら）で有名な大分県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、平成25年に告示された大分県医療計画をもとにお伝えします。

大分県の看護職員数の動向

「日本一のおんせん県おおいた」がキャッチフレーズの大分県。日本一なのは、その源泉数と湧出量です。2015年には「シンフロ」という温泉PR動画で、文字通り「全国を沸かせた」ことでも有名な観光地、別府温泉があります。

農林水産業も盛んで、豊後牛、高級魚の関あじ、関さばなどの大分ブランド食材のほか、カボスやしいたけの産地としても有名です。工業では、製造品全体の出荷額は九州で2位（平成26年）となっています。

県民の保健医療的な面を見てみましょう。主な死因別死亡率を人口10万人当たりで全国と比較すると、悪性新生物、心疾患、肺炎、脳血管障害、老衰のすべてにおいて全国平均を上回っています。

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は18,745人（保健師567人、助産師253人、看護師11,743人、准看護師6,182人）で、平成26年には、就業看護職員数は20,584人（保健師672人、助産師338人、看護師13,482人、准看護師6,092人）となっています。人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1,151.3人で、全国平均855.2人よりも300人近く、大幅に上回っている状況です。

大分県では病院勤務の看護師が最も多く73.2％で、全国の72.8％とほぼ変わらない割合です。診療所に勤務する看護師も全国で12.4％であるのに対して12.6％となっています。在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3％に対し2.6％、介護保険施設等は全国6.5％に対し6.3％となっています。

どの施設の割合も全国平均並みですが、強いて言えば病院や診療所がやや多く、在宅関連施設はやや少なくなっていることがわかります。

大分県は10万人当たりの病院数が13.4で、全国では4番目に多く、10万人当たりの病床数も1,694.1と全国平均の約1.4倍で、全国11位となっています（平成23年現在）。

三次救急とがん診療連携拠点病院は中部医療圏に集中し、二次救急医療機関と地域災害医療拠点病院はすべての圏域に設置されています。外来での圏域内完結率はどの圏域も75％以上と高い割合ですが、入院の方は中部・東部が90％超であるのに対して、豊肥では60.1％と大きな格差が見られます。

県当たりの医療施設数や看護師数は比較的多いのですが、実際には40もの無医地区があり、看護師数も地域偏在が見られるのが現状です。

大分県内で就業する看護師数は年々増加傾向にあり、人口10万人当たりの看護師の就業者数では、全国平均をやや上回っていますが、まだ、県内の需要数を満たすには至っていません。

高齢化などによって疾病が複雑化し、また療養場所も多様化していることで、介護関連施設や訪問看護ステーションなど、幅広い分野で看護師の活躍が期待されています。
同時に医療の高度化・専門化に対応できる知識と技術を持つ、質の高い看護師も求められており、大分県には平成29年11月現在で、認定看護師が173人、専門看護師が13人、認定看護管理者が26人います。

また、看護師の地域偏在を緩和するために、准看護師から看護師へのステップアップも推進されており、教育機会の拡大に向けて准看護師から看護師資格を取得する通信教育課程も県内に1校、設けられています。

大分県内で看護師確保の課題となっているのは、新卒看護師の県外流出です。平成24 年3月に卒業した看護師の県外就職率は38.4％で、全国平均の26.0％より高く、県内定着率の向上が求められています。また、訪問看護ステーションなどの小規模施設では離職率が高く、研修体制が整備されていないことも何らかの対策が必要と考えられています。

こうした現状を踏まえて、大分県では次のような看護師確保策を掲げています。

（１）人材の確保と資質の向上

• 看護師養成施設への運営費助成
• 准看護師の通信制を含む看護師養成課程への進学促進
• 卒業生の県内就職を促進する修学資金の貸付事業
• 看護師養成施設の看護教員の充足と再教育、実習指導者の養成
• 看護教員の県内養成を検討、一部通信教育の活用について検討
• がん看護など、専門領域の看護師養成研修などを推進
• 准看護師の進学の促進
• 地域の看護ネットワークによる確保・定着対策の充実

（２）離職防止の体制整備と魅力ある職場づくりの支援

• 訪問看護ステーション、診療所、福祉施設、看護教員の研修体制づくり
• 病院内保育に対する助成や各種支援の周知を進める
• 看護管理者研修などで組織の活性化を支援
• 職務に責任と自信を持てるよう院内教育研修体制の整備を推進
• 大学院修了者の県内就職促進と専門看護師等の活用を促進

（３）再就業の促進

• ナースセンター事業の充実・強化
• 未就業看護師の再就業を支援するための研修を充実
• 未就業看護師の再就業へ向けて啓発活動を推進

また、大分県看護協会では、看護師の教育研修や就職支援のほか、会員の福利厚生として放送大学の入学金半額、海外・国内旅行等の特別割引、美術館や各種店舗の優待、無料の法律・税務相談などのメニューを用意しています。

研修を充実するなど、看護師のキャリアアップを支援する体制づくりをしている大分県。認定看護師などキャリアアップを目指すナースにはよい県かもしれません。また、ニーズの高まっている訪問看護ステーションなど、病院以外の施設でも研修体制が充実していくので、今後いっそう働きやすい環境になることが期待されます。

大分には「大分の二度泣き」という言葉があるそうです。最初に来るときは「こんな田舎に住むのか」と悲しくて泣き、大分を離れるときは「こんなにいい所を離れるのは嫌だ」と泣くのだとか。

また、大分県では温泉PR動画の次のシリーズとして今度は「プレミアムフロイデー」を提案しています。県内には仕事帰りに公共温泉を毎日100円で堪能できる温泉地もあるので、チェックしてみてくださいね。

この記事をかいた人