第10回:出世のカギは“タイムマネジメント能力“
■ 記事作成日 2015/5/7 ■ 最終更新日 2017/12/5
医師の出世欲と時間マネジメント能力の密接関係
元看護師のライター紅花子です。このコラムでは、私の約10年の看護師経験の中で出会った、看護師に好かれる医師/嫌われる医師の人物像を振り返ってみます。10回目の今回は、出世欲」です。
医師の出世には2系統
医師が働く系統としては、大きく2つあると思います。1つは大学病院で働く場合、もう1つは民間病院で働く場合です。もちろんその他の働き方、例えばフリーの医師になる、あるいは国境なき医師団などのようなNPO団体に所属して世界を飛び回る、という働き方もあります。
しかし医師の多くは“病院”などの医療機関に勤務しています。
大学病院に在籍していると、もちろん大学にもよりますが、概ね次のような順で出世していくことになるようです。
研修医
↓
医員あるいは助手
↓
助教
↓
講師や准教授(この辺りで医局長とか病棟医長なども付いてくることもある)
↓
●●つき教授(特任教授や病院教授など)
↓
教授
↓
医学部長あるいは病院長(この辺りで“科”が外れる)
大学の□□科医局に在籍していても、例えば医員や助手くらいまでは、系列病医院や提携先病院への出向という形で、ローテーションの中に組み込まれてます。
これも医局によってかなり差がありますが、概ね講師や准教授あたりになると、大学病院から動かないケースが増えるようです(アルバイトは別ですよ)。
一方、民間病院では、概ね次のような順で出世していきます。
研修医
↓
医員
↓
医長あるいは診療部長(この辺りは、●●科長や医長など病院による)
↓
副院長
↓
院長
△△病院のみに在籍している医員というのは比較的少なく、大抵の場合は大学の医局との繋がりでローテーションしている医師となります。
診療部長クラスになると大学の医局との繋がりはあるものの、その病院から動かなくなることが多いようです。
大学病院での出世は“欲”がなければ難しい?
一昔前は、大学病院の中でポーンと出世することは難しく、上のポストに空きが出なければ出世しない、という世界でした。
現代では、もちろん●●科教授になるためにはそのポストに“空き”がなければ難しいですが、講師・准教授くらいまでは同じ医局の中でも複数存在します。
ある程度人数の制限はあるかもしれませんが、助教くらいまでは学位(医学博士)が取れれば上がっていけるようです。
大学病院ではこの“学位”が曲者かもしれません。
学位を取るためには、医学雑誌などに自分が中心となって行った研究の論文が掲載される必要があります。大学の中には教授会なるものがあり、ここを論文が通過すれば、それなりに学位を取ることができます。
つまり、普段の診療業務のほかにも論文に掲載されるような“研究”を行い、それが第三者である“医学雑誌”にも認められて初めて上にいけるわけです。
どんなにウデが良くても、患者さんから好かれていても、周りの医師・医療スタッフからの信頼が厚くても、それだけでは出世できないのが現実なのです。
そこに必要なのはその医師なりの“出世欲”。
既存の研究とは違うテーマで研究を行い、それなりの成果を出し、普段はあまり使わない英語での論文を書き、それが第三者(医学雑誌)に認められ、さらに教授会でのお墨付きを頂く。
この過程には数年を要することもありますし、医学雑誌に掲載されたからといって必ずしも教授会でのお墨付きを頂けるわけではありません。
ナースの世界から見ると、なんて遠い道のりなのだろうかと思います。
大学での“出世欲”=タイムマネジメント能力?
では“出世欲”を現実のものにするために必要な力とは何でしょうか。
普段の診療業務に加えて研究を行い、論文を書きあげるために必要なのは“時間”です。
1日は24時間しかないわけですから、いつどのタイミングで研究テーマを決め、協力者を募り、研究を行い、論文を書き上げるか。まさに時間との闘いになります。
普段の診療を行うためにも、他人の論文を読んだり、学会に参加したり、研修会に参加したり、“勉強”に当てる時間が必要です。
その上でさらに自分が中心となった研究を行うわけですから、時間がいくらあっても足りません。そこで重要となるのが、タイムマネジメント能力なのです。
上に行こうとすれば、時間をどうやりくりするかがポイントとなりますので、趣味に割ける時間はどんどん減っていきます。
勤務時間以外にも病院や医局に残って研究する、その時間は無償。それなら、アルバイトをした方がよっぽど儲かります。こんな背景もあり、最近はあまり出世欲の無い若い医師も増えているようです。
日本の医師免許があれば、日本中どこでも医師として働くことは出来ますし、ウデが良ければフリーの医師としてそれなりに報酬を得ることができます。
民間病院に就職すれば、自分の希望とは無関係に全国各地を飛び回ることもなくなりますし、定年まで安定して働けます。
とはいえ、民間病院だって当然、院長まで上り詰めるには“タイムマネジメント能力”は必須。普段の診療の他にも、勉強することは山ほどあります。若い医師への指導も行いますし、学会や研修会にも参加しなくては最新の知見を得ることはできません。
診療に対する知識や経験以外に必要となる“タイムマネジメント能力”。これが“出世する医師”のカギかもしれません。
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