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第14回:保健医療計画からみる新潟県の姿

新潟県の医師転職事情と未来~保健医療計画と地域医療から読む

 

■ 記事作成日 2016/11/29 ■ 最終更新日 2017/12/6

 

新潟県の保健医療計画

新潟県の医師転職事情と未来~保健医療計画と地域医療から読む

 

元看護師のライター紅花子です。「保健医療計画からみる都道府県の姿」というこのコラム、今回はコラム初の中越地方である新潟県の医療の現状についてお伝えしていきます。

 

新潟県の現状を分析

 

新潟県は中部地方の日本海側に位置し、国土面積は12,584.10km²と全国で5番目に広い国土を持った地域となります。

 

他の都道府県よりも海岸線に長く沿ったエリアを含んでいることから、海/山の両方を有しており、地域によって特産物が異なることが特徴かもしれません。

 

また、新潟県はその特徴的な地形を生かし、農業と水産業が活発な地域です。特に稲作は、全国的にも有名な米どころ。

 

新潟のブランド米などもたくさん販売されています。平成25年産米の作付面積は119,700ha(もち米、酒造好適米等含む)で、収穫量は664,300tとなり、いずれも都道府県別では全国第1位の収穫量を誇っています。

 

新潟県の平成27年10月現在の総人口は2,305,098人、全国総人口の1.82%を占めています(全国で15番目に人口の多い県です)。しかしそんな新潟県の人口は、平成9年より減少傾向となっています。

 

その減少幅は年々増加し、少子化や死亡率増加による自然減少に加え、県外への転出による社会減少が目立つようです。

 

さらに、総人口に占める年少人口の割合も減少、過去最低記録であることに加えて、老年人口の割合は30%に達して過去最高を記録しています。生産年齢人口も年々減少していますので、着々と少子高齢化が進行していることが伺えます。

 

新潟県内の人口分布をみると、県庁所在地である新潟市の人口が最も多く、次いで長岡市、上越市と、新幹線などの交通網が発達している都市に人口が集中しているようです。

 

新潟県の人口動態は

 

それでは、新潟県の人口動態に関するデータをいくつか見ていきたいと思います。

 

平成27年の合計特殊出生率は1.47であり、その年の全国平均値である1.46をわずかながら超えているという結果になりました。しかし、やはり若い世帯の転出率が増加していることも一因となっているのか、合計特殊出生率の増加率は昨年よりも増加はしているものの、減少傾向で推移しています。

 

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図1 新潟県 人口の推移

 

一方で高齢化率は平成27年の時点でおよそ30%となると予測されており、関東圏と比較すると、高齢化率のスピードが速いことが分かります。

 

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図2 新潟県 高齢化率と人口増加率の推移

 

続いて死亡に関するデータを見ていきたいと思います。

 

平成26年の死亡者数は28,316人となり、人口千対の死亡率は12.3、全国平均の人口千対脂肪率が10.1ですので、全国的に見るとやや高めの値であるという結果になりました。

 

死因は悪性新生物が最も多く、人口10万対で339.4、続いて心疾患が181.9、脳血管障害が142.5となり順位は前年と変わりないようです。尚、全国平均でみると、3位が肺炎、4位が脳血管疾患です。新潟県も、3位と4位が逆転する地域といえそうです。

 

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図3 人口10万対死亡率 全国と新潟県との比較

 

今回は、新潟県の「第5次保健医療計画」のほかに、「平成23年 人口動態調査」のデータを元に作図しましたが、これをみると、不慮の事故よりも老衰、肝疾患や慢性閉塞性肺疾患(COPD)よりも認知症による死亡が多くなっています。

 

この辺りも、高齢化が進む地域の特徴なのかもしれません。

 

新潟県の医療状況はどうなっているのか

 

次に新潟県の受療率を見ていきましょう。

 

新潟県の平成26年の受療率、入院が、全国平均が人口10万対1,038に対して新潟県は1,051となり、全国平均よりも入院率が高いことが分かります。

 

一方で外来受療率をみると、全国平均が人口10万対5,696に対し、新潟県は5,634、ほぼ全国平均と同等の数値になっています。

 

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図4 外来・入院受療率 全国との比較

 

外来受療率では、循環器系を受療する人の割合が高く、続いて腰痛などを主訴とした筋骨格系疾患によるもの、さらに呼吸器系疾患による受療といった慢性疾患による受療率の割合が高くなっています。

 

一方で新潟県の入院受療率は、精神および行動の障害によるものが最も高く、次いで循環器系疾患によるものが高いようです。

 

また、後期高齢者が1人当たり使用する医療費は、全国平均の90万5千円を大きく下回る、73万4千円であることから、後期高齢者の受療率は全国に比べて低めであり、それが新潟県の受療率にも反映されている可能性が考えられます。

 

しかし、高齢者が利用する介護保険費用は全国平均を大幅に上回り、約30万円であるということからも、新潟県の高齢化の現実を伺い知ることができます。

 

尚、二次保健医療圏ごとに見ていくと、入院受療率は佐渡圏域が最も高く、次いで、魚沼圏域となります。外来では、下越圏域が最も高く、次いで県央圏域という結果となりました。

 

新潟県の保健医療圏はどうなっているか

 

新潟県は日本海に帯びるその地形から、地方も大きく分かれ、それぞれ特色がありますが、医療圏も、一次医療圏、二次医療圏、三次医療圏にそれぞれ分かれ、様々な特色、問題点があるようです。二次医療圏はその地形を考慮した7の医療圏に分類されています。

 

新潟市、新発田市の都市部が2都市含まれる新潟医療圏は医療機能、医師が集中し、県平均、全国平均を上回る一方、他の地域では、特定機能を持つ医療機関が整備されていない圏域があったり、医師数にも大きな差があり、地域における医療機能(医師)の偏在が、県全体の課題として浮き彫りになっています。

 

では、医療機能や医師が足りていない圏域はどうするのか。受け入れ先として挙がっているのは、新潟市と長岡市の医療機関のようです。

 

特に周産期医療に関しては、ハイリスクの出産が予測される場合、新潟市や長岡市内の医療機関を利用することが多くなるようです。

 

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図5 新潟県の医療機能は、新潟市と長岡市に集中

 

また、新潟県の東部は山間地帯ですので、冬の期間は積雪が多くなります。日本有数の豪雪地帯でもあります。そのため、三次医療機関に搬送するまでかなりの時間が必要となることも、課題となっているようです。

 

さらに、佐渡医療圏はまったくの離島です。三次医療圏への搬送時間だけでなく、慢性的な医療資源の不足も課題となっているようです。


新潟県の病床数とこれから

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新潟県から日本海を望む

 

新潟県内の各保健医療圏における既存病床数と基準病床数について見ていきます。

 

平成23年3月の公開(平成25年に一部改正)された「第5次保健医療計画」によると、既存病床数が基準病床数を上回っている医療圏は新潟医療圏のみです。その他の圏域では、平成28年度末を目途に、増床させていきたい考えのようです。

 

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図6 保健医療圏ごとの病床数の推移(予測)

 

他都道府県を見ても、各保健医療圏の既存病床数が基準病床数を下回っていることは大変珍しい状況になっています。これは、何を意味しているのでしょうか。

 

少子高齢化の進行度合いが関東圏よりも早い新潟県ですので、今後、増床させたい圏域で、人口が大きく増加することはあまり予測ができません。これまでの病床数の推移をみても、全体的にはここ数年、病床数は減少傾向にあるといえます。

 

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図7 新潟県 病病数の推移

 

つまり、今後増床させたい圏域では、今現在の病床数が足りていないことを表していると推測できます。新潟県の医療の偏在、医師不足の状況が浮き彫りとなっているのかもしれません。

 

また、入院受療率が高い「精神分野」の病床数は、既存病床数が基準病床数を大幅に上回っています。これらの病床も今後、増床を図ることは難しいと思われます。

 

新潟県内にはどのような機能を持つ医療機関があるか

 

三次医療圏は医療法施行規則第30条に則って分類される「特殊な医療を担う医療機関」です。新潟県ではこの規則に則りつつ、第二次医療圏では賄いきれない精神分野の救急医療や周産期医療、救命救急分野に力を入れています。

 

特に、災害医療分野では、2004年の新潟県・中越地震を教訓として、基幹災害拠点病院の充実を図るよう取り組んでいるようです。

 

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図8 新潟県内の特定の医療機能を有する病院数

 

また、二次保健医療圏では

 

  • 精神科分野の外来の促進
  • 小児医療モデル地区である長岡医療圏に習った小児医療の発展
  • 魚沼、県央医療圏などの救急医療の発展

 

といった、医療の偏在化を解消するための取り組みが中心なっているようです。

 

特に、へき地の医療対策には力を入れており、へき地への診療所の開設や、離島への遠隔治療、広大な土地と自然環境や気候でも迅速に三次医療へ結び付けられるようドクターヘリの励行などを進めています。

 

新潟県内の医師数と今後の確保対策

 

平成22年現在の医師数は人口10万人あたり191.2人。全国平均230.4人と比べるとやや下回り、全国42位となっています。

 

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図9 新潟県 医師数の推移

 

新潟県は地域の医療偏在が深刻です。医師数が全国平均を上回っているのは新潟県域だけであり、他圏域は全国平均を大幅に下回っています。

 

特に、外科、産科・産婦人科、麻酔科の人口10 万人当たり医師数は、それぞれ全国順位第46 位、第38 位、第44 位と、特定診療科においての医師数不足が顕著に表れています。

 

これを受けて医師確保のための施策を総合的に推進、医師の養成、病院勤務医の不足の問題に分けて対策をしています。その具体的な内容として、臨床研修医の確保、県外からの医師を招へい、勤務医の負担軽減などに分けています。

 

特に、医師の養成には以前より力を入れており、新潟大学医学部の定員増加を、国に対して求めるなど尽力してきました。

 

さらに、医学生の養成および地域医療従事医師の確保として、新潟大学の「医学生の養成及び地域医療従事医師の確保地域枠(平成21 年度から5人、平成 22 年度から 10 人)」や、順天堂大学医学部新潟県枠(平成22 年度から2人)に対する修学資金貸与制度も実施しているようです。

 

今後は、医師の定着を図るためにも、医師が魅力的と感じるような病院を作っていくということを掲げています。女性が働きやすい職場の見直しや勤務医の負担軽減など、医師の確保だけでなく現在勤務している医師の負担軽減も対策として明記されています。

 

ここまでは、医師の偏在が課題となっていれば、具体的な数値は違うことがあっても、多くの都道府県で実施されていることかもしれません。しかし新潟県は違います。

 

今回、参考としているのは「平成23年3月公開 第5次新潟県地域保健医療計画(平成25年 一部改正)」のため、これらの資料が公開された時点ではまだ「予定」となっていたことがあります。

 

新潟大学による「新潟大学医歯学総合病院魚沼地域医療教育センター」の設置です。ここは、「地域医療人の育成に向けた教育・研修体制 の充実を図り、全国から地域医療を志す医師の集積を目指す」とされており、実際に平成27年6月に新潟県南魚沼市に「新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院」としてオープンしています。

 

立地としては、魚沼保健医療圏のほぼ中央あたり、南魚沼市と魚沼市との市境にあります。全454床(一般病床400床(救命救急センター14床を含む)、精神病床50床(閉鎖病棟)、感染症病床4床)の病院のようです。

 

平成25年時点での保健医療計画によると、魚沼医療圏内には、救急告示病院、災害拠点病院、へき地医療拠点病院しかなく

 

  • 救命救急センターが無い
  • がん医療をはじめとする高度医療に対応できる医療機関が少ない

 

という問題がありました。総合周産期医療も同圏域内で対応できる医療機関がない、小児救急医療も難しい、という状況でしたが、これらも一気に解決に向かいそうです。特に魚沼圏域の住民からはまさに、待ち望まれた病院の誕生なのではないでしょうか。

 

新設の病院ですから、当然ながら非常にキレイな病院です。いわゆる総合病院にある内科系・外科系の各診療科の他に、総合診療科、救命救急・外傷センター、放射線治療科、地域周産期母子医療センターや、歯科口腔外科などもあります。

 

DMATや臨床研究センターもあるようです。表立っての「医師募集」は無さそうですが(新潟大学の関連病院ですし)、全国でも数少ない、新しい地域中核病院で歴史を作り上げるというのも、医師の生き方として検討の余地があるのではないでしょうか。

 

まとめ

新潟県の医師転職事情と未来~保健医療計画と地域医療から読む

佐渡の二つ亀(佐渡市)

 

医師や医療資源の偏在が著名であるものの、病床数が基準より少ないため、まだまだ病院丸ごとの対策が期待できる新潟県。引き続き新潟の今後に注目です。

 

 

参考資料

 

新潟県第5次保健医療計画 
http://www.pref.niigata.lg.jp/fukushihoken/1302125633809.html

 

新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院
http://www.uonuma-kikan-hospital.jp/

 

新潟県統計データハンドブック
http://www.pref.niigata.lg.jp/tokei/1356827638996.html

 

新潟県福祉保健年報
http://www.pref.niigata.lg.jp/fukushihoken/1356838569588.html

 

新潟県保健医療圏 
http://www.pref.niigata.lg.jp/fukushihoken/1302125633809.html

 

厚生労働省 人口統計月報
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai15/dl/gaikyou27.pdf

 

厚生労働省 平成26年受療率
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf

 

総務省統計局 人口推計(平成25年10月1日現在)結果の要約
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2014np/

 

厚生労働省 受療率
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/14/dl/02.pdf

 

厚生労働省 医療計画
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/

 

国立社会保障・人口問題研究所 地域医療計画
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/sakuin/kikan/..%5C..%5Cdata%5Cpdf%5C00330406.pdf

 

データ参照元

 

統計局 平成26年医療施設(静態・動態)調査 下巻 年次 2014年
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001141081

 

同上 平成25年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001126654

 

同上 平成23年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001102729

 

同上 平成20年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001060675

 

同上 平成17年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001060675

 

同上 平成14年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048369

 

同上 平成11年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048408

 

同上 平成8年医療施設(動態)調査 下巻 年次
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001048434

 

平成12年 医師・歯科医師・薬剤師調査
医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/00/tou05.html

 

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/00/tou06.html

 

平成16年 医師・歯科医師・薬剤師調査
医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/tou12.html

 

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/04/tou13.html

 

平成20年
医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/08/dl/toukei02.pdf P1

 

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/08/dl/toukei02.pdf

 

平成24年
医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/12/dl/toukeihyo.pdf P19

 

人口10万対医師数
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/12/dl/toukeihyo.pdf P21

 

この記事をかいた人


紅 花子

正看護師歴10年、IT技術者歴10年という少し変わった経歴をもつ。現在は当研究所所属ライターとして、保健医療福祉分野におけるライティング業を生業としている。この分野であれば、ニュース記事の執筆・疾患啓発・取材・書籍執筆・コンテンツ企画など、とりあえずは何でも受ける。東京都在住の40代、2児の母でもある。好きなマンガは「ブラック・ジャック」。

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