第13回:出世の道は人それぞれ
■ 記事作成日 2015/7/1 ■ 最終更新日 2017/12/5
「どんな医師になりたいか」がカギ
元看護師のライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験と、さらに約10年の一般会社員経験の中で出会った人たちの中から、「出世する医師」について考えてみたいと思います。第13回目の今回は、「出世をどう捉えるか」です。
医局で偉くなるか、市中病院で偉くなるか
医師が働く系統として大きく2つあることは、前回のコラムでも触れました。大学に残るか、市中の病院(民間病院)で勤務するかです。
大学に残る=医局内で偉くなれば、最終的には教授というイスを狙うことになります。しかし大学の場合、そのイスは途方もなく小さい。全体的な医師の数に対し、ほんの一握りしかイスに座ることが出来ません。
そこにたどり着くまでの、途中の段階ですらイスは少ないのが現実です。どうやったらイスに座ることができるのか。大学の医局の場合は、やはりどれだけ優れた研究を行うか、というあたりがポイントになるようです。
医師としてのウデとか患者さんの評判とかは二の次。もちろん、これらも優れた評価があるに越したことはないのですが、それよりももっと重要なのが、「将来的な医療にどれだけ貢献できる研究ができるか」という点です。
一方、市中病院で偉くなるためには、医師としてのウデ、患者からの評判といった、一般人から見ても分かるような「現在の医療に対する優れた医師」としての評価が必要となります。
どんな分野でもそうですが、医療という分野は特に「この先もずっと進化し続けること」が重要視される分野です。そのため、「現在の状況で優れたウデを持つ」ことと「将来的な進化につながるアタマを持つ」ことの、2つが要求されます。
1人がこれを全て賄うのは、スーパーマンでも難しい。だからこそ、医局vs市中病院という、構造の違いが生まれてしまうのではないでしょうか。
「年齢=給与」ではない現実
例えば大学の医局にいる場合、そこそこ偉くなって、給与が1,000万クラスになるのは、一般の社会人よりも遅くなることが多いようです。
知人のA医師は、医局に入って15年あまり。40歳代に突入して数年経ちますが、大学からの給与は未だ700万円台。年収1,000万円を超えるまでには、まだまだ先は長いようです。一般サラリーマンの平均年収からみれば随分高いように見えますが、医師という職業の中では、まだまだのようです(本人談)。
別の知人ですが、大企業に努めるBさんという人がいます。年齢はA医師と同世代、社会人になってからの年数はA医師と同じです。しかしBさんの場合は、40歳になるころには部長職についており、年収も1,000万円を超えています。Bさんは優秀なので、出世が早いうちから出世コースに乗っているという部分もありますが、結構違いますよね。
また別の知人で、40代半ばのC医師がいます。C医師は30代半ばの頃に医局を離れ、とある市中病院に就職しました。本人曰く「最初はぺーぺーだった」そうですが、とんとん拍子に出世し、現在は●●科部長。年収は40代に入ってすぐに1,000万円を超え、アルバイト勤務も含めると、1,500万円を超えています。
この3人はほぼ同じ年齢で、社会人経験年数が同じです。それにも関わらず、給与という点では大きな違いがあります。
この先どうなるかはまだ分かりませんが、
- A医師:教授まで行ければ2,000万円クラスも夢ではない
- Bさん:恐らくこの辺りで打ち止めになるかも
- C医師:現状維持のまま続けば良いなぁと感じているようです。
肩書と給与なら開業医も捨てがたい
ところで、知人にもう1人、やはり同世代のD医師がいます。D医師は3代続く開業医ですが、D医師が副院長として開業医になった頃にクリニックを移設。それまでの自宅続きの古い建物から、広めの駐車場を完備し、最新の医療器械を導入したクリニックへと変わりました。
D医師とその父はウデが良くて患者さんの数も多かったのですが、新設されたクリニックの評判も良く、新規患者さんもかなりの勢いで増えたそうです。
それまではD医師の父が1人で切り盛りしていたようですが、D医師と2人体制になったことで、患者数は2.5倍になり、年商も年収も増えました。
D医師は「いわゆる先端医療は出来ないけど、クリニックでできる最高の医療を提供したい」と考えており、結果的にこうなったそうです。そんなD医師の年収は2,000万円に届きそうな勢い、とのことです。
現在のD医師の肩書は「副院長」ですが、将来的には「院長」になります。医療の世界全体から見ると、決して先端を走っているわけではありませんが、こういった生き方も「出世」なのではないでしょうか。
今回は3名の医師と1人の一般サラリーマンを比較しました。医師であることを前提とすると、医局に残って教授を目指すか、市中病院で部長や院長を目指すか、あるいは「自分の考える医療」を提供するために開業するのか。その世界はかなり幅が広く、出世の道も様々なようですね。
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