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【医療ニュースPickUp】2014年12月26日
医療にまつわる気になるニュースを当研究所独自の目線で掘り下げて記事にしている「医療ニュースPickUp】。このコーナーでは、まだ大手マスメディアが報道していない医療ニュースや、これから報道が始まるだろう時事的医療ニューストピックを、どこよりも半歩素早く取材・記事化していくコーナーです。
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野菜中心の食事が日本人男性を救う?
2014年12月22日、独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、東京都中央区、略称:国がん)は、野菜と果物の摂取とい胃がんとの関連性についての研究結果を公表した。
この研究は、日本の4つのコホート研究(2つのコホートから成る多目的コホート研究(JPHC Study)、宮城県コホート研究、JACC研究)のデータを利用してプール解析を行い、191232人のデータから、野菜・果物の摂取量と胃がん発症リスクとの関連性を分析したもの。
その結果、日本人全体でみると胃がん全体での発症リスク低下傾向は認められながらも、有意性を見出すには至らなかった。しかし日本人男性と下部胃癌発症リスクについては、発症リスク低下の可能性が示唆されたという。
これまでの様々な研究では、野菜・果物の摂取は胃癌予防に効果的であるという症例対象研究が多く存在する。食事と癌の関連性を評価する世界がん研究基金(WCRF)や、米国がん巻きゅ教会(AIRC)のプログラムでも、野菜(非でんぷん質のもの)と果物の摂取が胃癌予防に効果的であることはほぼ確実と評価されている。
しかしその後の欧州やオランダ、中国、米国などの研究では結果にバラつきがあり、胃癌の組織別分析まで踏み込んだ研究はあまり行われていなかった。
今回の国がんの研究では、胃癌全体および、胃癌の部位別・組織別・性差などについても分析が行われている。
胃癌全体のリスクとしては、男女ともに野菜・果物の摂取量と発症リスクとの関連性は特に認められなかった。
しかし、部位別・組織型別・性差での分析を行ったところ、下部胃癌の発症において、野菜全体の摂取量が最も多い群では、最も少ない群と比較すると、胃癌発症リスクが0.78と低く、有意差が認められるという結果が出た。
また、野菜・果物の摂取量が多くなる群ほど胃癌発症リスクが低下する傾向がみられた。
一方、女性では特に有意差は認められなかったが、その理由として研究チームは、女性は元々男性よりも野菜摂取量が多いため発症リスクを左右するほど不足している人が少なかったことを、理由の1つとして挙げている。
さらに、組織型別分析では、男性では特に関連性はみられなかったが、女性では果物全体の摂取量が多いほど分化型胃癌発症リスクが低下する傾向が確認されたという。
今回の研究結果から推測されることとして、ピロリ菌感染との関連性もある。
研究対象である年代の日本人ではピロリ菌感染率が9割以上であり、野菜・果物を摂取することで、ピロリ菌による胃癌発症リスクを低下させているのではないか、という点である。
また、今回使用されたコホート研究では、長期追跡を行ったものではあるが、追跡途中での野菜摂取量変化などは考慮されておらず、その点でも結果を読み取るためには注意が必要である。
今年11月に公表された海外の研究結果では、人類が肉食から野菜・果物中心食へ移行することで、2型糖尿病・冠動脈疾患・癌やその他の非感染性疾患の発症リスクを軽減させることができる、というものもある。
この研究ではさらに、肉類の消費量が減ることで温室効果ガス排出量を低減させ、世界人口の増加に伴う世界の土地の荒廃も食い止めることが出来るとしている。特に日本の場合は、畜産を行うための家畜飼料を大量に海外から輸入しているという実態もあり、これらにより排出される温室効果ガス量も、最近では問題視されている。
今回の国がんの研究は胃癌のみが対象だったが、野菜・果物の摂取と他の疾患の発症リスクについてはどうなのか。今後の研究動向にも注目したい。
参考資料
国立がん研究センター プレスリリース 野菜摂取が日本人に多い男性の下部胃がんリスクを低下
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20141218.html
Annals of Oncology 「Association of vegetable and fruit intake with gastric cancer risk among Japanese: A pooled analysis of four cohort studies」
http://annonc.oxfordjournals.org/content/early/2014/03/10/annonc.mdu115
国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ
多目的コホート研究(JPHC Study)
http://epi.ncc.go.jp/jphc/index.html
循環器疫学サイト epi-c.jp JACC Study (文部科学省科学研究費がん特定領域大規模コホート研究,Japan Collaborative Cohort Study)
http://www.epi-c.jp/e010_1_0001.html
Nature Global diets link environmental sustainability and human health
http://www.nature.com/nature/journal/v515/n7528/full/nature13959.html
農林水産省 温室効果ガス排出量の算定・報告について(畜産編)
http://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/pdf/ontaihou_ponchi.pdf
↑あくまで日本の例ですが、畜産業の温室効果ガスの排出について参考にしています
同上 農林水産業・食品製造業における温室効果ガス排出量の状況(2012年度確定値版)
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/H26/pdf/140529_02_03part2.pdf
↑あくまで日本の例ですが、畜産業の温室効果ガスの排出について参考にしています
独立行政法人 農業環境技術研究所 温室効果ガス排出のインベントリーと排出抑制技術
www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/inovlec2005/1-4.pdf
↑あくまで日本の例ですが、家畜関連(特に家畜排せつ物の管理)が、最も多くの温室効果ガスを排出しているようです(P3の図1)
(社)日本草地畜産種子協会 自給粗飼料生産による温室効果ガス削減
http://souchi.lin.gr.jp/skill/pdf/jikyuusoshiryo.pdf
↑化学飼料や海外産の飼料ではなく、飼料を自給する方が温室効果ガスが削減できる、ということのようです。海外のデータも併せてみると、反芻家畜からの温室効果ガスの排出が58%だそうです。また、日本の場合は海外から安い穀物を大量に輸入して畜産業が成り立っていますが、この場合は家畜糞尿を農地に還元できず、その処理でも温室効果ガスを大量に発生…という連鎖があるようです。
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