第16回:OPE室看護師が好感を抱く医師像とは
■ 記事作成日 2015/9/22 ■ 最終更新日 2017/12/5
レベル別OPE室看護師が好感を抱く医師像
元看護師のライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で出会った、看護師に好かれる医師/嫌われる医師の人物像を振り返ってみます。今回は少し嗜好を変えて、“レベル別OPE室看護師が好感を抱く医師像”について振り返ってみます。
同じ“外科系”でも科によって学ぶことが違う?
病院の規模が大きくなるほど、OPE室看護師が関わる科は増えてくるが、科によって、いわゆる“基本的なことを学べるかどうか”という違いがある。例えば、“外科”はかなり幅広く手術を行う科だが、基本的に新人は外科の直接介助からスタートすることが多い。
器械の取り扱い方や、清潔・不潔の概念を学ぶには、非常に分かりやすいポイントがあるからだと思う。一方で、整形外科や脳外科は、疾患や術式、使用する器械にも特徴があり、それぞれを覚えるには少し時間がかかる。
ある程度、手術室看護師としての仕事が分かってくると良いのだが、新人でいきなり脳外科のマイクロ手術とかに付くと、まず1回では覚えきれない。
また、眼科・耳鼻科・形成外科なども機械に特殊性があるし、何よりも器械が非常に小さく、扱いが難しい。コッヘルとペアンの区別もつかない全くの新人であれば、いきなり眼科のマイクロ下手術につくのは、少し厳しいのかもしれない。
新人OPE室看護師が好感を持つ医師像とは?
前述の通り、新人は“外科の開腹手術”からスタートすることが多い。しかし手術件数は限られるし、必ずしも全員が“外科”からスタートできるわけではない。似た様な器械を使用することが多い、産婦人科や泌尿器科の開腹術なども、新人がOPE室看護師としての最初の経験を積む科といえるのではないだろうか。
さて、私自身が手術室看護師としてスタートした時、最初に直接介助に付いたのは、胃切除術だった。当時は現在ほどのディスポ製の吻合器ではなく、“ペッツ”と呼ばれる器械吻合器を使用していた。腸管同士の吻合は、もちろん手縫い。自動吻合器も存在はしていたが、使用する頻度はまだまだ少なかった。
その後、胃全摘、虫垂炎切除、ソケイヘルニア修復、マイルズ+人工肛門増設など、さまざまな経験を積んだが、1年目では“肝臓切除術”や“PD”には付かなかった。初めてこれらの直接介助に付いたのは、2年目が終わる頃だったと思う。偶々なのかもしれないが、同じ外科でも、難易度によって違いがあるようだ。
この時期のOPE室看護師は、これまでには知り得なかった(知っていたとしても“机上の空論”に過ぎない)知識と経験を、とにかく積み込む時期である。小さなことでも“なぜ?どうして?”と頭の中には常にクエスチョンマークが浮かんでいる。
そんな新人OPE室看護師にとって、“なぜ?どうして?”を解決するヒントは、先輩看護師だけではなく、医師との会話にもたくさん存在している。つまり新人OPE室看護師がもっとも好感を抱くのは、OPE室看護師からの質問に、快く、分かりやすく答えてくれる医師であるといえよう。
中堅OPE室看護師が好感を持つ医師とは?
中堅くらいになってくると、例えば整形外科なら“膝の全置換術”やら“脊椎固定術”など、借物器械が大量に届くような手術に付くことが多くなる。心臓血管外科の開胸術など、難しくかつ正確性とスピードが重要とされる手術にも付くようになる。もちろん、外科や産婦人科など、基本を学べる手術に付くこともあるが、直接介助として比較的難易度の高い手術に多く付くことで、学ぶことも多い。
この時期のOPE室看護師は、“どうすればさらにスキルアップできるか”ということを考えている。その一方で、新人への教育係なども担当しているため、自分が“分からない”姿を、新人の前で晒すことができない。そういった微妙な“プライド”を持っていることが多いと考えて欲しい。
そんな中堅OPE室看護師が好感を抱く医師は、やはり“仕事が出来る医師”といえるだろう。普段の姿はどうでも良い。しかし手術中の繊細な手の動きや、緊急時の対応の仕方など、OPE室看護師は結構、医師の挙動に注目している。その中で、安全に、正確に、よどみなく動ける医師に対しては、尊敬の念を抱くと言っても良いと思う。
ベテランOPE室看護師が好感を持つ医師とは?
OPE室看護師もベテランの域に達すると、より医師の“人とナリ”に注目している。手術の場面以外でも、人として安心できる性格であるのか、自分たちを含むOPE室看護師に不快感を抱かせないか、そういったところまで非常によく観察している。
もちろん、すべてのOPE室看護師が、目を皿のようにして、医師の言動に注目しているわけではないが、係長や主任、師長クラスになると、“○○先生が申し込んだ手術時間は信用できる”とか、“△△先生は感染予防策に問題アリ”とか、非常に細かいところまでよく観察していることもある。
そんなベテランOPE室看護師が好感を抱くのは、人当りが良い、人望が厚いなどのより人間的な部分で良い印象を与える医師といえる。若い研修医の先生のウデが良くないのは当たり前であり、それよりも挨拶がきちんとできるとか、看護師の言葉にきちんと耳を傾けるとか、いわゆる好青年であれば、冷たくあしらうこともない。
あるベテランのOPE室看護師は、若い医師が執刀する手術につくと、その医師が将来、出世するかどうかが、ある程度予測できるそうだ。それだけ、多くの医師を見て来たと言えるであろう。確かに、彼女のお眼鏡に叶った医師たちは、現在かなり出世している医師が多いようだ。
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