看護師のための保健医療計画のミカタ No.37 「山形県での看護師就業事情と、看護師確保対策を知る」
■作成日 2018/2/26 ■更新日 2018/5/9
元看護師のライター 紅花子です。
各都道府県の看護師確保状況をお伝えしているこのコラム、今回はさくらんぼで有名な山形県の看護師就業状況と同県の看護師確保対策について、第6次保健医療計画をもとにお伝えします。
山形県の看護職員数の動向
県内の85%を山地が占めている山形県。日本海側に広がる広大な庄内平野は、日本有数の米どころとしても知られています。
芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句で有名な立石寺や、名将・上杉謙信を祀る上杉神社など、歴史深い神社仏閣も多数。
東北で有数の広さでパウダースノーを楽しめる蔵王スキー場は「スノーモンスター」と言われる樹氷が有名で、蔵王温泉は200人入れるという大露天風呂など47もの源泉を有しています。
最上峡や天候によって水の色が変わる火口湖の御釜など自然を楽しむエリアのほか、明治時代に建てられた山居倉庫、銀山温泉などレトロな街並みも観光客に人気です。
山形県の保健医療的な特徴を見ると、親との同居率が高く、1世帯当たりの人数は2.94人と全国1位。
3世代同居世帯の割合は減少を続けていますが、平成22年で全世帯の21.5%を占め、全国1位となっています。
また、3大死因による人口10万人当たりの死亡率を見ると、悪性新生物が347.2で全国6位、心疾患は197.9で全国11位、脳血管疾患は165.2で全国2位と、全国と比較して高くなっており、県内の死亡総数の55.2%が、この3大死因に占められています。
最も多い悪性新生物は昭和58年から死因の1位となり、以後ほぼ一貫して増加傾向が続いています。
厚生労働省「衛生行政報告例」によると、平成22年12月末に県内で就業していた看護職員数は13,976人(保健師554人、助産師297人、看護師9,858人、准看護師3,267人)で、平成26年には、就業看護職員数は14,761人(保健師555人、助産師315人、看護師10,841人、准看護師3,050人)となっています。
人口10万人当たりの就業者数で見ると、看護師は958.5人で、全国平均855.2人よりも103.3人上回っている状況です。
県内全体としての看護師数は増加しているものの、地域によっては依然として看護師不足に悩まされており、さらなる看護師の確保が課題となっています。
山形県の看護師需要
山形県では病院勤務の看護師が最も多く73.4%で、全国の72.8%をわずかに上回っています。
一方、診療所に勤務する看護師は全国で12.4%であるのに対して10.1%と少なくなっています。
在宅医療関連を見ると、訪問看護ステーション勤務は全国3.3%に対し2.3%、介護保険施設等は全国6.5%に対し9.2%となっています。
全国平均と比較すると、病院や介護保険施設など規模の大きい施設に勤務する看護師が多いことがわかります。
県では、二次保健医療圏ごとの医療機関の機能集約と役割分担によって、医療の質の向上や財務内容の改善だけでなく医師や看護師の勤務環境の改善を推進しています。
庄内医療圏では、平成20年度に県立日本海病院と酒田市民病院が統合再編し、日本海病院に急性期機能を、酒田医療センターに回復期機能を集約しました。
この再編によって医療の質の向上と医師や看護師などの勤務環境の改善が実現し、県は今後も二次医療圏ごとに医療機能の分担と連携を促進していくようです。
他の二次医療圏ごとの状況を見ていくと、このようになっています。
村山医療圏
村山地域は、三次医療機関である山形大学医学部附属病院と県立中央病院のほか、基幹病院が集中する地域で、県内の一般診療所数、看護師数の過半数がこの地域で占められています。
特に東南村山地域は県内で最も医療体制が充実しています。しかしその一方、西村山地域と北村山地域では、医療提供体制の確保が懸念されており、中長期的な取組みを推進しています。
最上医療圏
最上地域は豪雪地帯で人口密度が県内で最も低く、人口当たりの医師数が県内で最も少なくなっています。患者の流出率が最も多い地域でもあります。地域唯一の基幹病院である県立新庄病院が改築に向けて始動しており、より幅広い診療や重篤な患者に対応できる体制づくりを目指しています。
置賜医療圏
置賜地域では、人口10万人当たりの一般診療所の数が他医療圏よりも少なく、二次医療を担うz病院に一次医療の患者も集中する傾向にあります。公立置賜総合病院と米沢市立病院が基幹病院としての役割を担い、他の病院と機能を分担する体制の整備を進めています。10万人当たりの看護師数が県内の4圏域の中で最も少なくなっています。
山形県の看護師確保に向けての取り組み
山形県では、県内で活躍する看護師を“一生涯応援”することを目指し、平成24年3月に「山形方式・看護師等生涯サポートプログラム」を策定しました。
同プログラムの内容は以下の通り。
「確保定着」のための施策
- ナースを目指す学生を増やすため看護師体験セミナーを開催
- 県内定着を図るため、看護師の職場説明会などを開催
「キャリアアップ」のための施策
- 認定看護師の資格取得を支援する看護師キャリアアップ支援事業
「離職防止」のための施策
- 新人ナース研修事業
- 病院内保育所運営費補助事業など
「再就業促進」のための施策
- ナースセンター事業による就業あっせん、Uターンなどの相談
- 再就業サポートガイダンスなど
また、看護師養成施設の定員増に対応できるよう、教育体制の強化に向けて看護教員養成講習会を開催しています。
平成27年9月に日本看護サミットで報告された同プログラムの取り組み結果を見ると、平成25年の離職率が全国平均7.5%なのに対して山形は4.0%(平成19年の9.2%から半分以下に減少)、ナースセンターの再就業率は全国24.3%に対し山形は37.6%(平成19年の21.6%から16.0%上昇)と、著しい成果が出ています。
同報告では今後の課題として、県外就業者のUターン促進、勤務環境改善とワーク・ライフ・バランスの普及、復職支援を挙げています。
なお、県内には平成30年1月現在で、認定看護師が153人、専門看護師が7人、認定看護管理者が39人います。平成27年度目標の認定看護師300人超にはまだ届いておらず、さらなるキャリアアップ支援が期待されます。
県独自のサポートプログラムによって、ナースの離職率が大幅に下がり、再就職も増加した実績のある山形県。医療者のワーク・ライフ・バランスを重視した施策のもと、ナースが働きやすい職場環境が期待できるのではないでしょうか。
休日を過ごすには、温泉やスキーの他にもユニークな観光地として、50種類以上のクラゲを飼育してギネス記録に認定されている鶴岡市立加茂水族館があります。同館ではクラゲラーメンやクラゲアイスなどの変わり種メニューを味わえるほか、リアルなクラゲの形を追求した「くらげこんにゃく」もみやげ物として好評だそうです。
また、「勇者ヨシヒコ」シリーズや「おくりびと」など数々の邦画やTVドラマのロケが行われた庄内映画村をはじめ、庄内地域にはさまざまなロケ地が点在します。ロケ地データベースをもとに、好きな映画やドラマのロケ地巡りをするのも楽しそうですね。
参考資料
山形県第6次保健医療計画
http://www.pref.yamagata.jp/kenfuku/iryo/plan/7090001hokeniryou-plan-6.html
平成22年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/10/dl/h22_toukeihyoitiran.pdf
平成26年衛生行政報告例(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/dl/toukei.pdf
山形県ホームページ
https://www.pref.yamagata.jp/
山形県看護協会ホームページ
http://www.nurse-yamagata.or.jp/