看護師のための保健医療計画のミカタ No.29 「石川県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回はズワイガニで有名な石川県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、平成25年に策定された石川県医療計画をもとにお伝えします。
石川県の看護職員数の動向
加賀百万石を誇る石川県。北陸新幹線が開通し、都心からの交通の便がよくなって観光客も増加しています。兼六園や武家屋敷、ひがし茶屋街など歴史を感じさせる施設がある一方、金沢21世紀美術館や金沢駅のように現代的な一面も楽しめます。能登半島や白山など自然に親しめる地域も多く、冬はアウトドアスポーツが楽しめます。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は16,219人(保健師512人、助産師300人、看護師11,779人、准看護師3,628人)で、平成26年には、就業看護職員数は17,821人(保健師546人、助産師337人、看護師13,535人、准看護師3,403人)となっています。人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は1,170.8人で、全国平均855.2人よりも315.6人と大幅に上回っている状況です。
石川県の看護師需要
石川県では病院勤務の看護師が最も多く74.3%で、全国平均の72.8%をやや上回っています。一方、診療所に勤務する看護師は全国平均で12.4%であるのに対して8.8%と少なくなっています。
在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国平均3.3%に対し2.8%、介護保険施設等は全国平均6.5%に対し8.3%となっています。
全国平均と比較すると、病院や介護保険施設など、比較的大きな施設に勤務している看護師の割合がやや高いことがわかります。
県内の看護師数は、全国と比較すると高い水準にあるものの、医療の高度・専門化、在宅医療の推進などによって、量・質共に今後も需要が高まっていく見通しです。
看護師等学校養成施設の平成24年3月の卒業生の進路を見ると、63.7 %が県内、28.3%は県外に就業し、8.0%が進学・その他となっています。
県内に就業した看護師が、結婚や出産・育児などに対応しながら働き続けられるために、県では平成23年度から多様な勤務形態の導入など就労環境の改善への取り組みや、病院内保育所の整備・運営への支援を行い、働きやすい職場づくりを進めてきました。
また、再就業の支援も積極的に進めています。結婚・出産・育児などで離職し、再就業を希望する看護師のナースバンク登録を進めるほか、就業前の体験研修、就業後3カ月以内のOJT研修などの実務研修を、病院だけでなく診療所や介護福祉施設でも行っています。また、メールマガジンの配信や、最新の看護実践技術に関するセミナーを開催して就業意欲を向上させるなど、復職につなげる取り組みも行っています。
石川県では、がん、糖尿病の治療など医療が高度化・専門化する中で、看護師の質の向上が求められています。石川県では平成24年7月時点で専門看護師6人、認定看護師126人が登録していました。平成22年度から認定看護師の資格取得の費用を助成しており、平成29年11月現在では、認定看護師が214人、専門看護師が16人に増加。平成23年度からは、認定看護師を講師として特定の看護分野における研修も行っています。
なお、平成30年1月には県の基幹病院である石川県立中央病院が建て替えオープンし、高度先進医療などの分野が充実するため、高度な知識や技術を持つ看護師のニーズが高まるかもしれません。
一方、県内の医療施設や社会福祉施設では、看護師・准看護師の採用が予定人数に満たない施設や応募者が少ない施設も見られます。
医療圏別に人口10万人当たりの看護師数を見ると、県平均の1,317人に比べて、能登北部医療圏は1,015人、南加賀医療圏は1,170人と低い水準になっています。
特に能登北部医療圏は、実際に勤務している看護師の平均年齢が高く、看護師の中でも高齢化が進んでいるため、新人看護師の確保・定着が喫緊の課題となっているようです(平成22年現在)。
県では平成19年度から、看護学生に能登北部の公立病院への就業をうながす修学資金の特別枠を設け、平成24年度までの5年間で計87人に修学資金を貸与しています。
石川県の看護師確保に向けての取り組み
これまでもさまざまな取り組みを行っている石川県では、引き続き以下のような施策を掲げています。
1.養成の強化・拡充
- 看護師等学校養成所への支援
- 看護師確保が困難な医療施設等への就業促進のため、修学資金の貸与を実施
- 看護教員養成講習会・現任教員に対する研修の実施
2.定着の促進
- 病院内保育所の運営支援
- 多様な勤務形態の導入による働きやすい職場づくり
- 新人看護職員研修の強化
3.再就業の促進
- 再就業看護師への就業前の実務研修や就業後のOJT研修を実施
- 医療機関や福祉施設で研修を行い、本人の希望に沿った職場復帰を支援
- 定年退職した看護師などの再就業を促進
4.資質の向上
- 病院内の新人研修の強化
- 県立看護大学を中核機関として認定看護師取得への一貫した支援
- 専門看護師、認定看護師を講師として「専門的看護実践力研修」を実施
- 医療の高度専門化や在宅療養・訪問看護などに対応するための研修を実施
- がん・糖尿病・認知症などに対応できる専門性の高い看護師の育成・研修を実施
- 高齢者ケアや災害対応などのレベルアップ研修を実施
- 勤務環境の課題を解決するための調査研究を実施
5. 訪問看護の推進
- 訪問看護に携わる看護師の資質向上
- 訪問看護ステーションのネットワークづくりの推進
6.看護補助者の活用
- 看護職員の負担軽減のため、看護補助者の積極的な活用を推進
石川県看護協会では、看護師の養成に積極的に取り組んでおり、インターネットで講習のオンデマンド配信や蔵書検索ができる体制を整備しています。
助成が共働きするのが当たり前の土地柄だけに、保育園などの施設が充実している石川県。子育て中のナースにとっては働きやすい環境ですね。
専門看護師、認定看護師の育成に力を入れているので、キャリアアップを目指すナースにとっても魅力的な県かもしれません。再就業する看護師には、病院だけでなく診療所や介護福祉施設などに勤務する場合もしっかりと研修を行う体制が整っているので安心できそうです。
石川県の伝統工芸、金箔や加賀友禅を身にまといつつ、古の時代に思いを馳せ、時には
金沢21世紀美術館で最先端の現代アートに触れる、そんな休日も楽しそうですよね。
参考資料
石川県医療計画
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/iryou/support/iryoukeikaku/iryoukeikaku.html
平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf
石川県ホームページ
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/
石川県看護協会ホームページ
http://www.nr-kr.or.jp/