第7回:職場の信頼度=出世のバロメータ
■ 記事作成日 2015/2/26 ■ 最終更新日 2017/12/5
外来が21時まで…でもN先生でないとダメ!
元看護師のライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験と、さらに約10年の一般会社員経験の中で出会った人たちの中から、「出世する医師」について考えてみたいと思います。第7回目の今回は、「周りからの信頼度」です。
患者さんに好かれる医師はどんな医師か
当然ですが、患者さんは「自分の病気やケガを治してくれる医師」が好きです。もちろんそれには「痛くない」とか「苦しくない」とか、五感に関係する感情もあるとは思いますが、その上には「この先生なら安心」とか「この先生の言うことは聞こう」とか、人としての生き方に関するような感情もあります。
例えば糖尿病と診断された患者さんの場合、血糖値の変動だけをみるのではなく、眼や末梢血管の状態、腎機能や他の生活習慣病の心配もしてくれることを望んでいます。
両親が糖尿病だったり、比較的若いうちに発症する患者さんは、最初に診断された時に「大丈夫、一緒に頑張っていきましょう」といってもらえるだけで、その先生を信頼できるかもしれません。
高齢で発症する、それまでの生活習慣を変えるのはなかなか難しいですし、頭ごなしに「こうしなさい」「ああしなさい」といわれると、受診する気力も失せてしまう患者さんも多く見かけます。
その患者さんたちは結果的に、寿命を縮めることになっているかもしれません。それだけ「本当に信頼できる医師」に出会うのは、難しいことなのかもしれません。
外来診察が21時までかかるという伝説
では、私が過去に出会った医師の中で、ある意味伝説的な医師のことを思い出してみます。
その医師は内科系のN医師。実は、看護師としてお会いしたわけではありません。私がIT技術者だった頃、クライアントである病院様の1勤務医としてお会いしました。
当時の私は、地域医療に関わる仕事をしていました。
その関係でとある病院様へ出入りするようになり、「うちの病院で地域医療といえば、中心となるのはこの先生たち」と紹介された医師の1人が、N医師でした。
N医師を含め、数人の先生方のご意見等を伺う機会が何度もありましたが、N医師は非常に多忙で、病院内にいるはずのになかなかつかまらない。
最初は「避けられてる?」と思うこともありましたが、実情を伺うと、本当に診察などに追われて忙しい医師だということが分かりました。
やっと顔を出してくれたと思ったら、当初の予定の半分以下くらいしか時間がない。こちらもだんだんとその状況に慣れてきましたので、N医師に伺いたいポイントはがっつりとまとめ、超短時間でヒアリングするという技を身に付けました。
いろいろと取りまとめをして頂いた事務方の担当者の方いわく「N先生はねー、外来診療が21時までかかることがあるの。朝10時に受け付けしても、診察は夜8時。でもね、患者さんは遅くなっても帰らないの。みんなね『N先生じゃなきゃ嫌だ』っていうんだよね。」とのこと。
私は耳を疑いました。
例えば大学病院なら「3時間待ち3分診療」というのはあり得るかもしれませんが、ここは400床クラスの財団法人が運営する病院。すぐ近くには大学の付属病院もあります。
健診センター併設とか、地域がん診療拠点病院であるとか、DPCを導入しているとか、いくつかの特徴はあるものの、(失礼を承知でいえば)多くの地域に存在するよくある規模の病院だろうと思います。
それにも拘らず、N医師の受診を強く希望する患者さんは、夕飯時を過ぎても外来で待っているという現実。N医師の外来日は、事務方も夜勤看護師もみな、それなりに心構えをして勤務しているそうです。
そんなN医師の立場は、診療部長兼副院長。副院長という立場の方は数名いらっしゃるとのことでしたが、N医師は「最も忙しい副院長」だったのかもしれません。
後進の育成にも力を注ぐ?
N医師は若い頃、アメリカで研修を受けたことがあり、その当時のお写真を見せて頂いたこともあります。N医師はわりと小柄で優しい風貌なので、身体の大きなアメリカ人医師に囲まれた写真をみると、まるで少年のようにも見えました。
私がお会いした当時は40代半ばくらいだったと思いますが、その当時ですでに診療部長兼副院長。現在はさらに立場が上がっているようです。
当時もそうだったと思いますが、N医師のお名前は実にいろいろなところで目にします。病院のサイトはしかるべきですが、地域の医師に向けた講演会やセミナーの告知、学会の〇〇委員などのリスト、学会の座長などなど。
複数の専門医・指導医という資格を持ち、その地域で勤務する医師や大学医学部の学生へも「教育」という名の育成を行っているようです。
小耳に挟んだ情報では、N医師が自分から手を上げるのではなく、これらはすべて向こうからお願いされること。当然のことかもしれませんが、それだけ同じ医師の間でも信頼の厚い医師、ということなのだと思います。
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