第18回:「出世できない医師」の共通点を考えてみた
■ 記事作成日 2015/10/29 ■ 最終更新日 2017/12/5
出世しない医師にはいくつかの共通点があることに気付きました
元看護師のライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験と、さらに約10年の一般会社員経験の中で出会った人たちの中から、今回は「出世しない医師」のポイントを考えてみたいと思います。
人が社会の中で出世するかどうか、それは仕事のデキにかかってきます。例えば営業職であれば「売り上げが高い人」が出世するかもしれませんし、IT技術者であれば「バグの少ないプログラムを納期までに開発できる人」が出世するように思います。
でも、現実はそうでもないようです。
いくら売り上げが一時的に高くても、いくらソツのないプログラム開発が出来ても、周りの人とのコミュニケーションや、課題解決能力の大きさも、出世するかどうかに関係してきます。
ここでは「出世できない人物像」から、出世しない医師像を掘り下げてみましょう。
ミスをした時、言い訳から報告を始める
医師だって人間です。たまにはミスをすることもあります。ミスの大きさに関わらず、上司にはきちんと報告しなくてはいけませんが、報告にもお作法はあります。
突き詰めれば自分の責任ではないかもしれません。しかし上司へ報告する時は、「何があったのか、その結果患者さんがどうなったのか」が先です。まずは患者さんの安全が最優先ですからね。その上で、「どうしてこうなったのか」という責任の所在を明らかにし、今後の対策を検討すべきではないでしょうか。
自分なりの治療方針が立てられない
患者さんにとっての主治医は決まっています。もちろん、診療全体でみればチームで関わるわけですが、患者さんの状態については、主治医が一番よく分かっているはずです。まずは自分なりの治療方針は考えておきましょう。
経験が少ない医師だとしても、それなりに自分の考えは持つべきです。その上で、上司に相談すれば、治療方針が変わることだってよくありますが、それは経験の差からくる見解の違いです。どちらがより良い治療法である、自分が納得いくまで、とことん上司と話合いましょう。
報連相が出来ていない
自分の言動、患者さんへの指導内容、看護師への指示内容など、すべてを事細かく報告・連絡・相談する必要はありませんが、今どのような患者さんを抱えているか、それに対してどのような方針で治療をすすめているのか、具体的にどのような処置や投薬を行っているのか、ポイントとなる部分は必ず上司へ報告します。
カンファレンスの時間でも良いですし、気になることがあった時に相談するのでも良いです。まずはポイントを整理して、上手くコミュニケーションをとることが先決です。
やたらと「正論」を通そうとする
医師に限ったことではありませんが、人が社会の中で上手く生きていくためには、臨機応変さも重要です。
よく看護師の中でも「マニュアルにないから」という言い訳をする人もいますが、大事なのは患者さんの安全や病態の改善であり、紙に書かれたマニュアルではありません。
正論から多少はずれていても、患者さんのためには必要とされる治療もあります。保険点数的に難しいことも多々ありますが、まずは上司との相談が必要なのではないでしょうか。あまりに見当違いなことでなければ、すべてが却下されるわけでは無いと思います。
むしろ「すべてが却下」される状況は、上司が人として問題があるか、あまりに見当外れな治療方針を立てる時でしょう。
最近知った知識をひけらかす(だけ)
医師という仕事上、新しい研究成果を知ることや、世の中の変化を知ることは重要です。数多くの論文を読み、1つの事に対して多角的な見方ができるように新しい知識を取り入れることは、いずれ患者さんへの治療にも役立つことは多々あります。
しかし、こういった新しい知識を、やたらとひけらかすだけという人は、なかなか出世できません。医師のウデとは、知識と経験が造り上げるものです。「アメリカでの治療成績は」とか「新薬が効くといわれるポイントは」だけを声高に言っていても、治療に役立てられなければ、単に知識をひけらかしているだけ、ウデがあがるとは言えません。
挨拶ができない
医師はとても多くの人とともに働いています。1日に何人もの患者さんとも接します。その中で「挨拶ができない」のは、コミュニケーション能力という意味では致命的です。
出会う人すべてに挨拶する必要はありませんが、顔を知っている職員にあった時、朝一番で病棟や手術室などへ入った時、患者さんと対面した時、病院から帰る時など、1日のうちで挨拶をするシーンはたくさんあります。仕事の内容全体からみたらとても小さなことですが、周りからの協力が必要な職業である以上、挨拶くらいはきちんとしましょう。
苦手意識をあからさまにする
医師だって人間ですから、得意な事と同様に、不得意な事だってたくさんあるでしょう。でも「●●が苦手」ということをあからさまにするのは、人としてどうでしょうか。
不得意なことや苦手なことも、診療の上で必要であれば、やらなくてはいけない時だってあります。今デキできない事なら、デキるようにする努力も必要です。
また、対人関係でもそうです。「この人(医師・看護師・患者さんなど)苦手」と思っていて、それがあからさまであればあるほど、周りとのコミュニケーションを取るのは難しなりますね。多少苦手と思う人でも、チームとして診療を行以上、そこには大人の対応が求められます。
飲みの誘いに絶対乗らない
忙しい仕事の合間の飲み会。行きたくない時だってありますよね。しかし、人とのコミュニケーションを円滑にしておくためには、時には(乗り気でなくても)飲み会には参加しましょう。
お酒が入ることで誰かの本音が聞けることもありますし、他科の医師や看護師と円滑なコミュニケーションが取れていれば、その後の診療で役に立つこともあるかもしれません。
飲み会すべてではなくても良いので、たまには参加して、周りとのコミュニケーションをとる様にしましょう。
いかがでしょうか。少し考えれば当たり前のことのように思いますが、医師というとても過酷な仕事をしていると、忘れがちになることもあります。上司に媚を売る必要はありませんが、周りと上手くコミュニケーションを取りながら「自分が仕事しやすい環境」を作るための努力も、出世する医師には必要なのかもしれません。
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