第8回:看護師に好かれる女性医師 R医師
■ 記事作成日 2015/3/19 ■ 最終更新日 2017/12/5
看護師にも好かれる女性医師の秘密…
元看護師のライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験と、さらに約10年の一般会社員経験の中で出会った人たちの中から、「出世する医師」について考えてみたいと思います。看護師からも患者さんからも人気の高い女医、R医師です。
看護師はまだまだ女性の世界
ここ数年、男性の有資格者の数は徐々に増えてきてはいるが、看護師の世界はまだまだ女性の方が圧倒的に多い。中規模や大規模クラスの病院や、男性患者さんが多くなる傾向のある科(例えば泌尿器科とか)に力をいれている病院とか、男性看護師の数が1割を超えるような病院は、限られている。
実際に勤務したのはいずれも手術室だったが、一緒に働いたことのある男性看護師さんはたった1人。実際、男性看護師さんが担当できない科の手術もあったので、やはり男女平等になるのは難しい世界なのであろうと思う。
そういった理由もあり、手術室はまさに女の園。そんな中でも手術室ナース=女性から人気のあった女医さん、R医師がいた。今回はR医師の人となりを振り返ってみる。
若いけれどウデは確かな女医さん
R医師は耳鼻咽喉科医。年代的には30代前半だし、立場的にはいわゆるヒラなのだが、実によく働く医師だった。
その病院には当時、耳鼻咽喉科医は最大で3名しかいなかった。部長とR医師ともっと若い医師。仮にR医師より若い医師をI医師とするが、R医師はI医師よりもずっと「働いてるなー」と思わせる人物だった。
当時の部長曰く「R医師は経験年数以上のウデがあるから、ついつい任せちゃうんだよね」とのこと。
実際、R医師が執刀する手術件数の方が、部長医師が執刀する件数よりも多かったし、術式によっては1人でスイスイと手術をこなす。
手術時間も比較的早い。例えば鼻腔の中を映し出しているモニターを見ていても、病変部の削除もサクッと行うし、止血も上手い。“鮮やか”という言葉がぴったりな手術だったと思う。
ところで、R医師はとても小柄。身長は150㎝を少し超えたくらいだし、鼻腔の手術には必ず足台が2台必要。当然、手も小さいくてかわいらしい。
でも手術のウデは確か。ある意味、ギャップを感じさせる風貌ではあるのだが、それもまた“かわいらしいけど立派な女医”と思える要因だったのかもしれない。
患者さんからの人気が高い理由
R医師の病棟や外来での評判を聞いてみると、患者さんからも人気が高い医師だったそうだ。まず、入院患者さんのところには1日1回以上は必ず顔を出す。
耳鼻咽喉科の場合、小児の患者も多い傾向があるが(特に夏休みなどは「小児科病棟か?」というくらい、児童の入院患者がいるらしい)、子ども達からも人気。「R先生~♪」と懐かれているようだ。
外来の診察室は2つあるが、R医師はいつも同じ診察室を使うということもあり、診察室にはアンパンマンのイラストやカレンダーが飾られている。
子どもを懐かせる小道具として、たくさんのぬいぐるみも常備されている。初めて受診する子どもは特に、鼻や耳に器具を突っ込まれるので、大抵は泣く。そんな時にぬいぐるみという小道具が役に立つのだそうだ。
実際、私の子どもがまだ小さい時、耳鼻咽喉科に入院したことがあるが、その時の主治医はR先生にお願いした。子どもが女の子だったせいもあるかもしれないが、とにかく子どもの扱いが上手い。
ずっと「痛くないよー、すぐ終わるからねー、ほんのちょっとガマンねー」と話しかけながらサクッと処置が終わる。子どもはびっくりしている間に終わったので、ほとんど泣かずに診察室を出る時には「先生、ありがとう」といえた。
大人の患者に対しても同様に、必要な処置はサクッと終わるし、痛みも少ない。内服治療も行うが、“効く薬を出してくれる”という評判だ。
とある成人患者さんに聞いてみたところ「他の耳鼻科クリニックでずっと治らなかった副鼻腔炎が、R先生のところに通い出したらすぐに治まった。今は薬も無くなったし、すごく楽になった」だそうだ。
“優しさ”と“芯の強さ”を併せ持つ
R医師は基本的にとても優しい。声を荒げるところを見たことが無い。恐らく本人的にはとてもご立腹な出来事なのだろうが、それを話しているのを聞いていても、怒っているように感じられない。
何故だろうと考えてみたが、それは恐らく彼女の“声”にある。
R医師の声はとても高い。音域でいえば間違いなくソプラノ。良く通る声なのだが、とげとげしさが全くなく、普段から嫌味もいわないので、聞いている方も安心できるのだ。
その反面、R医師はとても強い“芯”を持っている。耳鼻咽喉科医という職業を愛し、常に「この患者さんにとって一番良い方法は何か」を考えている。
例えば夕方に“鼻出血が止まらない”という患者さんが来院したことがある。昼間に来れば良いのにとか、明日の朝じゃダメなのかと考えるかもしれないが、患者さんの話をよく聞いてみると、前の晩は鼻出血が気になって眠れなかったそうだ。
当日もタラタラと出血は続くものの、どうしても抜けられない仕事があって鼻に栓をしてしのいでいたらしい。
R医師が外来で診察しそのまま緊急手術になった。R医師は手術直前、患者さんに「これで今日は眠れるからね」と話しかけていたが、患者さんは心の底から安心したようだ。
手術室にいると、いろいろな医師と接することがあるが、手術中もそれ以外の時も全く人柄が変わらず、サクッと手術ができる医師は珍しいかもしれない。R医師には、これからも多くの患者さんの“良い先生”でいてほしいと思う。
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